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米最高裁は20日に、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく相互関税等に対して違法判決を下し、相互関税が失効した。これを受けて、企業が今まで支払った関税が返還されるかどうかが注目を集めている。
 
相互関税が失効した後に、企業が今まで支払った関税が返還されるかどうかは不確実であり、最終的には司法の判断に委ねられる。今回の最高裁の判決でも、関税の返還についての判断は示されなかった。返還には、別途、法手続きが必要となる。
 
関税の支払いは当初は暫定的なものであり、314日を過ぎると正式に確定されたものとなる。関税が正式に確定されるまでに返還を求めて裁判所に提訴しておけば、返還される可能性はより高まると見られている。
 
4月に導入された相互関税の確定は今年2月にかけて始まったことから、違法判決が下される前に、企業が裁判所に返還を求める請求権の保全を提訴する動きが、昨年末から急増した(コラム「米最高裁が相互関税に違法判決を下せば、トランプ関税策は後退へ:企業は関税の返還を求め提訴」、2025年12月24日)。
 
ロイター通信によると、相互関税などの措置で、企業が納めた関税は1,300億ドル(約20兆円)以上とされる。還付を巡って、既に米国内外の企業約1,000社が米政府に還付を求める訴訟を起こしている。2月初旬時点で日本企業も川崎重工業、豊田通商、横浜ゴムなど少なくとも10社が訴訟を起こしている。
 
提訴を起こした企業はそうでない企業と比べて返還を受けられる可能性は高まるが、それでも、実際に返還されるかどうかは米政府との裁判の結果で決まるため、不確実だ。しかもそれには何年もの時間がかかる。
 
トランプ大統領は「今後5年は法廷で争うことになるだろう」と述べ、返還を強く拒否する構えを見せている。
 
(参考資料)
「トランプ関税、違憲判決で税金戻るか 日本企業は「情報整理」急務に」、2026年2月21日、日本経済新聞電子版

プロフィール

  • 木内 登英のポートレート

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。