グリアUSTR代表は15%への関税率引き上げが一部の国に限られる可能性を示唆
米最高裁が違法判決を下して失効した国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく相互関税の後継として、トランプ大統領は通商法122条に基づく一律10%の新関税をすべての国に課した。さらにトランプ大統領は、関税率を通商法122条が最大限認める15%へと引き上げる考えを示している。
米通商代表部(USTR)のグリア代表は25日に、トランプ大統領は間もなく、関税率を10%から15%に引き上げる大統領令に署名する予定であるとしたうえで、これは「適切な場所」についてだ、と述べた。15%への関税率引き上げの対象が、一部の国に限られる可能性があることを示唆したのである。
しかし、通商法122条に基づく関税は、「非差別的」であることを求められている。同条は大統領が特定の国を関税措置から除外することは認めているが、一律ではなく異なる関税率を課すことには、法的問題が生じる可能性がある。
一方、通商法122条に基づく新関税は、議会が延長を承認しない限り150日で失効する。議会はそれを認めない可能性が高いだろう。
トランプ政権は、150日後に通商法122条に基づく新関税が失効する前に、通商法301条に基づく恒久的な関税策に移行する考えだ。通商法301条に基づく関税策は4年で期限が来るが、何度でも延長が可能である。
米通商代表部(USTR)のグリア代表は25日に、トランプ大統領は間もなく、関税率を10%から15%に引き上げる大統領令に署名する予定であるとしたうえで、これは「適切な場所」についてだ、と述べた。15%への関税率引き上げの対象が、一部の国に限られる可能性があることを示唆したのである。
しかし、通商法122条に基づく関税は、「非差別的」であることを求められている。同条は大統領が特定の国を関税措置から除外することは認めているが、一律ではなく異なる関税率を課すことには、法的問題が生じる可能性がある。
一方、通商法122条に基づく新関税は、議会が延長を承認しない限り150日で失効する。議会はそれを認めない可能性が高いだろう。
トランプ政権は、150日後に通商法122条に基づく新関税が失効する前に、通商法301条に基づく恒久的な関税策に移行する考えだ。通商法301条に基づく関税策は4年で期限が来るが、何度でも延長が可能である。
301条に基づく恒久的な関税策に移行すれば各国の関税率は相互関税と同水準か
グリア代表は、この通商法301条に基づく各国・地域への関税率は従来の相互関税水準に戻る可能性を示した。日本については、相互関税の関税率は15%であったが、通商法122条に基づく関税率は10%であり、やや下がった。しかし、近い将来15%に引き上げられるか、あるいはそうでなくても、通商法301条に基づく関税に移行する際には、相互関税と同じ水準の15%に戻る可能性がある。いずれにせよ、従来の相互関税率よりも引き上げられることはない。
ただし一部の品目については、相互関税率よりも高い関税率がかけられている。日本への相互関税は、もともとの税率が15%未満の品目は一律15%とし、15%以上の場合はその税率を維持する取り決めとなっていた。24日に始まった10%の新関税は相互関税導入前の関税率に10%が上乗せされるため、15%以上の水準に引き上げられた品目もある。それは牛肉などだろう。それらについては、通商法301条に基づく関税が導入される際には、相互関税と同水準の15%に再び引き下げられる可能性が考えられる。
ただし一部の品目については、相互関税率よりも高い関税率がかけられている。日本への相互関税は、もともとの税率が15%未満の品目は一律15%とし、15%以上の場合はその税率を維持する取り決めとなっていた。24日に始まった10%の新関税は相互関税導入前の関税率に10%が上乗せされるため、15%以上の水準に引き上げられた品目もある。それは牛肉などだろう。それらについては、通商法301条に基づく関税が導入される際には、相互関税と同水準の15%に再び引き下げられる可能性が考えられる。
合法性が問われるトランプ関税は縮小方向へ
しかし、トランプ政権が考えるように、150日の間に通商法301条に基づく恒久的な関税に移行し、事実上、相互関税を復活させることができるかについては不確実だ。150日の間に、すべての国からのすべての輸入品について、不公正貿易に関する精緻な調査を行うことはほぼ不可能だろう。ちなみにグリア代表は、不公正な慣行として過剰生産のほか、コメや水産物への補助金などを例示した。
さらに、IEEPAに基づく相互関税などを違法と判断した米最高裁は、議会の承認なく大統領が関税を実施することは憲法違反との考えを示している。これは、トランプ関税全体の合法性に疑問を投げかけるものだ。
トランプ大統領は一般教書演説で、関税に議会の承認は必要ないとしたが、物価高などを通じて有権者から関税に対する不満が高まる中、11月の中間選挙に向けて共和党議員からも関税策の継続に批判が強まる可能性も考えられる。
最高裁の違法判決は、トランプ関税が行き詰まり、縮小に向かうきっかけになったと考えておきたい。これは日本も含めて世界経済や金融市場の安定にとってプラスである。
(参考資料)
「トランプ新関税15%への引き上げ、対象は一部となる可能性=USTR代表」、2026年2月26日、ダウ・ジョーンズ米国企業ニュース
「トランプ関税:米関税「相互」並み回帰か 米通商代表示唆、対日15%も」、2026年2月26日、毎日新聞
さらに、IEEPAに基づく相互関税などを違法と判断した米最高裁は、議会の承認なく大統領が関税を実施することは憲法違反との考えを示している。これは、トランプ関税全体の合法性に疑問を投げかけるものだ。
トランプ大統領は一般教書演説で、関税に議会の承認は必要ないとしたが、物価高などを通じて有権者から関税に対する不満が高まる中、11月の中間選挙に向けて共和党議員からも関税策の継続に批判が強まる可能性も考えられる。
最高裁の違法判決は、トランプ関税が行き詰まり、縮小に向かうきっかけになったと考えておきたい。これは日本も含めて世界経済や金融市場の安定にとってプラスである。
(参考資料)
「トランプ新関税15%への引き上げ、対象は一部となる可能性=USTR代表」、2026年2月26日、ダウ・ジョーンズ米国企業ニュース
「トランプ関税:米関税「相互」並み回帰か 米通商代表示唆、対日15%も」、2026年2月26日、毎日新聞
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。