米国は3月13日に、イランのカーグ島を攻撃した。カーグ島はペルシャ湾にあり、イラン本土から約24キロ沖に位置している。カーグ島はイランの主要な石油拠点で、原油輸出の約90%がこの島を経由し、タンカーでホルムズ海峡を通って輸送されている。
イラン政府はこれまで、カーグ島への攻撃はレッドライン(越えてはならない一線)だと警告してきた。米国のカーグ島攻撃はこの一線を超えるものであり、米国・イスラエルとイランとの間の交戦をより激化させる可能性がある。
トランプ大統領は、「イランの至宝であるカーグ島のあらゆる軍事目標を壊滅させた」と投稿した。島は主要な軍事施設としてはこれまで知られていなかったが、イランが今回の攻撃を受けた際に軍事資産を移動させた可能性があるとされる。
他方でトランプ大統領は、「同島の石油インフラを跡形もなく破壊することは見送った」と、石油設備への攻撃は見送ったとした。しかし、イランがホルムズ海峡における船舶の自由かつ安全な通航を妨害するようなことがあれば、石油設備への攻撃も行う可能性を示唆した。
イランは、カーグ島の石油設備を攻撃すれば、米国と協力関係にある企業の原油・エネルギーインフラを「直ちに破壊し、灰燼(かいじん)に帰す」と述べた。イランのホルムズ海峡封鎖が続き、米国がカーグ島の石油設備を攻撃すれば、周辺諸国も含めて石油設備の被害が広がり、中東の原油供給への懸念はさらに高まる。実際、イランは原油輸出の拠点であるアラブ首長国連邦(UAE)のフジャイラ港を攻撃したとみられる。
トランプ大統領は、今回の攻撃は自らの命令によるものだとしたが、新たなイランの最高指導者モジタバ・ハメネイ師が12日にホルムズ海峡の閉鎖を続行すると発表したことへの報復とも考えられる。
以前より米国はカーグ島を占拠するのではとの観測が広まっていた。カーグ島を押さえれば、米国はイランの石油輸出ルートを遮断することができ、さらにイラン本土への攻撃拠点にもなるからだ。米ニュースサイト「アクシオス」は今月初めに、トランプ大統領が特殊部隊を派遣してこの島を制圧することを検討している、と報じていた。
米軍は日本の長崎県の佐世保基地に配備する強襲揚陸艦と沖縄に駐屯する海兵隊部隊を中東地域に派遣する方針と、複数の米メディアが伝えている。戦争の長期化に備え、米国は中東地域での軍事力強化に動いている。派遣される海兵隊の第31海兵遠征部隊(31MEU)は、地上部隊と航空部隊を併せ持つ。地上軍を派遣してカーグ島を占拠するとの観測も燻ぶる。
ロイター通信は、複数の中東諸国が停戦に向けた仲介を試みたが、トランプ大統領はそれを拒んでいるようだ。
カーグ島攻撃によりイラン情勢はさらに悪化する可能性が高まった。13日のWTI原油先物価格は1バレル99ドル台と、100ドル一歩手前で踏みとどまったが、週明け16日の東京市場では再び100ドル台に乗る可能性が考えられる。
原油価格上昇は、日本株にも逆風となり、16日には日経平均株価は5万3,000円台を割り込む可能性がある。さらに、13日には1ドル159円70銭と160円一歩手前で踏みとどまっていたドル円レートは、16日には1ドル160円台に乗る可能性がある。そうなれば、政府による為替介入が近日中にも実施される可能性が高まるだろう。19日の日本銀行の金融政策決定会合後が特に注目されるタイミングだ。
このようにトランプ政権が、一線を超えてイラン経済の生命線であるカーグ島への攻撃に踏み切ったことにより、日本の金融市場でも一気に一線を超える動きが引き起こされる可能性が出てきた。
(参考資料)
「イラン政府、カーグ島への攻撃は越えてはならない一線と過去に警告」、2026年3月14日、ウォール・ストリート・ジャーナル日本版
「トランプ氏、イラン・カーグ島の軍事標的を「壊滅」」、2026年3月14日、ウォール・ストリート・ジャーナル日本版
「トランプ氏、米軍がイランの石油輸出の「生命線」爆撃」、2026年3月14日、BBC NEWS JAPAN
「イラン、米国と関係する原油インフラ破壊と警告 トランプ氏のカーグ島爆撃発表受け」、2026年3月14日、AFPBB NEWS/AFP通信
「米、カーグ島の軍事目標「完全破壊」 イランは石油施設攻撃なら報復示唆」、2026年3月14日、ロイター通信ニュース
「米軍、日本拠点の揚陸艦派遣―イラン作戦、沖縄海兵隊も」、2026年3月14日、共同通信ニュース
イラン政府はこれまで、カーグ島への攻撃はレッドライン(越えてはならない一線)だと警告してきた。米国のカーグ島攻撃はこの一線を超えるものであり、米国・イスラエルとイランとの間の交戦をより激化させる可能性がある。
トランプ大統領は、「イランの至宝であるカーグ島のあらゆる軍事目標を壊滅させた」と投稿した。島は主要な軍事施設としてはこれまで知られていなかったが、イランが今回の攻撃を受けた際に軍事資産を移動させた可能性があるとされる。
他方でトランプ大統領は、「同島の石油インフラを跡形もなく破壊することは見送った」と、石油設備への攻撃は見送ったとした。しかし、イランがホルムズ海峡における船舶の自由かつ安全な通航を妨害するようなことがあれば、石油設備への攻撃も行う可能性を示唆した。
イランは、カーグ島の石油設備を攻撃すれば、米国と協力関係にある企業の原油・エネルギーインフラを「直ちに破壊し、灰燼(かいじん)に帰す」と述べた。イランのホルムズ海峡封鎖が続き、米国がカーグ島の石油設備を攻撃すれば、周辺諸国も含めて石油設備の被害が広がり、中東の原油供給への懸念はさらに高まる。実際、イランは原油輸出の拠点であるアラブ首長国連邦(UAE)のフジャイラ港を攻撃したとみられる。
トランプ大統領は、今回の攻撃は自らの命令によるものだとしたが、新たなイランの最高指導者モジタバ・ハメネイ師が12日にホルムズ海峡の閉鎖を続行すると発表したことへの報復とも考えられる。
以前より米国はカーグ島を占拠するのではとの観測が広まっていた。カーグ島を押さえれば、米国はイランの石油輸出ルートを遮断することができ、さらにイラン本土への攻撃拠点にもなるからだ。米ニュースサイト「アクシオス」は今月初めに、トランプ大統領が特殊部隊を派遣してこの島を制圧することを検討している、と報じていた。
米軍は日本の長崎県の佐世保基地に配備する強襲揚陸艦と沖縄に駐屯する海兵隊部隊を中東地域に派遣する方針と、複数の米メディアが伝えている。戦争の長期化に備え、米国は中東地域での軍事力強化に動いている。派遣される海兵隊の第31海兵遠征部隊(31MEU)は、地上部隊と航空部隊を併せ持つ。地上軍を派遣してカーグ島を占拠するとの観測も燻ぶる。
ロイター通信は、複数の中東諸国が停戦に向けた仲介を試みたが、トランプ大統領はそれを拒んでいるようだ。
カーグ島攻撃によりイラン情勢はさらに悪化する可能性が高まった。13日のWTI原油先物価格は1バレル99ドル台と、100ドル一歩手前で踏みとどまったが、週明け16日の東京市場では再び100ドル台に乗る可能性が考えられる。
原油価格上昇は、日本株にも逆風となり、16日には日経平均株価は5万3,000円台を割り込む可能性がある。さらに、13日には1ドル159円70銭と160円一歩手前で踏みとどまっていたドル円レートは、16日には1ドル160円台に乗る可能性がある。そうなれば、政府による為替介入が近日中にも実施される可能性が高まるだろう。19日の日本銀行の金融政策決定会合後が特に注目されるタイミングだ。
このようにトランプ政権が、一線を超えてイラン経済の生命線であるカーグ島への攻撃に踏み切ったことにより、日本の金融市場でも一気に一線を超える動きが引き起こされる可能性が出てきた。
(参考資料)
「イラン政府、カーグ島への攻撃は越えてはならない一線と過去に警告」、2026年3月14日、ウォール・ストリート・ジャーナル日本版
「トランプ氏、イラン・カーグ島の軍事標的を「壊滅」」、2026年3月14日、ウォール・ストリート・ジャーナル日本版
「トランプ氏、米軍がイランの石油輸出の「生命線」爆撃」、2026年3月14日、BBC NEWS JAPAN
「イラン、米国と関係する原油インフラ破壊と警告 トランプ氏のカーグ島爆撃発表受け」、2026年3月14日、AFPBB NEWS/AFP通信
「米、カーグ島の軍事目標「完全破壊」 イランは石油施設攻撃なら報復示唆」、2026年3月14日、ロイター通信ニュース
「米軍、日本拠点の揚陸艦派遣―イラン作戦、沖縄海兵隊も」、2026年3月14日、共同通信ニュース
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。