日米首脳会談でアラスカ産原油の輸入がテーマに浮上
19日に日米首脳会談が開かれるが、そこでアラスカ産原油の増産に向けた協力について両国が合意する方向で調整している、と各メディアが報じている。日本がアラスカ産原油を単に購入するのではなく、日本側が投資資金を出し、その結果生じる増産分を買い取る案などが検討されている模様だ。日米関税合意に基づく5,500億ドル(約87兆円)の対米投資の案件の一つとして検討されているとされる。
政府は今月末から政府原油備蓄の放出を始めるが、政府備蓄は146日分とされ、放出量には限界がある。他方、日本の原油輸入全体の約4分の3が依存するホルムズ海峡の閉鎖が続く中、日本は原油調達先の分散化を急いで進める必要がある。一時的な対応ではなく、構造的に調達の分散化を進めることが検討されている。日本政府は日米首脳会談をその機会として最大限利用する考えだろう。
2025年の日本の原油輸入のうち3.8%が米国であり、国別には5位だ。アラスカ産原油の出荷量は、日本の年間消費量の1割超に相当するが、現在はほとんどが米国内に供給されている。
日本にとって、新たにアラスカ産原油を調達することのメリットは大きい。第1には、米国本土よりもアラスカの方が日本からの距離が近いため、輸入コストを下げることができる。第2に、アラスカ産原油は「中質油(ミディアム)」に分類される。日本の石油精製は中東産の重質油に概ね対応しており、米国本土からの軽質油に対応したものは多くない。アラスカ産の中質油であれば、軽質油よりも既存の精製設備で対応できる余地が広がるだろう。
ただし、世界中で原油や石油製品を奪い合う構図の中、多くの国ではそれらの輸出を制限する動きを強めている。そうした中、トランプ政権がアラスカ産原油の輸出拡大を日本に認めるかどうかは明らかではない。開発投資などで相当の見返りを日本側に求めるのではないか。
政府は今月末から政府原油備蓄の放出を始めるが、政府備蓄は146日分とされ、放出量には限界がある。他方、日本の原油輸入全体の約4分の3が依存するホルムズ海峡の閉鎖が続く中、日本は原油調達先の分散化を急いで進める必要がある。一時的な対応ではなく、構造的に調達の分散化を進めることが検討されている。日本政府は日米首脳会談をその機会として最大限利用する考えだろう。
2025年の日本の原油輸入のうち3.8%が米国であり、国別には5位だ。アラスカ産原油の出荷量は、日本の年間消費量の1割超に相当するが、現在はほとんどが米国内に供給されている。
日本にとって、新たにアラスカ産原油を調達することのメリットは大きい。第1には、米国本土よりもアラスカの方が日本からの距離が近いため、輸入コストを下げることができる。第2に、アラスカ産原油は「中質油(ミディアム)」に分類される。日本の石油精製は中東産の重質油に概ね対応しており、米国本土からの軽質油に対応したものは多くない。アラスカ産の中質油であれば、軽質油よりも既存の精製設備で対応できる余地が広がるだろう。
ただし、世界中で原油や石油製品を奪い合う構図の中、多くの国ではそれらの輸出を制限する動きを強めている。そうした中、トランプ政権がアラスカ産原油の輸出拡大を日本に認めるかどうかは明らかではない。開発投資などで相当の見返りを日本側に求めるのではないか。
日米共同原油備蓄の案も
一方、読売新聞は、日本側の投資により米国産の原油を増産し、増産分を日本で共同備蓄する方向で最終調整に入った、と報じている。アラスカ産原油が主な対象となる模様だ。
これは、トランプ政権が日本のアラスカ産原油の輸入拡大を認めない場合の代替案、「プランB」かもしれない。アラスカ産原油を原油備蓄とすれば、日本の原油輸入の減少が続いた場合に放出できる余地が広がる。
ただし共同備蓄となれば、米国が利用する可能性がある一方、トランプ政権の許可がないと日本は備蓄放出ができないことになるのではないか。今回のように、日本政府による原油備蓄放出の迅速な決定はできなくなる可能性がある。
日本政府は原油調達の分散化を構造的に進める考えだ。そのため、アラスカ産原油の一時的な日米共同備蓄ではなく、安定したアラスカ産原油の輸入拡大を望んでいるはずだ。
これは、トランプ政権が日本のアラスカ産原油の輸入拡大を認めない場合の代替案、「プランB」かもしれない。アラスカ産原油を原油備蓄とすれば、日本の原油輸入の減少が続いた場合に放出できる余地が広がる。
ただし共同備蓄となれば、米国が利用する可能性がある一方、トランプ政権の許可がないと日本は備蓄放出ができないことになるのではないか。今回のように、日本政府による原油備蓄放出の迅速な決定はできなくなる可能性がある。
日本政府は原油調達の分散化を構造的に進める考えだ。そのため、アラスカ産原油の一時的な日米共同備蓄ではなく、安定したアラスカ産原油の輸入拡大を望んでいるはずだ。
日本の利益が明確な初めての対米投資計画の案件となる可能性も
政府は、アラスカ産原油輸入拡大の前提である日本企業の投資拡大を、5,500億ドルの対米投資計画の案件の一つとする考えのようだ。そうすれば、トランプ政権も安易には拒否できないという計算もあるのだろう。これは妙案ではないか。
対米投資計画は米国主導で日本にとっては不平等な取り決めであり、既に決まった第1号案件では、日本にとってのメリットは明確でない一方、融資や出資をする日本の政府系金融機関にはリスクがある。
日本企業の投資を条件にアラスカ産原油の日本への早期輸出をトランプ政権が認めるのであれば、5,500億ドルの対米投資計画でようやく日米双方の利益となるWin-Winの構図が初めて見られることにもなり、望ましいことだ。
(参考資料)
「米産原油の増産、日米協力合意へ 日本が投資・購入案 19日に首脳会談」、2026年3月18日、朝日新聞
「米国産原油を日本で「共同備蓄」、日米首脳が合意へ…対米投資で増産分・価格安定化や調達先の多角化図る」、2026年3月18日、読売新聞速報ニュース
対米投資計画は米国主導で日本にとっては不平等な取り決めであり、既に決まった第1号案件では、日本にとってのメリットは明確でない一方、融資や出資をする日本の政府系金融機関にはリスクがある。
日本企業の投資を条件にアラスカ産原油の日本への早期輸出をトランプ政権が認めるのであれば、5,500億ドルの対米投資計画でようやく日米双方の利益となるWin-Winの構図が初めて見られることにもなり、望ましいことだ。
(参考資料)
「米産原油の増産、日米協力合意へ 日本が投資・購入案 19日に首脳会談」、2026年3月18日、朝日新聞
「米国産原油を日本で「共同備蓄」、日米首脳が合意へ…対米投資で増産分・価格安定化や調達先の多角化図る」、2026年3月18日、読売新聞速報ニュース
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。