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連合は23日に、2026年春闘の第1回回答集計を公表した。組合員300人以上の大企業の賃上げ率は5.26%と3年連続で5%を超える高水準が維持された。前年同時点の5.46%を下回ったものの、事前の予測平均値(ブルームバーグのエコノミスト調査)の5.05%を大きく上回った。また、ベースアップについては、3.85%と、前年同時点の3.84%とほぼ同水準となった。これは、事前の予測平均値(同)の3.50%を大きく上回っている。
 
一方、組合員300人未満の賃上げ率は5.05%、ベアは3.54%と、前年同時点のそれぞれ5.09%、3.62%を下回ったもののやはり高水準が維持された。全体として第1回回答時の春闘の賃上げ率は、中東情勢の緊迫化で先行きの不透明感が強まる中にも関わらず、予想以上に良好な結果となった。
 
しかし、今回の妥結結果には、中東情勢の緊迫化の影響がまだ十分に反映されていない可能性がある点には留意が必要だ。今後、集計が進む中で、平均賃上げ率は大きく下方修正されていく可能性もあるのではないか。
 
さらに、組合員数が少ない、あるいは組合がない小規模な企業の賃上げ率は、春闘の結果には表れない。そうした中小・零細企業では、中東情勢の緊迫化の影響をより大きく受け、賃上げ率が下振れる可能性があるだろう。
 
ただし、その動きを捕捉するには時間がかかる。4月の日本銀行の短観調査や支店長会議での報告などでは、中東情勢の緊迫化後の中小・零細企業の賃上げの動きはまだ十分に分からないだろう。
 
第1回回答集計を見る限り、大企業を中心に高水準に賃上げ率が続いている。他方、2月の消費者物価(除く生鮮食品)は1%台まで低下したと見られる。1月に前年同月比でプラスに転じた実質賃金の上昇基調がこの先も続くといった楽観的な展望が先月までは持てる状況だった。
 
しかしそうした状況を一変させてしまったのが、イラン情勢だ。その結果、物価上昇率は再び上向き、一方で、賃金上昇率は中小、零細企業を中心に下振れる可能性が高まっている。それがどの程度であるかはまだ明確ではないが、それを把握するにはなお時間がかかることから、経済の不確実性は大きく高まった。
 
この不確実性の高まりは、株価の下落など金融市場を不安定にさせるとともに、日本銀行の金融政策に様子見を強いることになるのではないか。それは円安のリスクを高めるという別の問題も生む。

プロフィール

  • 木内 登英のポートレート

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。