日本関係船舶がイラン紛争以降、初めてホルムズ海峡を通過
事実上封鎖されてきたホルムズ海峡を、商船三井のLNG(液化天然ガス)船が日本時間4月2日に通過したことが明らかになった。4日には商船三井は合計で2隻が通過したことを明らかにした。AFP通信は、商船三井の船舶のうち1隻はホルムズ海峡経由ではなく、イラン対岸のオマーン近海を航行したと推測されると報道している。その真偽は明らかでない。
ホルムズ海峡以西のペルシャ湾内には45隻の日本関係船舶が停泊していたが、海峡を通って湾外に出たのはこれが初めてだ。最初に通過したのはパナマ船籍で、商船三井とオマーン企業が共同保有する「SOHAR(ソハール) LNG」である。
AFP通信によると、フランス海運大手CMA・CGMが所有するマルタ船籍の「クリビ」も2日に、ホルムズ海峡を通過してペルシャ湾を脱出した。
また、タイ、フィリピン、マレーシアは2日までに、イランなどとの個別の交渉で、ホルムズ海峡を船が通航する許可を得たと発表した。タイは石油タンカー1隻が先月、ホルムズ海峡を安全に通過したほか、イラン政府高官はインドネシアの複数の船舶が通過したと明らかにしていると報じられている。また、ベトナムは自国の船がホルムズ海峡を通航できるように、イランとの協議を続けているとされる。
ホルムズ海峡以西のペルシャ湾内には45隻の日本関係船舶が停泊していたが、海峡を通って湾外に出たのはこれが初めてだ。最初に通過したのはパナマ船籍で、商船三井とオマーン企業が共同保有する「SOHAR(ソハール) LNG」である。
AFP通信によると、フランス海運大手CMA・CGMが所有するマルタ船籍の「クリビ」も2日に、ホルムズ海峡を通過してペルシャ湾を脱出した。
また、タイ、フィリピン、マレーシアは2日までに、イランなどとの個別の交渉で、ホルムズ海峡を船が通航する許可を得たと発表した。タイは石油タンカー1隻が先月、ホルムズ海峡を安全に通過したほか、イラン政府高官はインドネシアの複数の船舶が通過したと明らかにしていると報じられている。また、ベトナムは自国の船がホルムズ海峡を通航できるように、イランとの協議を続けているとされる。
1バレル1ドルの通航料で日本のガソリン価格は1リットル当たり1円程度上昇
ブルームバーグは1日に、イランがホルムズ海峡の通航料として、タンカーが積み込んでいる原油1バレルにつき1ドル程度を徴収していると報じた。
仮に日本の原油タンカーがホルムズ海峡の通航に1バレル1ドルを支払う場合、その分、国内でのガソリン価格が上昇することになる。日本のガソリン販売価格に占める原油のコストは35%~40%と考えられる。原油価格が上昇する際に、石油元売り業者がマージンを減らさないようにガソリンの卸売価格を引き上げるのであれば、ガソリンの小売価格の上昇率は原油価格の上昇率の35%~40%程度になる、と考えられる。
現在の原油価格(1バレル100ドル)で考えれば、1バレル1ドルの上乗せは、原油価格を1%上昇させ、また、イラン攻撃前の原油価格(1バレル67ドル)で考えれば、1バレル1ドルの上乗せは、原油価格を1.5%上昇させることになる。
ガソリンの小売価格がその35%~40%分上昇するとすれば、イラン攻撃前のガソリン価格(1リットル160円)は0.56円~0.64円、現在のガソリン価格(1リットル220円)は1.15円~1.32円上昇する計算となる。つまりガソリン価格の上昇幅はせいぜい1円程度にとどまり、日本の消費者には大きな影響は生じないと思われる。
ちなみに1.5%の原油価格上昇は、日本の実質GDPを1年間で0.01%程度押し下げる程度と試算され、影響は軽微だ。この点から、1バレル1ドルの通航料を支払うことでホルムズ海峡を通過できるのであれば、日本の石油会社は喜んでそれを支払い、日本の消費者はガソリン価格の上昇を通じて、喜んでそれを最終的に負担することになるだろう。
仮に日本の原油タンカーがホルムズ海峡の通航に1バレル1ドルを支払う場合、その分、国内でのガソリン価格が上昇することになる。日本のガソリン販売価格に占める原油のコストは35%~40%と考えられる。原油価格が上昇する際に、石油元売り業者がマージンを減らさないようにガソリンの卸売価格を引き上げるのであれば、ガソリンの小売価格の上昇率は原油価格の上昇率の35%~40%程度になる、と考えられる。
現在の原油価格(1バレル100ドル)で考えれば、1バレル1ドルの上乗せは、原油価格を1%上昇させ、また、イラン攻撃前の原油価格(1バレル67ドル)で考えれば、1バレル1ドルの上乗せは、原油価格を1.5%上昇させることになる。
ガソリンの小売価格がその35%~40%分上昇するとすれば、イラン攻撃前のガソリン価格(1リットル160円)は0.56円~0.64円、現在のガソリン価格(1リットル220円)は1.15円~1.32円上昇する計算となる。つまりガソリン価格の上昇幅はせいぜい1円程度にとどまり、日本の消費者には大きな影響は生じないと思われる。
ちなみに1.5%の原油価格上昇は、日本の実質GDPを1年間で0.01%程度押し下げる程度と試算され、影響は軽微だ。この点から、1バレル1ドルの通航料を支払うことでホルムズ海峡を通過できるのであれば、日本の石油会社は喜んでそれを支払い、日本の消費者はガソリン価格の上昇を通じて、喜んでそれを最終的に負担することになるだろう。
今後の展望は依然として不透明
多くの国々にとって事実上封鎖状態にあったホルムズ海峡で、船舶の航行が今後増えていく可能性が出てきたことは良いニュースである。
しかし、これをきっかけとして、世界の原油価格が大きく低下し、ホルムズ海峡を経由した原油の輸入依存度が高い日本などアジアの国々で、原油不足への懸念が大きく緩和されるかどうかは未だ予断を許さない。
日本政府関係者によると、ホルムズ海峡を通過した商船三井のLNG船の行き先は日本ではなく、政府はイランとの交渉にも関わっていないという。外交交渉を通じて、日本の船舶の安全航行について日本がイランと合意できた、ということではないようだ。また、通航料を支払えばホルムズ海峡を通過できるようになるのかについても分からない。
さらにこの先、仮にペルシャ湾に停泊する日本関係船舶がホルムズ海峡を通過できるようになるとしても、新たに日本からホルムズ海峡を通過してペルシャ湾にタンカーなどを送るのは、安全が完全に保障されない中ではなお難しいだろう。
米国との交戦が強まる中、イランが多くの国に対してホルムズ海峡の運航を認め始めたのは、米国と友好国との関係を分断する狙いがあるだろう。
しかし、ホルムズ海峡で多くの船舶の航行を認めれば、原油価格は下落し、ガソリン価格の高騰を通じて米国を経済的に攻撃するというイラン側が持つ米国への重要な対抗手段を、自ら捨ててしまうことになる。イランがこの点に配慮し、ホルムズ海峡で船舶の航行を引き続き制限するのであれば、ホルムズ海峡の運航の正常化にはまだ遠く、世界の原油価格の高止まりと原油不足は解消されないのではないか。
また、多くの国々の船舶が通航料を支払うことでホルムズ海峡を運航する場合、その収入はイランの戦争継続を助けることになると米国が強く警戒する可能性もあるだろう。その場合、米国が他国に対して、通航料の支払いをやめるように求めてくる可能性もあるのではないか。
米国・イスラエルとイランが戦闘停止で正式に合意することがない限り、ホルムズ海峡の船舶の運航が正常化し、世界の原油供給と原油価格が安定を取り戻すのは難しい。
(参考資料)
「イランが友好国選別 ホルムズ海峡に通航料、対米抗戦――商船三井のLNG船通過 日本関係船舶で初」、2026年4月4日、日本経済新聞
「商船三井のLNG船がホルムズ海峡を通過 日本政府は交渉不関与か」、2026年4月4日、朝日新聞速報ニュース
「フランスと日本の商船、ホルムズ海峡通過 紛争開始後初」、2026年4月4日、AFPBB NEWS/AFP通信
「東南アジア各国“ホルムズ海峡の通航許可得た”と相次ぎ発表 イランとの個別交渉 一部の船はすでに通過」、2026年4月4日、TBS
しかし、これをきっかけとして、世界の原油価格が大きく低下し、ホルムズ海峡を経由した原油の輸入依存度が高い日本などアジアの国々で、原油不足への懸念が大きく緩和されるかどうかは未だ予断を許さない。
日本政府関係者によると、ホルムズ海峡を通過した商船三井のLNG船の行き先は日本ではなく、政府はイランとの交渉にも関わっていないという。外交交渉を通じて、日本の船舶の安全航行について日本がイランと合意できた、ということではないようだ。また、通航料を支払えばホルムズ海峡を通過できるようになるのかについても分からない。
さらにこの先、仮にペルシャ湾に停泊する日本関係船舶がホルムズ海峡を通過できるようになるとしても、新たに日本からホルムズ海峡を通過してペルシャ湾にタンカーなどを送るのは、安全が完全に保障されない中ではなお難しいだろう。
米国との交戦が強まる中、イランが多くの国に対してホルムズ海峡の運航を認め始めたのは、米国と友好国との関係を分断する狙いがあるだろう。
しかし、ホルムズ海峡で多くの船舶の航行を認めれば、原油価格は下落し、ガソリン価格の高騰を通じて米国を経済的に攻撃するというイラン側が持つ米国への重要な対抗手段を、自ら捨ててしまうことになる。イランがこの点に配慮し、ホルムズ海峡で船舶の航行を引き続き制限するのであれば、ホルムズ海峡の運航の正常化にはまだ遠く、世界の原油価格の高止まりと原油不足は解消されないのではないか。
また、多くの国々の船舶が通航料を支払うことでホルムズ海峡を運航する場合、その収入はイランの戦争継続を助けることになると米国が強く警戒する可能性もあるだろう。その場合、米国が他国に対して、通航料の支払いをやめるように求めてくる可能性もあるのではないか。
米国・イスラエルとイランが戦闘停止で正式に合意することがない限り、ホルムズ海峡の船舶の運航が正常化し、世界の原油供給と原油価格が安定を取り戻すのは難しい。
(参考資料)
「イランが友好国選別 ホルムズ海峡に通航料、対米抗戦――商船三井のLNG船通過 日本関係船舶で初」、2026年4月4日、日本経済新聞
「商船三井のLNG船がホルムズ海峡を通過 日本政府は交渉不関与か」、2026年4月4日、朝日新聞速報ニュース
「フランスと日本の商船、ホルムズ海峡通過 紛争開始後初」、2026年4月4日、AFPBB NEWS/AFP通信
「東南アジア各国“ホルムズ海峡の通航許可得た”と相次ぎ発表 イランとの個別交渉 一部の船はすでに通過」、2026年4月4日、TBS
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。