4月6日に開かれた日銀支店長会議に向けて収集された情報を基にまとめられた地域経済報告(さくらレポート)によると、各地域の景気の総括判断は、1月の前回判断から変更はなかった。「一部に弱めの動きもみられるが、全ての地域で、景気は『緩やかに回復』、『持ち直し』、『緩やかに持ち直し』」と総括された。
また、支店長会議における報告によると、日本銀行が注目する賃金については、春闘で大企業を中心に2025年度並みの高水準の賃上げが広がっていることを受け、地域の中小企業においても2025年度と概ね同程度の賃上げ方針を示す企業が多いとの報告が多数あった。人件費、物流費等の上昇を販売価格に転嫁する動きが続いているとの報告が多かった。
これらの報告を見ると、2月末の中東情勢緊迫化を受けても、国内経済の状況、企業の賃上げ、値上げに向けた動きには特段大きな変化はないように見える。それは、4月の金融政策決定会合での利上げ観測を強めるものだろう。
しかし、現状では大きな環境変化は見られないとしても、企業の先行きの警戒は強いこともあわせて確認されている。報告では、「中東情勢の緊迫化を受け、複数の地域から、原油価格の高騰や物流の停滞に伴い、仕入コストの上昇や原材料の供給制約による稼働率の引き下げといった影響がみられ始めている」とされた。また「先行きにかけては、不確実性が高まる中、エネルギー価格を中心とした物価上昇やそれに伴う企業収益や個人消費へのマイナスの影響、供給制約がサプライチェーン全体に広がる可能性などを懸念する声があり、今後の展開次第では、地域の景気を下押しする可能性があることから、その動向を十分注意してみていく」と記述された。
現状では企業活動になお大きな変化は生じていないものの、既に原油価格の高騰やナフサなどの供給不足の影響は、企業・経済活動の逆風になり始めていることが報告されている。さらに、原油価格の高騰や供給不足の状況に変化がない場合には、景気の下振れリスクが先行き高まることが警戒されていることが示された。
筆者は、行き過ぎた円安などの弊害を生じさせている金融緩和状態の解消に向けて、今後も金融政策の正常化を進めるべきと考えている。しかしながら、原油価格高騰や原油輸入の減少といった歴史的なサプライショックに対しては、中央銀行は物価上昇と景気下振れのどちらのリスクが高まるのかを見極めるために、当面様子見姿勢をとるのが定石だと考える。今後も原油価格高騰や原油輸入の減少が続き、また政府によるガソリン、電力消費の自粛要請、さらには供給規制が講じられれば、経済活動は大きく下振れするリスクが高まることになる。
こうした景気下振れの大きな潜在的リスクがあるなかでは、日本銀行は4月の金融政策決定会合での利上げを見送ると筆者は引き続き予想している。しかし、金融市場では、4月の利上げ観測がかなり強いことは確かである。
今回の支店長会議は、日本銀行が4月の会合での利上げの有無を判断する決定的な材料は提供されなかったとともに、利上げの有無を巡って市場に対する日本銀行の明確なメッセージともならなかった。
4月の会合で利上げを実施するにしても見送るにしても、その前に日本銀行は、総裁の発言などを通じてその意図を市場に明確に伝えるだろう。そのメッセージを待ちたい。
また、支店長会議における報告によると、日本銀行が注目する賃金については、春闘で大企業を中心に2025年度並みの高水準の賃上げが広がっていることを受け、地域の中小企業においても2025年度と概ね同程度の賃上げ方針を示す企業が多いとの報告が多数あった。人件費、物流費等の上昇を販売価格に転嫁する動きが続いているとの報告が多かった。
これらの報告を見ると、2月末の中東情勢緊迫化を受けても、国内経済の状況、企業の賃上げ、値上げに向けた動きには特段大きな変化はないように見える。それは、4月の金融政策決定会合での利上げ観測を強めるものだろう。
しかし、現状では大きな環境変化は見られないとしても、企業の先行きの警戒は強いこともあわせて確認されている。報告では、「中東情勢の緊迫化を受け、複数の地域から、原油価格の高騰や物流の停滞に伴い、仕入コストの上昇や原材料の供給制約による稼働率の引き下げといった影響がみられ始めている」とされた。また「先行きにかけては、不確実性が高まる中、エネルギー価格を中心とした物価上昇やそれに伴う企業収益や個人消費へのマイナスの影響、供給制約がサプライチェーン全体に広がる可能性などを懸念する声があり、今後の展開次第では、地域の景気を下押しする可能性があることから、その動向を十分注意してみていく」と記述された。
現状では企業活動になお大きな変化は生じていないものの、既に原油価格の高騰やナフサなどの供給不足の影響は、企業・経済活動の逆風になり始めていることが報告されている。さらに、原油価格の高騰や供給不足の状況に変化がない場合には、景気の下振れリスクが先行き高まることが警戒されていることが示された。
筆者は、行き過ぎた円安などの弊害を生じさせている金融緩和状態の解消に向けて、今後も金融政策の正常化を進めるべきと考えている。しかしながら、原油価格高騰や原油輸入の減少といった歴史的なサプライショックに対しては、中央銀行は物価上昇と景気下振れのどちらのリスクが高まるのかを見極めるために、当面様子見姿勢をとるのが定石だと考える。今後も原油価格高騰や原油輸入の減少が続き、また政府によるガソリン、電力消費の自粛要請、さらには供給規制が講じられれば、経済活動は大きく下振れするリスクが高まることになる。
こうした景気下振れの大きな潜在的リスクがあるなかでは、日本銀行は4月の金融政策決定会合での利上げを見送ると筆者は引き続き予想している。しかし、金融市場では、4月の利上げ観測がかなり強いことは確かである。
今回の支店長会議は、日本銀行が4月の会合での利上げの有無を判断する決定的な材料は提供されなかったとともに、利上げの有無を巡って市場に対する日本銀行の明確なメッセージともならなかった。
4月の会合で利上げを実施するにしても見送るにしても、その前に日本銀行は、総裁の発言などを通じてその意図を市場に明確に伝えるだろう。そのメッセージを待ちたい。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。