ホルムズ海峡の事実上の封鎖は国際法違反
4月6日の参院予算委員会で高市首相は、「イランと首脳級を含めた電話会談を調整中」と述べた。イランと首脳級との対話は、今までは実現していなかったのである。
日本は、米国側の主張に沿う形で、ホルムズ海峡が事実上の封鎖状態にあるとみなし、国際法違反であるとしてその解除をイランに強く要請する、という立場をとっている。3月19日に、英国、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ(その後カナダ等も参加)とともに出した共同声明では、イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖を「最も強い言葉で非難」するとしたうえで、航行の自由は国際法の基本原則であり、国連海洋法条約(UNCLOS)の下でも保障されている、と明記している。
一方でイラン政府は、ホルムズ海峡を封鎖していないという立場である。米国とイスラエルによる国際法違反の攻撃を受けたため、正当な自衛権の行使の一環として敵国である両国の船舶の航行を認めていないだけだ、としている。
ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾(公海/EEZ)を結ぶ国際航行に使用される海峡であり、国連海洋法条約第37条のいう「国際海峡」に該当すると広く理解されている。国際海峡では、国連海洋法条約第38条に基づき、すべての国の船舶・航空機に「通過通航権(transit passage)」が認められている。
イランは国連海洋法条約には署名はしたが批准していないため、「通過通航権は条約上の義務ではない」とも主張してきた。しかし、国際海峡における通過通航の自由は慣習国際法として成立している可能性が高いことから、非締約国であっても原則として拘束される、との解釈が一般的だ。
このように、イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖は国際法違反との解釈が広くなされている。しかし、それを巡る日本とイランの立場の違いが、両国間の直接交渉の妨げとなってきた可能性はあるだろう。
日本は、米国側の主張に沿う形で、ホルムズ海峡が事実上の封鎖状態にあるとみなし、国際法違反であるとしてその解除をイランに強く要請する、という立場をとっている。3月19日に、英国、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ(その後カナダ等も参加)とともに出した共同声明では、イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖を「最も強い言葉で非難」するとしたうえで、航行の自由は国際法の基本原則であり、国連海洋法条約(UNCLOS)の下でも保障されている、と明記している。
一方でイラン政府は、ホルムズ海峡を封鎖していないという立場である。米国とイスラエルによる国際法違反の攻撃を受けたため、正当な自衛権の行使の一環として敵国である両国の船舶の航行を認めていないだけだ、としている。
ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾(公海/EEZ)を結ぶ国際航行に使用される海峡であり、国連海洋法条約第37条のいう「国際海峡」に該当すると広く理解されている。国際海峡では、国連海洋法条約第38条に基づき、すべての国の船舶・航空機に「通過通航権(transit passage)」が認められている。
イランは国連海洋法条約には署名はしたが批准していないため、「通過通航権は条約上の義務ではない」とも主張してきた。しかし、国際海峡における通過通航の自由は慣習国際法として成立している可能性が高いことから、非締約国であっても原則として拘束される、との解釈が一般的だ。
このように、イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖は国際法違反との解釈が広くなされている。しかし、それを巡る日本とイランの立場の違いが、両国間の直接交渉の妨げとなってきた可能性はあるだろう。
ホルムズ海峡通過に通航料を徴収することも国際法違反
ホルムズ海峡に関して、もう一点、国際法違反を問われているのは、イランが船舶の航行に際して通航料を徴収しているとされる点だ。
国連海洋法条約第26条(領海通航に対する課徴金)の第1項は、沿岸国は、外国船舶に対して、領海を通航したことのみを理由として、いかなる課徴金も課してはならない、としている。他方、第2項は、当該外国船舶に提供された特定のサービスに対する対価としてのみ、課徴金を課すことができるとし、さらに、この課徴金は国籍による差別なく課されなければならない、と規定している。
例外となる「特定のサービス」とは、水先案内人(パイロット)の提供、海難救助、特別な航行援助施設の利用などである。実際に、こうしたサービスの提供があることが例外的に通航料を徴収できる条件となるが、今回の件はこれには当たらない。
ホルムズ海峡は最も狭い部分で全域がイランとオマーンの領海に覆われる。そのためイランは、「領海なのだから課徴金を取れる」と主張する。しかし既に見たように、ホルムズ海峡は国際航行に使用される海峡であり、すべての国の船舶・航空機に「通過通航権(transit passage)」が認められている。従って、ホルムズ海峡の通過に際して通航料を徴収することは国際法違反というのが一般的な解釈だ。
国連海洋法条約第26条(領海通航に対する課徴金)の第1項は、沿岸国は、外国船舶に対して、領海を通航したことのみを理由として、いかなる課徴金も課してはならない、としている。他方、第2項は、当該外国船舶に提供された特定のサービスに対する対価としてのみ、課徴金を課すことができるとし、さらに、この課徴金は国籍による差別なく課されなければならない、と規定している。
例外となる「特定のサービス」とは、水先案内人(パイロット)の提供、海難救助、特別な航行援助施設の利用などである。実際に、こうしたサービスの提供があることが例外的に通航料を徴収できる条件となるが、今回の件はこれには当たらない。
ホルムズ海峡は最も狭い部分で全域がイランとオマーンの領海に覆われる。そのためイランは、「領海なのだから課徴金を取れる」と主張する。しかし既に見たように、ホルムズ海峡は国際航行に使用される海峡であり、すべての国の船舶・航空機に「通過通航権(transit passage)」が認められている。従って、ホルムズ海峡の通過に際して通航料を徴収することは国際法違反というのが一般的な解釈だ。
政府が通航料の支払いを条件に海峡通過をイランと交渉することの国際法上の問題
注目したいのは、国際法違反である通航料を日本の船舶が支払ってホルムズ海峡を通過する場合、その行為が国際法違反に問われるか、という問題である。
国際法における違法性は、原則として国家の行為に適用される。従って、民間船社・船主が、違法に課された通航料を支払ったこと自体が、直ちに国際法違反とはならない。また、国際法がそれを直接処罰・違法化する規定も存在しない。
日本の民間船舶は、通航料を支払うことでホルムズ海峡を通過しなければ、拿捕・攻撃されるなどの危険に晒されている。そうしたもとでの通航料の支払いは、国際法上は違法状態を是認したとは評価されず、むしろ、違法行為の被害者的立場とみなされるだろう。
しかし、日本政府が通航料の支払いを条件に日本船舶のホルムズ海峡通過をイランと交渉すれば、日本政府が違法な海峡管理を事実上承認(黙認)したと評価されるリスクが生じる。この点に配慮して、日本政府は、「通航料徴収は国際法違反」であり、ホルムズ海峡再開を巡るイランとの交渉は「支払いを前提としない」との立場を維持しているとみられる。
しかし、日本船舶のホルムズ海峡を通過できずに原油調達に大きな支障が生じていることは、日本に大きな経済損失をもたらしている。この点を踏まえれば、国際法上の問題を考慮に入れても、政府は、日本の民間船舶の通航料の支払いを前提にしたホルムズ海峡通過を、イランと直接交渉すべきではないか。
国際法における違法性は、原則として国家の行為に適用される。従って、民間船社・船主が、違法に課された通航料を支払ったこと自体が、直ちに国際法違反とはならない。また、国際法がそれを直接処罰・違法化する規定も存在しない。
日本の民間船舶は、通航料を支払うことでホルムズ海峡を通過しなければ、拿捕・攻撃されるなどの危険に晒されている。そうしたもとでの通航料の支払いは、国際法上は違法状態を是認したとは評価されず、むしろ、違法行為の被害者的立場とみなされるだろう。
しかし、日本政府が通航料の支払いを条件に日本船舶のホルムズ海峡通過をイランと交渉すれば、日本政府が違法な海峡管理を事実上承認(黙認)したと評価されるリスクが生じる。この点に配慮して、日本政府は、「通航料徴収は国際法違反」であり、ホルムズ海峡再開を巡るイランとの交渉は「支払いを前提としない」との立場を維持しているとみられる。
しかし、日本船舶のホルムズ海峡を通過できずに原油調達に大きな支障が生じていることは、日本に大きな経済損失をもたらしている。この点を踏まえれば、国際法上の問題を考慮に入れても、政府は、日本の民間船舶の通航料の支払いを前提にしたホルムズ海峡通過を、イランと直接交渉すべきではないか。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。