ムーディーズは、ビジネス開発会社(BDC)の形態で運営され、新興企業・未公開企業への直接貸出や経営支援を行うプライベート・クレジット・ファンドについて、格付けの見通しを「ネガティブ(弱含み)」に引き下げた。
プライベート・クレジット・ファンドは1兆8,000億ドル規模に達するとされ、AIによる打撃が懸念される中小ソフトウエア業界へのエクスポージャーの大きさなどから、そのリスクが意識されるようになってきた。そのため、投資家からファンドへの解約請求が相次いでいる。
ムーディーズは格付けの見通しを2年余り「安定的」に維持してきたが、プライベート・クレジット資産の60%を占める非上場BDCで資金流出が続いていることに加え、上場BDCでの高いレバレッジ(借り入れ)比率を理由に、今回見直しに動いた。
プライベート・クレジット・ファンドは2025年7-9月期までは力強い資金流入が続いてきたが、ムーディーズによると、今年1-3月期には初めて流出超過に転じた。ブルームバーグの推計とロバート・A・スタンガーのデータによると、投資家は1-3月期に10数本のファンドから約130億ドルの資金引き出しを試みたという。
ムーディーズのアナリストは、今後1年間、プライベート・クレジット・ファンドへの懸念がさらに強まると予測している。最近の解約請求の高まりにより、一部のファンドは解約請求に上限を設けざるを得なくなり、それが投資家の不安を高め、次々とポジションを解消しようとする連鎖的な状況を生じさせている。
またムーディーズは、プライベート・クレジット・ファンドの格付けの見通しを引き下げるとともに、代表的な非上場BDCのブルー・アウル・クレジット・インカム・コープの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更した。1-3月期に同業他社を大きく上回る解約請求があったことをその理由に挙げている。
ブルー・アウル・キャピタルの主力プライベート・クレジット・ファンドであるブルー・アウル・クレジット・インカム・コープには株式総数の20%を上回る解約請求が殺到し、またブルー・アウル・テクノロジー・インカム・コープ(OTIC)では40%を超えた。
それでも同社は、非上場BDCとして運営される個人投資家向けプライベート・クレジット・ファンドについて、アポロやアレス、ブラックロックに続いて、株式総数の5%という払い戻し制限を順守し、それを超える解約請求に応じないことを決めた。これをきっかけに、同社の株価は大きく下落し、6日の取引の終値ベースで最安値を更新している。
プライベート・クレジット・ファンドの解約請求の増加は、貸出先の企業の経営状況の顕著な悪化を映したものというよりも、解約の増加やそれに対する解約制限の動きが投資家の不安を高め、さらなる解約請求につながっているという面が現時点では強いように思われる。
それでも、解約の制限によって投資家が思うように解約できなければ、解約要求が翌期持ち越されることになるため、解約の動きが収まるまでには、なお時間がかかるだろう。
そうしたなか、プライベート・クレジット・ファンドによる新規の貸出抑制の動きが広がり、新興企業・未公開企業の経営、そして米国経済に実際に一定程度の打撃を及ぼす可能性があるだろう。
(参考資料)
“Private Credit Exodus Turns Moody’s BDC Outlook to Negative(プライベート・クレジットの格付け見通し、弱含みに)”, Bloomberg, April 7, 2026
“Blue Owl Stock Closes at a Record Low Amid Private Credit Exodus(ブルー・アウルのプライベート・クレジット、格付け見通し引き下げ)” , Bloomberg, April 7, 2026
プライベート・クレジット・ファンドは1兆8,000億ドル規模に達するとされ、AIによる打撃が懸念される中小ソフトウエア業界へのエクスポージャーの大きさなどから、そのリスクが意識されるようになってきた。そのため、投資家からファンドへの解約請求が相次いでいる。
ムーディーズは格付けの見通しを2年余り「安定的」に維持してきたが、プライベート・クレジット資産の60%を占める非上場BDCで資金流出が続いていることに加え、上場BDCでの高いレバレッジ(借り入れ)比率を理由に、今回見直しに動いた。
プライベート・クレジット・ファンドは2025年7-9月期までは力強い資金流入が続いてきたが、ムーディーズによると、今年1-3月期には初めて流出超過に転じた。ブルームバーグの推計とロバート・A・スタンガーのデータによると、投資家は1-3月期に10数本のファンドから約130億ドルの資金引き出しを試みたという。
ムーディーズのアナリストは、今後1年間、プライベート・クレジット・ファンドへの懸念がさらに強まると予測している。最近の解約請求の高まりにより、一部のファンドは解約請求に上限を設けざるを得なくなり、それが投資家の不安を高め、次々とポジションを解消しようとする連鎖的な状況を生じさせている。
またムーディーズは、プライベート・クレジット・ファンドの格付けの見通しを引き下げるとともに、代表的な非上場BDCのブルー・アウル・クレジット・インカム・コープの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更した。1-3月期に同業他社を大きく上回る解約請求があったことをその理由に挙げている。
ブルー・アウル・キャピタルの主力プライベート・クレジット・ファンドであるブルー・アウル・クレジット・インカム・コープには株式総数の20%を上回る解約請求が殺到し、またブルー・アウル・テクノロジー・インカム・コープ(OTIC)では40%を超えた。
それでも同社は、非上場BDCとして運営される個人投資家向けプライベート・クレジット・ファンドについて、アポロやアレス、ブラックロックに続いて、株式総数の5%という払い戻し制限を順守し、それを超える解約請求に応じないことを決めた。これをきっかけに、同社の株価は大きく下落し、6日の取引の終値ベースで最安値を更新している。
プライベート・クレジット・ファンドの解約請求の増加は、貸出先の企業の経営状況の顕著な悪化を映したものというよりも、解約の増加やそれに対する解約制限の動きが投資家の不安を高め、さらなる解約請求につながっているという面が現時点では強いように思われる。
それでも、解約の制限によって投資家が思うように解約できなければ、解約要求が翌期持ち越されることになるため、解約の動きが収まるまでには、なお時間がかかるだろう。
そうしたなか、プライベート・クレジット・ファンドによる新規の貸出抑制の動きが広がり、新興企業・未公開企業の経営、そして米国経済に実際に一定程度の打撃を及ぼす可能性があるだろう。
(参考資料)
“Private Credit Exodus Turns Moody’s BDC Outlook to Negative(プライベート・クレジットの格付け見通し、弱含みに)”, Bloomberg, April 7, 2026
“Blue Owl Stock Closes at a Record Low Amid Private Credit Exodus(ブルー・アウルのプライベート・クレジット、格付け見通し引き下げ)” , Bloomberg, April 7, 2026
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。