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ガソリン補助金は2週連続で減額

経済産業省・資源エネルギー庁は4月15日に、4月16日から23日の1週間のガソリン補助金が1リットル当たり35.5円になると発表した。前週の48.8円を大きく下回り、2週連続での減額となった。
 
補助金はレギュラーガソリン価格が全国平均で1リットル170円程度を上回らないように実施されているが、足もと(4月13日)のレギュラーガソリンの全国平均価格が1リットル167.5円と170円程度を下回っていることに加え、米国とイランの協議への期待などで原油価格が低下していることを反映したものと考えられる。
 
3 19 日以降: 30.2円/リットル
3 26 日以降: 48.1円/リットル
4 2 日以降: 49.8円/リットル
4 9 日以降: 48.8円/リットル
4 16 日以降: 35.5円/リットル

「標準シナリオ」では7月1日にガソリン補助金の予算は枯渇

補助金はやや減額されているが、その先行きを左右するイラン情勢とそれを受けた原油価格の動向は依然としてかなり不透明である。
 
こうした点を踏まえ、この先のガソリン補助金の予算枯渇シミュレーションについては前回と同様に、最新の補助金である1リットル当たり35.5円が今後も続くケースを「標準シナリオ」、4月23日以降に1リットル当たり60円が続くケースを「悲観シナリオ」、4月23日以降に1リットル当たり30円が続くケースを「楽観シナリオ」とした。
 
現在のガソリン補助金の予算が枯渇するのは、それぞれ「標準シナリオ」で7月1日、「悲観シナリオ」で6月3日、「楽観シナリオ」で7月14日となる(図表)。
 
「標準シナリオ」での枯渇時期は、先週時点でのシミュレーション結果の6月10日からかなり後ずれした。原油価格が低下していることなどから、足元で見れば「楽観シナリオ」の可能性が幾分高まり、「悲観シナリオ」の可能性が幾分低下していると言えるだろう。それでも、補助金額を左右する今後の原油価格の動向は、引き続き予想しがたい。
 
図表 ガソリン補助金の予算枯渇シミュレーション

ガソリン補助金制度は継続も補助金の減額でガソリン価格が上昇する可能性

現在確保している予算が枯渇した場合でも、政府は新たに予算を確保することで、補助金制度を当面維持する可能性は高いだろう。しかし、いずれ現在のガソリン補助金制度を見直して補助金を縮小させることは考えられ、それは、ガソリン価格の緩やかな上昇をもたらすだろう。
 
政府が補助金を縮小するとすれば、第1の狙いは財政負担の軽減である。全国のレギュラーガソリンの平均価格を1リットル当たり170円程度に抑える現在の政府の補助金制度のもとでは、原油価格が上昇するほど補助金の金額が膨らんでいき、財政全体を圧迫することになる。現時点でもなお2か月で1兆円程度のペースで予算が補助金に投じられていると考えられ、その財政への負担は大きい。
 
第2の狙いは、個人にガソリン消費の節約を促すことだ。政府は近いうちに国民に対して、ガソリン消費の抑制を呼びかけることになると予想されるが、その際に、補助金でガソリン価格を比較的低位に安定させれば、抑制は進みにくくなってしまう。つまり、ガソリン消費の節約の呼びかけとガソリン補助金制度とが互いに矛盾した政策となってしまう。また、ガソリン補助金はより長い目で見た脱炭素の政策とも矛盾する。  
 
ガソリン補助金制度の再導入は、原油価格の高騰を受けて必要な政策だったと思うが、長く続けるほど、このような弊害は高まっていく。こうした点を踏まえ、早ければ5月中にもガソリン補助金が削減され、ガソリン価格は現在の1リットル170円程度が180円や190円、場合によっては200円まで引き上げられる可能性もあると見ておきたい。
 
ただしその場合でも、ガソリン価格の上昇で生活が大きな打撃を受ける低所得層などに対しては、給付金など、別途、支援策を講じる必要があるのではないか。
 
仮に政府が補助金を削減して1リットル200円までのガソリン価格上昇を容認する場合には、1リットル170円と比べてガソリン価格は17.6%上昇する。2人以上世帯の平均ガソリン消費額は2025年に7万2,474円だったが、それが17.6%増加する場合には、家計の負担額は年間1万2,755円増える計算となる。

プロフィール

  • 木内 登英のポートレート

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。