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ガソリン補助金は4週ぶりに増額

3月19日に開始されたガソリン補助金について、経済産業省・資源エネルギー庁は4月30日から5月6日までの1週間のガソリン補助金が1リットル当たり39.7円になると4月30日に発表した。4週ぶりの増額となった。
 
補助金はレギュラーガソリン価格が全国平均で1リットル170円程度を上回らないように実施されており、足もと(4月27日)のレギュラーガソリンの全国平均価格が1リットル169.7円と170円程度を僅かに下回っている。
 
海外での原油価格が再び上昇していることを反映し、ガソリンの卸価格が上昇したため、石油元売り業者への補助金額が増加したと考えられる。
 
3月19日以降: 30.2円/リットル
3月26日以降: 48.1円/リットル
4月 2日以降: 49.8円/リットル
4月 9日以降: 48.8円/リットル
4月16日以降: 35.5円/リットル
4月23日以降: 30.9円/リットル
4月30日以降: 39.7円/リットル

「標準シナリオ」では6月25日にガソリン補助金の予算は枯渇

先行きのガソリン補助金額を左右するイラン情勢とそれを受けた原油価格の動向は依然としてかなり不透明である。こうした点を踏まえ、3つのシナリオに基づいて、この先のガソリン補助金の予算枯渇シミュレーションを行った。
 
前回までと同様に、最新の補助金である1リットル当たり39.7円が今後も続くケースを「標準シナリオ」、5月7日以降は1リットル当たり50円の補助金が続くケースを「悲観シナリオ」、5月7日以降は1リットル当たり20円の補助金が続くケースを「楽観シナリオ」とした。
 
現在のガソリン補助金の予算が枯渇する時期は「標準シナリオ」では6月25日と、1週間前の試算値7月11日と比べて前倒しになった。「悲観シナリオ」で6月15日、「楽観シナリオ」で8月13日だ(図表)。「標準シナリオ」でも、予算が枯渇するまでに残り2か月もない。
 
図表 ガソリン補助金の予算枯渇シミュレーション

電気・ガスの補助金と補正予算の議論

4月30日にロイター通信が報じたところによると、政府は7-9月に電気・ガスの補助金制度を導入することを検討している。政府が電気・ガスの需要が高まる冬季と夏季に電気・ガスの補助金制度を導入することは既に恒例化しており、特に足元ではイラン情勢を受けて原油価格、LNGの価格が高騰し、電気・ガス代が大きく上昇する見通しであることから、補助金の導入はほぼ予想されたことだ。
 
また、予算規模は5,000億円に及ぶ可能性があり、予備費から捻出されるとも報じられている。これは、2026年度予算の予備費1兆円の半分の規模である。
 
現在のガソリン補助金の予算不足が視野に入ってくれば、政府は新たな予算の手当てを5月中にも検討し始めるだろうが、2026年度予算の予備費から電気・ガスの補助金に5,000億円を充てるのであれば、予備費をガソリン補助金に充てるのは難しくなるだろう。仮に残りの5,000億円をガソリン補助金に充てても、現在の補助金の規模では、38日分しか持たない計算だ。実際には、自然災害への対応など、予備費は一定額残しておく必要がある。
 
そこで、補正予算の編成が必要になると考えられる。高市首相が現時点で否定している補正予算の編成は、ゴールデンウィーク明けの5月中にも検討が始まる可能性が出てきた。5月には、電気・ガスの補助金の導入、ガソリン補助金の新たな予算の手当に加えて、ガソリン消費の節約や電気・ガスの節約を国民に呼びかける需要抑制策の開始、ガソリンの補助金の削減によるガソリン小売価格の180円、あるいは190円への引き上げなど、原油高・原油供給不足対策が大きく動き出す可能性があるだろう。

プロフィール

  • 木内 登英のポートレート

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。