10%の代替関税も違法判決
米国際貿易裁判所は5月7日に、トランプ米大統領が今年2月に相互関税の代わりに導入した代替関税について、違法との判断を示した。米連邦最高裁は2月20日に、トランプ政権が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいて課した相互関税、フェンタニル関税は大統領の権限を逸脱しているとして、違法判決を下していた。これを受けてトランプ政権は即座に通商法122条に基づく10%の代替関税を発動したが、それについても違法との判断が今回示されたのである。
連邦最高裁は、議会の承認を経ずに大統領が関税を課すことが違法、との判断を示した。そのため、通商法122条に基づく10%の代替関税についても同様に違法であるとして、複数の州は3月に国際貿易裁判所に提訴していた。
国際貿易裁判所は、代替関税についても大統領の権限を逸脱しているとの判断を示したが、それに加えて、通商法122条の解釈の問題についても言及している。通商法122条は「深刻な国際収支の危機」が発生して米国が通貨防衛を迫られた際に、150日間に限って最大15%の関税を発動することができる、と定められている。貿易裁判所は、政権が条文で記された「国際収支の赤字」を「貿易赤字」に解釈を歪め、10%の関税を発動したと指摘した。貿易収支は赤字だが資本収支を含む国際収支は赤字とは特定できないとしている。
連邦最高裁は、議会の承認を経ずに大統領が関税を課すことが違法、との判断を示した。そのため、通商法122条に基づく10%の代替関税についても同様に違法であるとして、複数の州は3月に国際貿易裁判所に提訴していた。
国際貿易裁判所は、代替関税についても大統領の権限を逸脱しているとの判断を示したが、それに加えて、通商法122条の解釈の問題についても言及している。通商法122条は「深刻な国際収支の危機」が発生して米国が通貨防衛を迫られた際に、150日間に限って最大15%の関税を発動することができる、と定められている。貿易裁判所は、政権が条文で記された「国際収支の赤字」を「貿易赤字」に解釈を歪め、10%の関税を発動したと指摘した。貿易収支は赤字だが資本収支を含む国際収支は赤字とは特定できないとしている。
代替関税への違法判決はトランプ政権にとっては想定内
ただし、国際貿易裁判所による通商法122条に基づく代替関税への違法判決は、トランプ政権にとっては予想されたことであり想定内のことだ。トランプ政権は、150日の間に通商法122条に基づく暫定的な関税を、貿易相手国の不公正な貿易を理由に関税を認める通商法301条などに基づく恒久的な関税へと転換し、違憲判決が出された相互関税と同じスキームを再現する考えだからだ。
暫定的な通商法122条に基づく代替関税ではなく、今までも多くの訴訟に晒されてきたより安定性の高い通商法301条であれば、違法判決を回避できると考えている。
国際貿易裁判所による今回の違法判決を受けて、トランプ政権は予想通りに控訴した。判決が確定するまでには、通商法301条に基づく代替関税に移行しているため問題はない、というのがトランプ政権の考えだ。
暫定的な通商法122条に基づく代替関税ではなく、今までも多くの訴訟に晒されてきたより安定性の高い通商法301条であれば、違法判決を回避できると考えている。
国際貿易裁判所による今回の違法判決を受けて、トランプ政権は予想通りに控訴した。判決が確定するまでには、通商法301条に基づく代替関税に移行しているため問題はない、というのがトランプ政権の考えだ。
トランプ関税は司法によって阻まれ縮小方向か
しかし、関税発動前に綿密な調査が求められる通商法301条に基づく代替関税で、すべての国、ほぼすべての輸入品を対象にする相互関税と同様のスキームを再現することは簡単ではない。150日のうちにそれを実施するのは困難だろう。
それでも実現しようとすれば、調査の相当部分を省略する必要があり、それがいずれ裁判所の違法との判断を引き出す可能性がある。そのため、対象をかなり絞り込んだ代替関税となる可能性もあるだろう。
さらに、米連邦最高裁が下したのはIEEPAに基づいて課した相互関税、フェンタニル関税の違憲判断であったが、そもそも議会の承認なく大統領の権限で関税を課すこと自体が違憲、との判断を示したのである。それは、トランプ政権のもとでの関税のすべてについて違憲が問われるということでもある。
このように考えると、トランプ政権による関税政策は、司法によって阻まれ縮小方向を余儀なくされる可能性が高まっているのではないか。
(参考資料)
「トランプ代替関税も違法 7月から新たな関税に」、2026年5月9日、日本経済新聞
「トランプ関税:米10%代替関税「違法」 トランプ氏「策はある」 米貿易裁」、2026年5月9日、毎日新聞
それでも実現しようとすれば、調査の相当部分を省略する必要があり、それがいずれ裁判所の違法との判断を引き出す可能性がある。そのため、対象をかなり絞り込んだ代替関税となる可能性もあるだろう。
さらに、米連邦最高裁が下したのはIEEPAに基づいて課した相互関税、フェンタニル関税の違憲判断であったが、そもそも議会の承認なく大統領の権限で関税を課すこと自体が違憲、との判断を示したのである。それは、トランプ政権のもとでの関税のすべてについて違憲が問われるということでもある。
このように考えると、トランプ政権による関税政策は、司法によって阻まれ縮小方向を余儀なくされる可能性が高まっているのではないか。
(参考資料)
「トランプ代替関税も違法 7月から新たな関税に」、2026年5月9日、日本経済新聞
「トランプ関税:米10%代替関税「違法」 トランプ氏「策はある」 米貿易裁」、2026年5月9日、毎日新聞
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。