ベッセント財務長官は日本政府の為替介入を支持するか
5月14~15日に北京で米中首脳会談が開かれる。それに先立ち、トランプ大統領に同行するベッセント米財務長官は、11日から13日までの3日間、日本に滞在する。その間、高市首相、片山財務相、植田日銀総裁らとそれぞれ会談し、12日には日本の経済界と夕食会が開催される見通しだ。
大型連休中に日本政府はドル売り円買いの為替介入を実施した可能性が高い。その直後のベッセント財務長官の訪日となったことから、為替介入に関する発言が出るかどうかに、金融市場は特に注目している。
日本政府としては、ベッセント財務長官に日本の為替介入への支持を表明して欲しいと考えているだろう。そうなれば、為替市場では為替介入への警戒感が強まり、為替介入の有効性も高まる。為替市場では円安修正が進むだろう。
しかしベッセント財務長官がそこまで日本政府にサービスするかどうかは分からない。「為替市場の安定のため日米当局は緊密に連携する」といった通常の発言にとどまることをメインシナリオと考えておきたい。その場合には、為替市場への影響は限定的だろう。
仮にベッセント財務長官が日本の為替介入に否定的な発言をすれば、今後の為替介入は制約されるとの見方から、円安が進むだろう。しかしその可能性は低いと考えられる。米政府は、ドル高円安を望んでいないからだ。
大型連休中に日本政府はドル売り円買いの為替介入を実施した可能性が高い。その直後のベッセント財務長官の訪日となったことから、為替介入に関する発言が出るかどうかに、金融市場は特に注目している。
日本政府としては、ベッセント財務長官に日本の為替介入への支持を表明して欲しいと考えているだろう。そうなれば、為替市場では為替介入への警戒感が強まり、為替介入の有効性も高まる。為替市場では円安修正が進むだろう。
しかしベッセント財務長官がそこまで日本政府にサービスするかどうかは分からない。「為替市場の安定のため日米当局は緊密に連携する」といった通常の発言にとどまることをメインシナリオと考えておきたい。その場合には、為替市場への影響は限定的だろう。
仮にベッセント財務長官が日本の為替介入に否定的な発言をすれば、今後の為替介入は制約されるとの見方から、円安が進むだろう。しかしその可能性は低いと考えられる。米政府は、ドル高円安を望んでいないからだ。
日本銀行の利上げを支持するか
ただしベッセント財務長官は為替介入を通じた円安修正よりも、日本銀行の利上げを通じた円安修正をより期待しているとみられる。昨年10月の訪日時には、日本銀行の利上げをけん制する高市政権を批判し、そうしたアベノミクスを継承する政策姿勢は円安を助長するとした。
しかし、その後、高市政権は円安・物価高リスクを高める利上げけん制の発言を控えている。そのため、ベッセント財務長官が金融政策を巡って再び高市政権を批判することはないだろう。
円安修正の観点から、日本銀行の利上げを支持する発言をベッセント財務長官がする可能性はあり、その場合には、円高、債券安が進むだろう。
しかし、その後、高市政権は円安・物価高リスクを高める利上げけん制の発言を控えている。そのため、ベッセント財務長官が金融政策を巡って再び高市政権を批判することはないだろう。
円安修正の観点から、日本銀行の利上げを支持する発言をベッセント財務長官がする可能性はあり、その場合には、円高、債券安が進むだろう。
市場の安定に配慮した財政政策を再度求める可能性
今年1月には、日本の積極財政政策姿勢が長期金利の上昇を生じさせ、その影響が米国の財務省証券市場にも及んだことから、ベッセント財務長官は、市場の安定に配慮した政策を日本政府に求めた。イラン問題で長期金利が上昇するなか、今回の訪日時にもベッセント財務長官は同様の要請をする可能性があるのではないか。その場合、高市政権の積極財政政策はさらに制約を受けるとの見方から、円高、債券高が進む可能性がある。
他方、日本のドル売り円買い介入で米国の財務省証券が売られることを米当局が懸念しているとの指摘があるが、その規模は小さいことから、訪日時の話題にはならないと考えられる。
他方、日本のドル売り円買い介入で米国の財務省証券が売られることを米当局が懸念しているとの指摘があるが、その規模は小さいことから、訪日時の話題にはならないと考えられる。
日中関係改善の目途は立たない
ベッセント米財務長官の訪日に際して、金融市場は以上のような点に注目するだろうが、ベッセント米財務長官が今回訪日する最大の目的は、米中首脳会談を前に対中政策を巡って日米間の調整を行うことだろう。
トランプ大統領は、高市政権のもとで日中関係が悪化していることを懸念しているとみられるが、それでも米中関係を悪化させてまで中国に対して日本との関係改善を強く働きかけることはしないだろう。
米中首脳会談の最大のテーマは、イラン問題と米中関税問題、そして台湾問題だ。日本政府は、トランプ政権の仲介で日中関係の改善を図りたいと考えているだろうが、それは実現しにくい。
またベッセント財務長官は、金融インフラの大きな脅威になっているアンソロピックのミトス問題を訪日中に政府や日本の金融界と議論する可能性があり、注目しておきたい。
トランプ大統領は、高市政権のもとで日中関係が悪化していることを懸念しているとみられるが、それでも米中関係を悪化させてまで中国に対して日本との関係改善を強く働きかけることはしないだろう。
米中首脳会談の最大のテーマは、イラン問題と米中関税問題、そして台湾問題だ。日本政府は、トランプ政権の仲介で日中関係の改善を図りたいと考えているだろうが、それは実現しにくい。
またベッセント財務長官は、金融インフラの大きな脅威になっているアンソロピックのミトス問題を訪日中に政府や日本の金融界と議論する可能性があり、注目しておきたい。
プロフィール
-
木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。