トランプ米大統領は5月13日に中国を訪問し、習近平国家主席と2日間の協議を行う。イラン情勢を巡る議論が注目を集めているが、本来、主要テーマは米中間の貿易問題だろう。
トランプ政権は多くの主要国との間で関税合意を締結しているが、中国は例外だ。中国との間ではなお全面的な最終合意には至っておらず、2025年10月の首脳会談以降、休戦が続いている。
この暫定合意では、期限付きで関税の一部停止や引き下げが実施されている。米国は相互関税の上乗せ分を一時停止し、フェンタニル関連関税を引き下げた。今年2月に国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく相互関税、フェンタニル関連関税に対して米最高裁が違法判決を下し、それらが失効した後は、他国と同様に中国には米国から10%の代替関税が課されている。
また、暫定合意には、米国産大豆など農産物の購入、期限付きでの中国のレアアース(希土類)輸出規制強化の停止、貿易・投資を巡る協力メカニズム(対話枠組み)の構築などが含まれている。これらの暫定合意は、2026年11月に失効する予定だ。今回の訪中でトランプ大統領は、この米中暫定合意の延長を目指すものとみられる。
昨年4月にトランプ政権が相互関税を導入した際には、中国のみが報復関税で強く抵抗し、最終的には米国が中国に対して145%、中国が米国に対して125%の異例の高水準の関税を課すに至った。
しかしその後は、中国に対する米国側の譲歩が目立ち、5月と10月に暫定合意が成立した。中国側の報復措置で特に米国に打撃となったのは、レアアースの輸出規制強化だ。これが米国でのEVなどハイテク製品の生産を大きく制約した。そのため、トランプ政権は、中国がレアアース(希土類)輸出規制強化に再度踏み出さないように、慎重な対応をしてきた。中国については、日本、韓国、欧州連合(EU)などのように巨額な対米投資も求めてこなかった。
このように、米中貿易協議では、トランプ政権の立場は弱い。今回の首脳会談でもトランプ大統領は習近平国家主席を怒らせないように細心の注意を払うだろう。
最大のテーマである貿易問題でトランプ大統領の立場が弱いことから、外交、安全保障問題においても、トランプ大統領は習近平国家主席に対して強く出られないだろう。イラン情勢では、トランプ大統領は戦争終結に向けて中国に仲介役を果たして欲しいと考えているのではないか。習近平国家主席も戦争終結に向けて大きな役割を果たし、国際社会での中国の存在感を高めたいとの思いはあるだろう。しかしそれ以上に、戦争に巻き込まれたくないとの考えの方が強く、仲介役を果たすことはないのではないか。
台湾問題については、話し合われるとしても、トランプ大統領から中国を刺激するような踏み込んだ発言は出ないだろう。また、中国を刺激してまで日中関係改善に向けた積極的な働きかけをトランプ大統領が中国に対して行うことはないのではないか。
このように、今回の米中首脳会談では、トランプ大統領が米国に大きな成果を持ち帰ることは難しいだろう。
トランプ政権は多くの主要国との間で関税合意を締結しているが、中国は例外だ。中国との間ではなお全面的な最終合意には至っておらず、2025年10月の首脳会談以降、休戦が続いている。
この暫定合意では、期限付きで関税の一部停止や引き下げが実施されている。米国は相互関税の上乗せ分を一時停止し、フェンタニル関連関税を引き下げた。今年2月に国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく相互関税、フェンタニル関連関税に対して米最高裁が違法判決を下し、それらが失効した後は、他国と同様に中国には米国から10%の代替関税が課されている。
また、暫定合意には、米国産大豆など農産物の購入、期限付きでの中国のレアアース(希土類)輸出規制強化の停止、貿易・投資を巡る協力メカニズム(対話枠組み)の構築などが含まれている。これらの暫定合意は、2026年11月に失効する予定だ。今回の訪中でトランプ大統領は、この米中暫定合意の延長を目指すものとみられる。
昨年4月にトランプ政権が相互関税を導入した際には、中国のみが報復関税で強く抵抗し、最終的には米国が中国に対して145%、中国が米国に対して125%の異例の高水準の関税を課すに至った。
しかしその後は、中国に対する米国側の譲歩が目立ち、5月と10月に暫定合意が成立した。中国側の報復措置で特に米国に打撃となったのは、レアアースの輸出規制強化だ。これが米国でのEVなどハイテク製品の生産を大きく制約した。そのため、トランプ政権は、中国がレアアース(希土類)輸出規制強化に再度踏み出さないように、慎重な対応をしてきた。中国については、日本、韓国、欧州連合(EU)などのように巨額な対米投資も求めてこなかった。
このように、米中貿易協議では、トランプ政権の立場は弱い。今回の首脳会談でもトランプ大統領は習近平国家主席を怒らせないように細心の注意を払うだろう。
最大のテーマである貿易問題でトランプ大統領の立場が弱いことから、外交、安全保障問題においても、トランプ大統領は習近平国家主席に対して強く出られないだろう。イラン情勢では、トランプ大統領は戦争終結に向けて中国に仲介役を果たして欲しいと考えているのではないか。習近平国家主席も戦争終結に向けて大きな役割を果たし、国際社会での中国の存在感を高めたいとの思いはあるだろう。しかしそれ以上に、戦争に巻き込まれたくないとの考えの方が強く、仲介役を果たすことはないのではないか。
台湾問題については、話し合われるとしても、トランプ大統領から中国を刺激するような踏み込んだ発言は出ないだろう。また、中国を刺激してまで日中関係改善に向けた積極的な働きかけをトランプ大統領が中国に対して行うことはないのではないか。
このように、今回の米中首脳会談では、トランプ大統領が米国に大きな成果を持ち帰ることは難しいだろう。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。