ウォーシュ次期議長は将来の金融緩和に向けた議論を主導するか
米議会上院は13日に、連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長にケビン・ウォーシュ氏を充てる人事を承認した。賛成54票、反対45票で承認され、すべての上院共和党議員から支持を取り付けたが、民主党議員の支持はわずか1票だった。FRB議長としては異例の僅差での承認となった背景には、トランプ大統領が議長人事を通じてFRBに対して利下げ圧力をかけることへの民主党の強い反発がある。
パウエル議長の任期は5月15日に終了し、ウォーシュ次期議長は6月16~17日に開催される次回米連邦公開市場委員会(FOMC)に議長として初参加する。議長任期4年である。
ウォーシュ次期議長は、上院の銀行委員会の証言で、トランプ大統領の意向に配慮した金融政策を行うことを強く否定した。他方、規制緩和とAI(人工知能)による生産性向上によって、FRBはインフレを引き起こすことなく利下げが可能になると論じている。これは、トランプ大統領の意向に沿って緩和バイアスの政策姿勢をとる可能性を示唆していると受け止められている。
4月の米消費者物価指数は前年同月比3.8%上昇し、2年11か月ぶりの高い水準となった。4月の卸売物価指数は同6.0%上昇と前月の4.3%から急加速した。原油価格高騰が物価上昇率を押し上げるなか、ウォーシュ次期議長が主導する形で6月16~17日の次回FOMCで利下げが実施されることは考えにくい。しかし、ウォーシュ次期議長がFOMC参加者を将来の金融緩和の方向に誘導するような議論をするかどうかは大きな注目点だ。
パウエル議長の任期は5月15日に終了し、ウォーシュ次期議長は6月16~17日に開催される次回米連邦公開市場委員会(FOMC)に議長として初参加する。議長任期4年である。
ウォーシュ次期議長は、上院の銀行委員会の証言で、トランプ大統領の意向に配慮した金融政策を行うことを強く否定した。他方、規制緩和とAI(人工知能)による生産性向上によって、FRBはインフレを引き起こすことなく利下げが可能になると論じている。これは、トランプ大統領の意向に沿って緩和バイアスの政策姿勢をとる可能性を示唆していると受け止められている。
4月の米消費者物価指数は前年同月比3.8%上昇し、2年11か月ぶりの高い水準となった。4月の卸売物価指数は同6.0%上昇と前月の4.3%から急加速した。原油価格高騰が物価上昇率を押し上げるなか、ウォーシュ次期議長が主導する形で6月16~17日の次回FOMCで利下げが実施されることは考えにくい。しかし、ウォーシュ次期議長がFOMC参加者を将来の金融緩和の方向に誘導するような議論をするかどうかは大きな注目点だ。
ドル安・債券安のリスクが高まり日本の長期金利を一段と押し上げる可能性も
しかし、パウエル議長は2028年まで任期が残る理事職にとどまる考えを示しており、FOMCには理事として参加し続ける。そのため、FOMC内に事実上の「2トップ」状態が生まれる可能性があるだろう。金融緩和を強く望むトランプ大統領の意向を受けたウォーシュ新議長がハト派的議論を主導し、緩和重視派が同氏のもとに集結する一方、今回声明文に反対した3人を中心とする金融緩和慎重派が、反ハト派と見なされるパウエル現議長のもとに集まり、FOMCが分裂する事態も想定される。
さらに、利下げに慎重なパウエル議長に対するトランプ大統領の激しい攻撃が今後も続き、大統領が同氏の理事職解任に動く可能性も否定できない。こうした露骨なFRBへの政治介入は、ドル安と債券安のリスクを一段と高める。
ウォーシュ次期議長は、FRBが国債管理政策への協力をやめ、バランスシート縮小に動くべきだと考えているとみられる。同氏は、金利政策では大統領の意向に沿うハト派的運営を行いつつ、バランスシート政策ではタカ派的運営を行うという難しい綱渡りを試みる可能性がある。
しかし、金利政策で過度に緩和的姿勢を取れば、中長期的な物価と通貨の安定が損なわれると市場は判断し、長期金利が上昇しかねない。さらに、バランスシート縮小を急ぎすぎれば、長期金利上昇リスクはさらに高まり、金融市場と経済の安定を脅かす。
FRB議長交代を巡る米国金融市場の動揺は、イラン情勢を受けた原油価格上昇の影響と相まって、2.6%と歴史的水準に達した日本の10年国債利回りを一段と上昇させる可能性があるだろう。それは、国内経済にマイナスの影響を及ぼし、いずれは日本株の下落のきっかけになることも考えられるところだ。
さらに、利下げに慎重なパウエル議長に対するトランプ大統領の激しい攻撃が今後も続き、大統領が同氏の理事職解任に動く可能性も否定できない。こうした露骨なFRBへの政治介入は、ドル安と債券安のリスクを一段と高める。
ウォーシュ次期議長は、FRBが国債管理政策への協力をやめ、バランスシート縮小に動くべきだと考えているとみられる。同氏は、金利政策では大統領の意向に沿うハト派的運営を行いつつ、バランスシート政策ではタカ派的運営を行うという難しい綱渡りを試みる可能性がある。
しかし、金利政策で過度に緩和的姿勢を取れば、中長期的な物価と通貨の安定が損なわれると市場は判断し、長期金利が上昇しかねない。さらに、バランスシート縮小を急ぎすぎれば、長期金利上昇リスクはさらに高まり、金融市場と経済の安定を脅かす。
FRB議長交代を巡る米国金融市場の動揺は、イラン情勢を受けた原油価格上昇の影響と相まって、2.6%と歴史的水準に達した日本の10年国債利回りを一段と上昇させる可能性があるだろう。それは、国内経済にマイナスの影響を及ぼし、いずれは日本株の下落のきっかけになることも考えられるところだ。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。