強制労働による製品の輸入阻止が十分でないとして日本に12.5%の関税を課す案
米通商代表部(USTR)は6月2日に、7月下旬に150日間の期限が切れて失効する予定の通商法122条に基づく10%の代替関税を引き継ぐ、通商法301条に基づいた新たな代替関税の案を示した。欧州連合(EU)、英国、その他10数か国・地域に対して、強制労働によって生産された製品の輸入を十分に阻止していないと判断されたとして、最低10%の新たな関税を課す。
一方、中国、日本、インドなどの国々については、そうした輸入を禁止しておらず、対応がより不十分であるとして、12.5%の関税が適用される見込みだとUSTRは説明している。
USTRは、カナダとメキシコも10%の関税の対象に含めたが、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に適合する製品については免除されると付け加えた。これら両国から米国への輸出の大半は、同協定に適合していると見なされており、同協定は現在、見直しが議論されている。
通商法301条は貿易相手国の不公正な貿易慣行に対して、報復の関税を課すものだ。その口実に強制労働が利用された感がある。ただし、新たに提案された関税は、今後、一般からの意見募集(パブリックコメント)の対象となり、まだ決定されたものではない。またUSTRのグレア代表は、議会の承認を経ずに150日間の期限を過ぎても通商法122条に基づく10%の関税を続けることができるとの法解釈も示しており、USTRのスタンスは定まっていないのではないか。
通商法301条に基づく関税発動は、事前の正式な調査プロセスが法的に必須とされる。外国政府の貿易に関わる行為、政策、慣行が、不合理で差別的であるか、国際協定に違反しているかどうか、米国の通商(貿易)に負担・制限を与えているかなどが調査される。
EUは今回の措置を正当性がないと批判し、中国は強制労働の存在自体を否定した上で、関税を「政治的操作の口実」として使うことに反対すると表明した。
日本は強制労働製品の輸入を禁止しておらず、対策が不十分な国とされた。主要国の中でも日本は規制が弱いと見られてきたのは事実である。米国、EU、カナダ・メキシコなどのように、強制労働製品の輸入を禁止する包括的な「輸入禁止法」が日本にはない。しかし、日本もサプライチェーンにおける人権尊重ガイドライン(2022年)を策定するなど、取り組みは進められている。
強制労働製品の輸入の規制が十分でなく、それが迂回輸出されて米国の企業、経済に打撃を与えているというのは言いがかりに近いだろう。
一方、中国、日本、インドなどの国々については、そうした輸入を禁止しておらず、対応がより不十分であるとして、12.5%の関税が適用される見込みだとUSTRは説明している。
USTRは、カナダとメキシコも10%の関税の対象に含めたが、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に適合する製品については免除されると付け加えた。これら両国から米国への輸出の大半は、同協定に適合していると見なされており、同協定は現在、見直しが議論されている。
通商法301条は貿易相手国の不公正な貿易慣行に対して、報復の関税を課すものだ。その口実に強制労働が利用された感がある。ただし、新たに提案された関税は、今後、一般からの意見募集(パブリックコメント)の対象となり、まだ決定されたものではない。またUSTRのグレア代表は、議会の承認を経ずに150日間の期限を過ぎても通商法122条に基づく10%の関税を続けることができるとの法解釈も示しており、USTRのスタンスは定まっていないのではないか。
通商法301条に基づく関税発動は、事前の正式な調査プロセスが法的に必須とされる。外国政府の貿易に関わる行為、政策、慣行が、不合理で差別的であるか、国際協定に違反しているかどうか、米国の通商(貿易)に負担・制限を与えているかなどが調査される。
EUは今回の措置を正当性がないと批判し、中国は強制労働の存在自体を否定した上で、関税を「政治的操作の口実」として使うことに反対すると表明した。
日本は強制労働製品の輸入を禁止しておらず、対策が不十分な国とされた。主要国の中でも日本は規制が弱いと見られてきたのは事実である。米国、EU、カナダ・メキシコなどのように、強制労働製品の輸入を禁止する包括的な「輸入禁止法」が日本にはない。しかし、日本もサプライチェーンにおける人権尊重ガイドライン(2022年)を策定するなど、取り組みは進められている。
強制労働製品の輸入の規制が十分でなく、それが迂回輸出されて米国の企業、経済に打撃を与えているというのは言いがかりに近いだろう。
トランプ政権は通商法301条に基づいて相互関税の復活を目指す
USTRは、強制労働だけでなく、過剰生産を理由に通商法301条に基づく代替関税も検討しているという。その場合、EU、中国などが対象となり、現在の10%よりも高い関税率が課される可能性があるだろう。
トランプ政権は、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく相互関税、一律関税に米最高裁の違法判決が下され、失効して以降、150日間は通商法122条に基づく暫定的な関税でつなぎ、その後は通商法301条に基づく恒久的な関税にシフトして、相互関税を実質的に復活させる考えを示してきた。今回のUSTRの提案は、トランプ政権が示してきた戦略に沿うものであり、サプライズはない。ただし、強制労働を301条発動の理由にしている点にのみサプライズがある。
仮に通商法301条に基づく関税が適用されても、日本に対して相互関税のもとでの15%の水準を超える関税率が適用される可能性は小さいと考えられる。
トランプ政権は、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく相互関税、一律関税に米最高裁の違法判決が下され、失効して以降、150日間は通商法122条に基づく暫定的な関税でつなぎ、その後は通商法301条に基づく恒久的な関税にシフトして、相互関税を実質的に復活させる考えを示してきた。今回のUSTRの提案は、トランプ政権が示してきた戦略に沿うものであり、サプライズはない。ただし、強制労働を301条発動の理由にしている点にのみサプライズがある。
仮に通商法301条に基づく関税が適用されても、日本に対して相互関税のもとでの15%の水準を超える関税率が適用される可能性は小さいと考えられる。
司法の壁に阻まれるトランプ関税
米最高裁が2月下旬に下したのは、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく相互関税、一律関税の違法性判断であった。そもそも議会の承認を経ずに大統領の権限だけで関税を課すことの違法性を説明している。そのため、通商法301条に基づく代替関税が発動されても、訴訟により短期間でそれも失効に追い込まれる可能性もあるだろう。
その際には、今回の杜撰に見える調査についても、その正当性が問われることになるのではないか。トランプ関税は司法の壁に阻まれ、後退を余儀なくされていくだろう。
また、トランプ政権は、中東情勢を受けたコスト上昇の打撃を受ける国内農家を支援するため、農機具の輸入関税の見直しを決めている。関税政策が国内で不人気であり、そうした世論にも配慮する必要がある点も踏まえ、トランプ関税は行き詰まり、縮小方向にあるものと見ておきたい。
(参考資料)
“U.S. Proposes New Tariffs on China, EU Over Forced Labor”, Wall Street Journal, June 3, 2026
その際には、今回の杜撰に見える調査についても、その正当性が問われることになるのではないか。トランプ関税は司法の壁に阻まれ、後退を余儀なくされていくだろう。
また、トランプ政権は、中東情勢を受けたコスト上昇の打撃を受ける国内農家を支援するため、農機具の輸入関税の見直しを決めている。関税政策が国内で不人気であり、そうした世論にも配慮する必要がある点も踏まえ、トランプ関税は行き詰まり、縮小方向にあるものと見ておきたい。
(参考資料)
“U.S. Proposes New Tariffs on China, EU Over Forced Labor”, Wall Street Journal, June 3, 2026
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。