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原油の安定調達に向けた対策でコンセンサスを得るのは簡単ではない

2026年のG7(主要7か国)サミットが、6月15日から17日にかけてフランス・エビアンで開催される。高市首相もサミットに参加することが、12日に正式に発表された。
 
今回のG7サミットの最大のテーマは、中東情勢を受けた原油価格の高騰、原油調達の支障への対応だ。
 
ただし、原油価格は米国とイランの戦争終結に向けた議論とそれを受けたホルムズ海峡の船舶の運航状況の見通しで大きく決まる。トランプ大統領は、イランとの交渉については他のG7諸国の意見を受け入れるとは思えず、この点はG7での議論の中心とはならないだろう。
 
高市首相は11日に、「中東情勢に最も大きな影響を受けているアジアの代表として、世界のエネルギー安全保障、とりわけ原油市場の安定に向けてG7が主導すべき取り組み」を提案したいと表明した。重要なのは原油価格の安定よりも、量の確保である。
 
原油価格の高騰は、経済活動に深刻な打撃を与え得る世界共通の課題となっており、G7サミットで議論するのにふさわしいテーマだ。しかし、原油の調達を巡っては、G7各国が置かれた環境が大きく異なることから、問題意識にも差がある。そのため、対策面でコンセンサスを得るのは簡単ではない。

アジア地域が経済や金融の面で世界のリスクの中心となる可能性

まず米国は、世界最大の原油生産国であり、原油の純輸出国である。原油価格上昇は短期的にはガソリン価格の上昇を通じて消費に打撃を与える一方で、GDPを押し上げる要因であり、多少長い目で見れば経済にプラスの影響が出てくる。カナダも米国と同様に原油の純輸出国であり、原油価格上昇の経済的なメリットを受けやすい国だ。英国やイタリアも原油を生産しており、原油高の経済的なメリットを一部享受できる。
 
他方、日本、ドイツ、フランスは原油をほとんど生産しないため、原油価格上昇の影響は経済に対し、ほぼマイナス面のみだ。しかし、そうしたドイツやフランスも、ホルムズ海峡を通じた原油の調達比率は大きくない。その比率は欧州連合(EU)の平均で10数%程度とみられる。90%以上である日本やその他のアジア諸国と比べてかなり低い。
 
ホルムズ海峡の事実上封鎖によって、原油の調達に大きな支障が生じる潜在的なリスクが高まっているのは、G7の中では日本だけである。そして、今回の中東情勢の悪化では、原油価格の高騰に加えて、原油の調達難が経済活動を著しく萎縮させるリスクがあるのが、ホルムズ海峡経由の原油調達依存度が高いアジア地域だ。アジア地域は、中東情勢の悪化によって、経済や金融の面で世界のリスクの中心となる可能性がある。

日本の代替ルートでの急速な原油調達が他国の原油調達の妨げとなっていないか

日本は、アジアの代表としてこうしたアジア地域のリスクを他のG7諸国に十分に認識してもらうとともに、同地域の原油の調達について協力を呼びかけることが求められる。
 
日本政府は、7月には代替ルートを通じた原油の調達が、中東情勢の悪化前の原油調達の水準、つまり100%にまで増加すると発表した。
 
しかし、ホルムズ海峡の事実上の封鎖によって、世界の原油供給が2割程度減少する中、日本が米国などの代替ルートを通じて原油の調達を急速に進めることが、他のアジア諸国の原油調達を妨げることになっていないか、十分に検証する必要があるだろう。また世界で原油をかき集めることが、原油価格の上昇を促し、他国に打撃となっていないかについても検証する必要があるのではないか。
 
その結果、他のアジア諸国で石油関連原材料や製品の生産に支障が生じれば、それに依存する日本経済への打撃ともなってしまう。
 
こうした問題があるのであれば、まずはその対応を進める考えを示し、また世界の原油不足への対応の一環として、日本も原油の消費を節約する姿勢を打ち出したうえで、日本はアジア地域全体の利益のために、他のG7諸国にアジア諸国の原油調達への協力を呼びかけることが適切なのではないか。

レアアース(希土類)の備蓄を提案

また高市首相は、G7サミットで、中国政府が輸出管理を厳格化するレアアース(希土類)の備蓄も提案する方針だという。輸出規制で供給途絶や価格高騰が発生した場合に、各国政府が自国の企業に放出することで市場の安定化につなげる狙いがある。
 
G7サミットの場では、中国の生産過剰問題、輸出規制問題などが長らく議題とされてきた。今回も議題となる可能性はあるが、日本が現在直面する中国の対日レアアース輸出規制は2国間問題から生じたものであり、G7サミットでは2国間で解決すべき課題と受け止められるのではないか。米国も、G7サミットで中国の貿易問題を大きく取り上げることで、両国の関係悪化を生じさせることには慎重だろう。

プロフィール

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    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。