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米国とイランの戦闘終結に向けた動きに大きく反応した原油価格と株価

米国とイランは日本時間の15日に、戦闘終結に向けた覚書に署名することで合意したことを明らかにした。世界経済や金融市場に大きく影響するのは、ホルムズ海峡の再開である。トランプ大統領は米軍によるイラン港湾の海上封鎖の解除とともに、「イランがホルムズ海峡を通航料なしに開放することを全面的に承認した」と述べている。しかし、ホルムズ海峡の管理を手放したくないイランが、このようなことを本当に承認したのかはまだ明らかではない。
 
その後イランの半国営ファルス通信は、イランは60日間に限定したホルムズ海峡の無償通過を認めたのであり、60日後にはホルムズ海峡を通過する船舶から安全や航行の案内、環境、保険に関するサービス料を徴収すると報じている。ホルムズ海峡の開放を巡っては、米国とイランの主張にはなお隔たりがある可能性が考えられる。
 
仮に覚書が締結されても、それは戦闘終結に向けた議論のスタートに過ぎず、この先の協議の行方にも不確実性は残る。
 
それでもイラン情勢が最悪期を脱し、改善の方向にある可能性は高い。WTI先物価格は、ホルムズ海峡の正常化への期待から、15日には一時1バレル79ドル台まで低下した。しかし、WTI先物価格は2月のイラン情勢緊迫化前の1バレル60ドル台に戻る可能性は低く、当面の下限は70ドル台半ば程度と予想される。
 
15日の東京市場では、戦闘終結への期待と原油価格の下落を受けて、日経平均株価は終値で3,300円程度の大幅上昇となった。
 
日本銀行は6月15日から16日にかけて金融政策決定会合を開くが、利上げの実施は既に揺るがない情勢だ。6月3日の講演会で、植田総裁は利上げを強く示唆する情報発信をしている。
 
ただし、イラン情勢の改善によって先行きの利上げが緩やかになるとの観測が出る可能性があり、それは円安・株高要因となるだろう。

原油価格下落後も値上げの動きは10月にかけて本格化

原油価格は下落したが、国内経済や国民生活が正常化するまでにはなお時間がかかる。足元までの原油・ナフサの価格上昇が石油関連製品に転嫁される動きは、秋にかけてむしろ本格化するだろう。ごみ袋、ラップ、塗料などに続いて、今後は、洗剤、シャンプー、衣料品などの値上げの動きが本格化し、10月頃に値上げの動きはクライマックスを迎えると予想する。
 
そうした日用品価格の上昇率に落ち着きが見られ始めるのは、年末近くとなるのではないか。急激に価格が上昇したごみ袋、ラップの価格は低下するだろうが、ナフサ由来製品全体では、価格の上昇ペースが鈍化するのみであり、価格下落には至らないだろう。
 
原油価格下落の動きが最も早く価格の下落につながるのは、ガソリン価格だ。数週間のうちにレギュラーガソリン価格の全国平均は、補助金なしで1リットル170円を下回る可能性がある。他方、電気・ガス料金は9月分に大幅値上げとなり、下落に転じるのは12月分、請求書ベースで来年1月分になると考えられる。

企業の減産の動きが弱まり日用品の深刻な品不足は徐々に緩和へ

このように、原油価格の下落による物価の安定を個人が実感できるまでにはなお時間がかかる。しかし、ホルムズ海峡の再開への道筋が見えてくれば、石油備蓄が底を突き、日本が深刻な原油・ナフサ不足に陥るという最悪のシナリオは回避できるとの期待が高まる。物価上昇は原油価格下落後もしばらく続くとしても、景況感は改善してくるだろう。それは企業も同様だ。
 
石油関連の企業は、政府が代替ルートでの原油・ナフサの調達を急速に進める中でも、先行きの調達への不安を払しょくできず、その結果、手元に原材料を残すために、減産を行っているとみられる。これがごみ袋など川下の日用品の品不足を生んできた。
 
しかし、ホルムズ海峡の再開への道筋が見えてくれば、企業は減産の手を緩め、その結果、川下の日用品の深刻な品不足は徐々に緩和されていくだろう。それは価格の安定に先駆けて、今後数か月のうちに確認できるのではないか。

プロフィール

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    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。