労働党のスターマー英首相が22日に辞任する意向を表明した。労働党の党首選は7月9日から立候補の受付が開始され、新首相は9月までに就任すると説明している。英国では2024年に14年ぶりに政権交代が実現しスターマー労働党政権が発足したが、経済の低迷などによりスターマー政権の支持率は低迷を続けてきた。
先月の地方選挙での大敗後、与党内の議員や閣僚から辞任要求が増加しており、「続投は難しい」という認識が既に広がっていた。さらに、辞任表明の引き金となったのは、先週の下院補欠選挙で労働党のバーナム・前マンチェスター市長が勝利し、国政に復帰したことだ。党首選になればバーナム氏に勝てないとの判断からスターマー英首相はこのタイミングで辞任を決めたとみられている。バーナム氏は党首選に出馬する意向を示している。
スターマー首相の辞任観測を受けて、先週以来、ポンドは下落していた。辞任表明を受けて1ポンドは直後に1.3181ドルと3月の年初来安値水準に迫った。さらに、債券も直後に売られた。
ポンド安、債券安は、次期首相に就任することが有力とみられているバーナム氏が積極財政に舵を切り、その結果、財政環境が悪化することへの金融市場の懸念を反映している。バーナム氏は財政政策についてまだ具体的な考えを示していないが、左派色の強い同氏が積極財政政策を採用し、また、現在の財政ルールを緩めることを金融市場は懸念している。
2024年以降、労働党政権が「財政規律」を重視する2本柱の財政ルールを導入した。第1は安定性ルール(stability rule)であり、長期投資ではない日常的な歳出(行政サービス等)部分は税収で賄うこと、第2は投資ルール(investment rule)であり、政府債務(純金融負債)の対GDP比を低下させることだ。
この財政ルールは、2022年のトラス・ショックの再来を警戒する金融市場では、財政規律を取り戻すものとして評価されてきた。他方、国民からは、過度な財政規律重視の姿勢が、経済を悪化させているとの批判も出ている。
スターマー首相の辞任がトラス・ショックの再来に直結するわけではないが、金融市場はその可能性を意識しているだろう。今後のチェックポイントは、後任の首相が減税や歳出拡大などの積極財政政策を打ち出すか、そのために現在の財政ルールを緩和するか、である。
それらが現実のものとなった後、さらに新政権が市場との対話に失敗すれば、長期金利が大幅に上昇し、金融システム問題に発展する可能性がある。また、同時にポンド安が加速すれば、まさにトラス・ショックの再来となる。
このように、英国の政治情勢は、世界の金融市場における懸念材料となってきた。日本では、ドル高ポンド安の影響がドル高円安傾向を後押しした面もあり、円は22日のニューヨーク市場で一時1ドル161円90銭台まで値下がりし、1986年12月以来、約39年半ぶりの円安水準に迫った。
先月の地方選挙での大敗後、与党内の議員や閣僚から辞任要求が増加しており、「続投は難しい」という認識が既に広がっていた。さらに、辞任表明の引き金となったのは、先週の下院補欠選挙で労働党のバーナム・前マンチェスター市長が勝利し、国政に復帰したことだ。党首選になればバーナム氏に勝てないとの判断からスターマー英首相はこのタイミングで辞任を決めたとみられている。バーナム氏は党首選に出馬する意向を示している。
スターマー首相の辞任観測を受けて、先週以来、ポンドは下落していた。辞任表明を受けて1ポンドは直後に1.3181ドルと3月の年初来安値水準に迫った。さらに、債券も直後に売られた。
ポンド安、債券安は、次期首相に就任することが有力とみられているバーナム氏が積極財政に舵を切り、その結果、財政環境が悪化することへの金融市場の懸念を反映している。バーナム氏は財政政策についてまだ具体的な考えを示していないが、左派色の強い同氏が積極財政政策を採用し、また、現在の財政ルールを緩めることを金融市場は懸念している。
2024年以降、労働党政権が「財政規律」を重視する2本柱の財政ルールを導入した。第1は安定性ルール(stability rule)であり、長期投資ではない日常的な歳出(行政サービス等)部分は税収で賄うこと、第2は投資ルール(investment rule)であり、政府債務(純金融負債)の対GDP比を低下させることだ。
この財政ルールは、2022年のトラス・ショックの再来を警戒する金融市場では、財政規律を取り戻すものとして評価されてきた。他方、国民からは、過度な財政規律重視の姿勢が、経済を悪化させているとの批判も出ている。
スターマー首相の辞任がトラス・ショックの再来に直結するわけではないが、金融市場はその可能性を意識しているだろう。今後のチェックポイントは、後任の首相が減税や歳出拡大などの積極財政政策を打ち出すか、そのために現在の財政ルールを緩和するか、である。
それらが現実のものとなった後、さらに新政権が市場との対話に失敗すれば、長期金利が大幅に上昇し、金融システム問題に発展する可能性がある。また、同時にポンド安が加速すれば、まさにトラス・ショックの再来となる。
このように、英国の政治情勢は、世界の金融市場における懸念材料となってきた。日本では、ドル高ポンド安の影響がドル高円安傾向を後押しした面もあり、円は22日のニューヨーク市場で一時1ドル161円90銭台まで値下がりし、1986年12月以来、約39年半ぶりの円安水準に迫った。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。