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22日の米国市場でドル円レートは、1ドル161円90銭と2024年7月の円の安値水準161円96銭に接近した。この水準を超えて円安が進めば、1986年以来約39年ぶりの円安となる。

片山財務大臣は23日に、円安進行に対して、「必要なら断固たる措置を取るとの日米合意は、全く揺るぎはない」と語った。そのうえで、ベッセント米財務長官と22日夜に約1時間、会談したことも明らかにした。

円安をけん制するために、従来は財務省、金融庁、日本銀行の3者会談を開催することが少なくなかったが、片山大臣は、米国との連携をアピールすることで、円安をけん制することが多い。ドル高円安の阻止に向けて日米政府の姿勢が一致していることが、それを可能にしている。

しかし、こうした口先介入も円安阻止に大きな効果を上げていない。政府は4月28日から5月27日の間に、月次としては過去最大規模となる約11兆7300億円の円買い介入を行ったが、その効果も長くは続かなかった。

2022年に政府は大型連休中の4月29日、5月1日にドル売り円買い介入を行った後、7月11日、12日にも介入を実施した。今回も、早晩、政府は第2弾となるドル売り円買いの為替介入を実施し、1ドル160円程度の水準の防衛を試みる可能性は高いだろう。

過去数か月で円安の流れが強まったのは、中東情勢の緊迫化で原油価格が上昇し、ドルが買われたことの影響が大きい。しかし、6月に入って中東情勢の緊張緩和と原油価格の下落が生じているにもかかわらず、円安は修正されていない。同時期に、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げから利上げ方向への転換の観測が強まり、新たなドル高円安要因になったことがその背景にあるのではないか。

また、6月16日に日本銀行は利上げを決めたが、その後も円安の流れは変わっていない。他の条件が一定であれば、日本銀行の利上げは円高要因となり、長い目で見れば円高に寄与するはずであるが、短期的には為替を動かす要因は様々であり、それぞれの影響力も常に変動することから、利上げだけで円安の流れを変えることは難しいことも少なくない。現状では、FRBの利上げ観測がドル円レートに影響を与える最大の要因になっているように見える。

2022年以降の円安局面で、政府は1ドル150円程度と1ドル160円程度を防衛ラインに設定してきたように見える。1ドル150円程度の防衛ラインを守り切れなかった結果、防衛ラインは1ドル160円程度まで後退を強いられた。今回も、1ドル160円程度の防衛ラインを守り切れなければ、円安に弾みがつき、最悪のケースでは政府は1ドル170円程度まで防衛ラインの後退を強いられる可能性が出てくるのではないか。

その場合には、年明け後は一服感も見られている、円安による輸入物価の上昇を製品価格に転嫁する動きが再び強まる可能性もあるだろう。

プロフィール

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    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。