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大企業製造業、大企業非製造業の景況感はともに小幅悪化の見通し

日本銀行は7月1日に6月短観を発表する。今回の短観には中東情勢の悪化、原油価格高騰の影響が表れ、大企業製造業、大企業非製造業の景況感は、小幅に悪化することが見込まれる。
 
日本経済新聞による予測集計によると、大企業製造業の業況判断DI(現状)の予測中心値はプラス16と、前回の3月調査から1ポイントの悪化、大企業非製造業の業況判断DIの予測中心値はプラス35と、3月調査から1ポイントの悪化が見込まれている。悪化すれば、大企業製造業では5四半期ぶり、大企業非製造業では4四半期ぶりとなる。
 
製造業では、原油高によるコスト増加やサプライチェーンの混乱による資材の調達難は、石油・石炭製品、化学の景況感を特に悪化させそうだ。他方、世界的にAIブームが続く中、電気機械や生産用機械では景況感が改善し、製造業の景況感全体の悪化を緩和することが予想される。
 
非製造業では、燃料費の高騰により、運輸・郵便や電気・ガスなどの景況感が特に大きく悪化すると予想される。

物価上昇は7月から本格化か

6月に入って米国とイランとの間には戦争終結の最終合意に向けた覚書が締結されるなど、中東情勢には改善の方向が見られる。それを受けて一時1バレル100ドルを上回っていたWTI原油先物価格は、足もとでは70ドル程度まで大幅に低下している。
 
ただし、今回の短観には、足もとでのこうした情勢変化はまだ十分に反映されないとみられる。先行き業況判断DIについては、大企業製造業3ポイントの悪化、大企業非製造業が5ポイントの悪化がそれぞれ予想されている。
 
ホルムズ海峡の封鎖が長期化し、日本で原油、ナフサの調達が行き詰まることで日本経済が深刻な打撃を受けるリスクを企業は警戒してきたが、その可能性は低下してきている。しかし、足もとでの原油価格の下落とは対照的に、日用品、食料品の価格上昇はこれからが本番となる。
 
7月以降、価格上昇はより本格化し、それは10月頃まで続くことが見込まれる。消費者が物価情勢の落ち着きを実感できるのは11月以降と考えられる。
 
4月以降、ごみ袋、包装材、シンナー、塗料、医療品などの価格高騰が見られた。6月にはゴム製品であるタイヤの価格も上昇した。7月以降は値上げの動きがナフサ由来の製品を中心にさらに広がりを見せ、洗剤、シャンプー、化学繊維を用いた衣料品、各種プラスチック製品の価格上昇が目立ってくることが予想される。
 
また、生鮮食品など食料品の値上げの動きもなお続く可能性が高いが、その上昇幅はナフサ由来の製品と比べれば緩慢だろう。原油・ナフサの価格が生鮮食品の価格に与える影響は、平均で5%以下と考えられる。
 
11月以降には、国民は原油価格の下落を受けた物価情勢の安定を確認できるようになると考えるが、物価の水準が低下する、つまり物価上昇率がマイナスになる可能性は低く、あくまでも物価上昇率の低下にとどまるだろう。ごみ袋など大幅に価格が上昇した一部の製品では価格の下落は生じるだろうが、平均の価格が下落に転じることはないだろう。

企業、家計、日本銀行は原油価格高騰の経済や物価への後遺症を見極める段階に

中東情勢の緊迫化や原油価格高騰は大きな山を越えたとしても、今までの原油価格高騰の影響がどの程度コスト高や製品価格の上昇につながるのか、企業や家計はなお慎重に見極める必要がある。物価上昇率の高まりや実質賃金の悪化により、個人消費は再び低迷する可能性があり、それは消費関連企業の景況感には逆風となるだろう。
 
さらに、中東情勢の悪化、原油価格高騰による経済の悪化を映して、アジア地域からの観光客の訪日はしばらく低調になることが予想される。それは宿泊・飲食や小売などの業種の景況感にはマイナスだ。
 
企業や家計、そして金融政策を担う日本銀行は、中東情勢や原油価格の動向を見極める段階から、原油価格高騰の経済や物価への後遺症を見極める段階に移ってきている。
 
(参考資料)
「大企業製造業の景況感、悪化か 日銀6月短観の民間予測」、2026年6月29日、日本経済新聞電子版

プロフィール

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    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。