ドル円レートは一時1986年以来の円安水準に
6月29日の海外市場でドル円レートは一時162円直前まで円安が進み、1986年以来約39年ぶりの円安水準に達した。
1985年9月のプラザ合意による主要国の協調介入によって、急速にドル安円高が進み、1ドル240円程度から1987年のルーブル合意時の1ドル150円程度まで円高が進んでいく過程にあったのがこの1986年だ。チャート上に目立った節目もないことから、この安値水準を超えると円安に弾みがつきやすい。
政府は1ドル160円程度を防衛ラインに設定してきたとみられるが、円安に弾みがつけば、最悪の場合には防衛ラインは1ドル170円程度にまで後退を余儀なくされる可能性があるだろう。
足もとでの中東情勢の改善と原油価格の下落は、円安を修正させる要因と考えられるが、一方で、大型連休中の政府による為替介入の効果が薄れてきたことと、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ観測の浮上が、円安を後押ししているのが現状だ。
1985年9月のプラザ合意による主要国の協調介入によって、急速にドル安円高が進み、1ドル240円程度から1987年のルーブル合意時の1ドル150円程度まで円高が進んでいく過程にあったのがこの1986年だ。チャート上に目立った節目もないことから、この安値水準を超えると円安に弾みがつきやすい。
政府は1ドル160円程度を防衛ラインに設定してきたとみられるが、円安に弾みがつけば、最悪の場合には防衛ラインは1ドル170円程度にまで後退を余儀なくされる可能性があるだろう。
足もとでの中東情勢の改善と原油価格の下落は、円安を修正させる要因と考えられるが、一方で、大型連休中の政府による為替介入の効果が薄れてきたことと、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ観測の浮上が、円安を後押ししているのが現状だ。
円安阻止に向けた政府と日本銀行の強い連携は難しい
政府の為替介入の効果は一時的であり、時間を買う政策でしかない。しかし、政府と日本銀行が円安阻止で強く連携できれば、為替の安定に一定の効果を発揮できると考えられる。
しかし、2月の衆院選で高市首相は円安のメリットを強調する発言をしており、円安阻止の姿勢がそれほど強くないとの見方もされている。他方、景気を悪化させ、政府の経済対策の効果を相殺してしまうとの考えから、日本銀行の利上げには否定的と考えられる。
そのため、政府の為替介入と日本銀行の利上げが強く連携することで、円安阻止に効果を発揮することは、現在の政権では難しいのではないか。金融市場はこの点を見透かしているものと考えられる。
しかし、2月の衆院選で高市首相は円安のメリットを強調する発言をしており、円安阻止の姿勢がそれほど強くないとの見方もされている。他方、景気を悪化させ、政府の経済対策の効果を相殺してしまうとの考えから、日本銀行の利上げには否定的と考えられる。
そのため、政府の為替介入と日本銀行の利上げが強く連携することで、円安阻止に効果を発揮することは、現在の政権では難しいのではないか。金融市場はこの点を見透かしているものと考えられる。
円安・物価高の連鎖が日本経済や金融市場に大きな影響
2022年の初めには1ドル115円程度にあったドル円レートは、コロナショック後の物価高を受けてFRBが急速に利上げを進める中、一気に円安方向に振れた。それに対して、日本銀行が利上げに動いたのは2024年3月とかなり遅れた。日本銀行が異例の金融緩和を長期間続けたことと、コロナショック後の利上げが遅れたことが、ここまでの円安を許したと考えられる。
2022年以降は円安と物価高が相乗的に進み、これが家計を圧迫する一方、株高を促すなど、日本経済や金融市場に大きな影響を与えてきた。円安は輸入物価を押し上げて物価高をもたらすが、それによる物価高は通貨価値の低下を通じて円安をもたらす。
2022年以降は円安と物価高が相乗的に進み、これが家計を圧迫する一方、株高を促すなど、日本経済や金融市場に大きな影響を与えてきた。円安は輸入物価を押し上げて物価高をもたらすが、それによる物価高は通貨価値の低下を通じて円安をもたらす。
行き過ぎた円安の解消には長い時間を要する
現在、日本銀行は利上げを進めているが、一度大きく進んだ円安・物価高の連鎖が解消されるのには時間がかかるだろう。年初からは食料品の値上げの動きが鈍化しており、円安・物価高が緩和する兆しもみられたが、原油価格の高騰の影響で、その流れは途切れてしまった。
原油価格の上昇の物価への影響は年末近くまでは強く残り、再び物価上昇率の低下が顕著に見られるのは来年に入ってからだろう。そのため、年内は未だ円安傾向が強く残る可能性が考えられる。
一方、来年に入れば円安・物価高の連鎖は緩やかに解消の方向に動き出すと考える。日本銀行の利上げの継続もその流れを後押しするだろう。
実質実効円レートの10年移動平均値を円の均衡水準とみなせば、現在の水準はそこから25%程度円安方向にある。この点から、ドル円レートの均衡水準の目途は1ドル120円程度と計算できる。
いずれは120円程度まで円安が修正される可能性もあると考えられるが、その水準まで円安の修正が進むとしても、4~5年といった長い時間を要するのではないか。当面、ドル高円安の修正が大きく進むことがあるとすれば、それは円安の修正ではなく、ドル高の修正だろう。それを生じさせるのは、米国経済の変調、政治的圧力を受けたFRBの利上げ観測の後退、株式市場でのAIブームの終焉などと考えられる。
原油価格の上昇の物価への影響は年末近くまでは強く残り、再び物価上昇率の低下が顕著に見られるのは来年に入ってからだろう。そのため、年内は未だ円安傾向が強く残る可能性が考えられる。
一方、来年に入れば円安・物価高の連鎖は緩やかに解消の方向に動き出すと考える。日本銀行の利上げの継続もその流れを後押しするだろう。
実質実効円レートの10年移動平均値を円の均衡水準とみなせば、現在の水準はそこから25%程度円安方向にある。この点から、ドル円レートの均衡水準の目途は1ドル120円程度と計算できる。
いずれは120円程度まで円安が修正される可能性もあると考えられるが、その水準まで円安の修正が進むとしても、4~5年といった長い時間を要するのではないか。当面、ドル高円安の修正が大きく進むことがあるとすれば、それは円安の修正ではなく、ドル高の修正だろう。それを生じさせるのは、米国経済の変調、政治的圧力を受けたFRBの利上げ観測の後退、株式市場でのAIブームの終焉などと考えられる。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。