バランスシートの縮小と物価安定に言及
欧州中央銀行(ECB)が7月1日にポルトガルのシントラで開催した対談形式の会合で、米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーシュ議長が発言をした。7月の次回米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを検討するかとの質問に対しては、会合当日に議論するとして言及を避けた。ウォーシュ議長は、金融政策について事前に方向性を示すことを嫌っていることから、この発言は予想通りと言える。
一方、持論である保有資産(バランスシート)の縮小については、FRBが設置する作業部会で議論するとし、引き続き前向きの姿勢を見せた。ウォーシュ議長は、FRBによる大量の米国債保有は、通貨の価値を低下させる、あるいは資産価格の高騰を招くなどの観点から長らく反対してきた。
当座預金の減少による短期金融市場の不安定化などに配慮して、FRBは2025年12月にバランスシートの縮小(QT)を停止し、再投資を通じてバランスシートの水準を維持する方針に転じた。さらに短期国債の買い入れを開始したことで、総資産はやや増加に転じている。こうした方針転換を再び覆して、ウォーシュ議長がバランスシートを再び縮小させる方向で議論を主導することは、短期的には簡単ではないだろう。
物価についてウォーシュ議長は、「物価は依然として高すぎる」「インフレ期待はここ数か月やや低下しており、それ自体は前向きな兆候だが、現状はなお十分とは言えない」「我々は物価安定を達成することに完全にコミットしている」などと、物価の安定を重視する姿勢を強調した。それを通じて、利下げを強く望むトランプ大統領の意向を受けた「ハト派」との自身のイメージを払拭する狙いがあるのかもしれない。
一方、持論である保有資産(バランスシート)の縮小については、FRBが設置する作業部会で議論するとし、引き続き前向きの姿勢を見せた。ウォーシュ議長は、FRBによる大量の米国債保有は、通貨の価値を低下させる、あるいは資産価格の高騰を招くなどの観点から長らく反対してきた。
当座預金の減少による短期金融市場の不安定化などに配慮して、FRBは2025年12月にバランスシートの縮小(QT)を停止し、再投資を通じてバランスシートの水準を維持する方針に転じた。さらに短期国債の買い入れを開始したことで、総資産はやや増加に転じている。こうした方針転換を再び覆して、ウォーシュ議長がバランスシートを再び縮小させる方向で議論を主導することは、短期的には簡単ではないだろう。
物価についてウォーシュ議長は、「物価は依然として高すぎる」「インフレ期待はここ数か月やや低下しており、それ自体は前向きな兆候だが、現状はなお十分とは言えない」「我々は物価安定を達成することに完全にコミットしている」などと、物価の安定を重視する姿勢を強調した。それを通じて、利下げを強く望むトランプ大統領の意向を受けた「ハト派」との自身のイメージを払拭する狙いがあるのかもしれない。
ウォーシュ議長が「ハト派」か「タカ派」かという論争はしばらく決着を見ない
いずれにせよ、物価上昇率が目標値を大きく上振れる中では、利下げではなく利上げの議論を進めることが求められるが、先行き、雇用環境の悪化、物価及びインフレ期待の低下が確認されてくる中で、利下げ再開に向けてウォーシュ議長が議論を主導するかが注目される。金融市場で盛り上がる、ウォーシュ議長が「ハト派」か「タカ派」かという論争は、しばらく決着を見ないだろう。
ウォーシュ議長が今回の発言で物価の安定を重視する姿勢を強調したことから、金融市場では利上げ観測がやや強まっている。金融市場に織り込まれている7月の利上げ確率は30%弱程度と、50%には至っていないものの、もはや無視できるほど低い確率ではなくなっている。さらに金融市場は来年にかけて2回の利上げを織り込みつつある。
利上げ観測の高まりと、ウォーシュ議長の発言を受けたFRBのバランスシート縮小観測の浮上は、ともに為替市場でドル買い要因となっている。1ドル162円台後半まで進んだドル高円安の流れがさらに続くかどうかは、短期的にはFRBの利上げ観測の変化に大きく左右される。またそれは、7月2日に発表される6月米雇用統計の内容の影響を大きく受ける可能性が考えられる。
ウォーシュ議長が今回の発言で物価の安定を重視する姿勢を強調したことから、金融市場では利上げ観測がやや強まっている。金融市場に織り込まれている7月の利上げ確率は30%弱程度と、50%には至っていないものの、もはや無視できるほど低い確率ではなくなっている。さらに金融市場は来年にかけて2回の利上げを織り込みつつある。
利上げ観測の高まりと、ウォーシュ議長の発言を受けたFRBのバランスシート縮小観測の浮上は、ともに為替市場でドル買い要因となっている。1ドル162円台後半まで進んだドル高円安の流れがさらに続くかどうかは、短期的にはFRBの利上げ観測の変化に大きく左右される。またそれは、7月2日に発表される6月米雇用統計の内容の影響を大きく受ける可能性が考えられる。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。