米国のビッグテック企業のリーダー達はAIの雇用への悲観論を修正
多くの米国のビッグテック企業のリーダー達は昨年、「AIが雇用を奪う」と警鐘を鳴らしていた。しかし最近ではそうした主張を変え、AIが雇用を創出するとの発言が目立ってきた。
ただし、ビッグテック企業のリーダーは、自社での大幅な人員削減を実施する一方で、AIが雇用を創出するとしているため、そうした主張には、AI分野のビジネスのイメージアップを図る狙いがある、との懐疑的な見方をする向きもある。
AIが労働力に劇的な変化をもたらすと長年予測してきたオープンAIのサム・アルトマンCEOは今年5月下旬に、「あらゆることの中心に人間を据え続けることがどれほど可能かについて、われわれの業界は過小評価していた」と語った。
また、昨年5月に「AIによって初級レベルの仕事の半分がなくなる可能性がある」と警告していたアンソロピックのダリオ・アモデイCEOも、最近ではAIを導入することによって「同じリソース量でより多くのことを成し遂げることもできる」とした。
メタのマーク・ザッカーバーグCEOは、企業が自動化のペースを上回る速さで人々の生産性を高めることに注力すれば、「理論上、将来の雇用は減少するどころか、むしろ増加するはずだ」と語った。ただし同社は5月に、8,000人の従業員の解雇を始めている。
アマゾンのアンディ・ジャシーCEOも、今年2月にAIが雇用を創出する可能性について言及した。1年前にはAIの影響により今後数年間で人員を削減すると発表し、その後に実際に1万6,000人の解雇に踏み切ったが、これはAIの影響ではなく、組織階層の削減や企業文化の活性化に向けた継続的な取り組みの一環であると説明している。
このようなビッグテック企業のリーダーによる発言は、言動が一致していないと疑いの目で受け止められている面もあるだろう。しかし、一般企業の間でも、AIによる雇用喪失、失業増加への警戒感は緩んできている可能性がある。
EY-パルテノンの調査によると、AIへの投資によって大幅な人員削減が起こると考えるCEOの割合は、2025年1月の約46%から、同年5月には20%へと低下した。
金融テクノロジー企業ランプと労働力インテリジェンス企業レベリオ・ラボによる最近の共同研究では、AIに最も積極的に投資している企業は、AIをまだ導入していない類似の企業と比べて、雇用を約10%多く増やしていることが明らかになった。
ただし、ビッグテック企業のリーダーは、自社での大幅な人員削減を実施する一方で、AIが雇用を創出するとしているため、そうした主張には、AI分野のビジネスのイメージアップを図る狙いがある、との懐疑的な見方をする向きもある。
AIが労働力に劇的な変化をもたらすと長年予測してきたオープンAIのサム・アルトマンCEOは今年5月下旬に、「あらゆることの中心に人間を据え続けることがどれほど可能かについて、われわれの業界は過小評価していた」と語った。
また、昨年5月に「AIによって初級レベルの仕事の半分がなくなる可能性がある」と警告していたアンソロピックのダリオ・アモデイCEOも、最近ではAIを導入することによって「同じリソース量でより多くのことを成し遂げることもできる」とした。
メタのマーク・ザッカーバーグCEOは、企業が自動化のペースを上回る速さで人々の生産性を高めることに注力すれば、「理論上、将来の雇用は減少するどころか、むしろ増加するはずだ」と語った。ただし同社は5月に、8,000人の従業員の解雇を始めている。
アマゾンのアンディ・ジャシーCEOも、今年2月にAIが雇用を創出する可能性について言及した。1年前にはAIの影響により今後数年間で人員を削減すると発表し、その後に実際に1万6,000人の解雇に踏み切ったが、これはAIの影響ではなく、組織階層の削減や企業文化の活性化に向けた継続的な取り組みの一環であると説明している。
このようなビッグテック企業のリーダーによる発言は、言動が一致していないと疑いの目で受け止められている面もあるだろう。しかし、一般企業の間でも、AIによる雇用喪失、失業増加への警戒感は緩んできている可能性がある。
EY-パルテノンの調査によると、AIへの投資によって大幅な人員削減が起こると考えるCEOの割合は、2025年1月の約46%から、同年5月には20%へと低下した。
金融テクノロジー企業ランプと労働力インテリジェンス企業レベリオ・ラボによる最近の共同研究では、AIに最も積極的に投資している企業は、AIをまだ導入していない類似の企業と比べて、雇用を約10%多く増やしていることが明らかになった。
AIが雇用に与える影響はミクロとマクロで異なる
AIが雇用に与える影響は、ミクロの視点とマクロの視点で異なる。ミクロの視点では、AIによって特定の分野で労働が代替され、雇用が削減される可能性は確かにある。
しかし、それは労働生産性を向上させるため、労働者の実質賃金が高まり、需要が拡大する。その結果、AIによって雇用が削減された分野以外で新たな雇用が創出されるだろう。その結果、マクロの視点では、AIは失業を増加させないことになる。ただし、雇用削減と雇用創出の間に時間がかかることで、一定期間は、失業が増える可能性はある。
また、現時点ではAI関連投資の拡大やデータセンター建設が新たな需要を生み出していることから、それが新規の雇用増加を生み出している。ただし、それを受けてAIによる雇用創出効果を過大評価してはならないだろう。そうした需要の増加は必ずしも持続的ではなく、いずれは鈍化していく可能性がある。その時点で、AIによる雇用創出効果については、慎重な見方が再び浮上する可能性があるのではないか。
(参考資料)
“Big Tech Has Suddenly Flipped on the AI Jobs Wipeout Scenario”, Wall Street Journal, July 6, 2026
しかし、それは労働生産性を向上させるため、労働者の実質賃金が高まり、需要が拡大する。その結果、AIによって雇用が削減された分野以外で新たな雇用が創出されるだろう。その結果、マクロの視点では、AIは失業を増加させないことになる。ただし、雇用削減と雇用創出の間に時間がかかることで、一定期間は、失業が増える可能性はある。
また、現時点ではAI関連投資の拡大やデータセンター建設が新たな需要を生み出していることから、それが新規の雇用増加を生み出している。ただし、それを受けてAIによる雇用創出効果を過大評価してはならないだろう。そうした需要の増加は必ずしも持続的ではなく、いずれは鈍化していく可能性がある。その時点で、AIによる雇用創出効果については、慎重な見方が再び浮上する可能性があるのではないか。
(参考資料)
“Big Tech Has Suddenly Flipped on the AI Jobs Wipeout Scenario”, Wall Street Journal, July 6, 2026
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。