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株式市場は調整局面に

7月17日の日経平均株価は、一時3,500円超の大幅下落となった。6月25日の終値での最高値7万2366円から10%を超える下落となり、株式市場は調整局面に入った。AI関連、半導体関連の株価下落が特に際立っている。

韓国の個別株のレバレッジ型上場投資信託(ETF)がグローバルに半導体株の価格変動率を高めている、という技術的な側面を指摘する向きもある。他方、AI・半導体関連株に対する投資意欲全体に変調が見られている可能性があり、一時的な調整とは言い切れない面もある。

さらに、世界的な長期金利の上昇も、金利上昇に弱いハイテク株の調整のきっかけとなっている。原油価格の上昇やそれを受けた金融引き締め観測がその背景にあるが、日本では、財政悪化懸念も長期金利の上昇を促し、株価の調整の要因になっているだろう。

そして、再びイラン情勢が悪化し、原油価格が上昇していることも、経済や企業収益の悪化、長期金利の上昇を通じて株式市場のセンチメントを悪化させている。現在の株式市場でのAIブームは、2000年前後のITブームと似た部分もあるが、当時は物価安定が続き、長期金利が予想外に落ち着いていた中で、株式市場でのITブームは自律的に終焉を迎えた。今回は長期金利の上昇が、株式市場でのAIブームの終焉のきっかけの一つになる可能性があるだろう。

紅海ルートでの原油輸出に支障が生じるリスク

日本にとって非常に懸念されるのは、紅海ルートによる原油の調達代替が遮断されるリスクがにわかに浮上したことだ。

イランとの協議が滞るなか、米国は再び軍事的な圧力を強めており、7月11日から16日まで、6日連続でイランに対する攻撃を実施している。また、トランプ大統領は来週にも、発電所や橋などを攻撃すると主張している。
こうした中、イランがイエメンの親イランの反政府勢力フーシ派に対して、イランの電力インフラが米国に攻撃された場合には、アラビア半島の紅海側の原油などの輸出ルートとなっているバーブルマンデブ海峡を封鎖するよう要請した、とロイター通信は16日に伝えた。

バーブルマンデブ海峡は、スエズ運河につながる紅海の入り口に位置しており、ホルムズ海峡が事実上封鎖されるなかで、パイプラインを通じてペルシャ湾から送られた原油を輸出する重要な代替ルートとなっていた。バーブルマンデブ海峡が封鎖されれば、原油供給は制約を受け、原油価格の上昇を引き起こす。

原油価格と長期金利の上昇がハイテク株のより大きな株価調整を引き起こす可能性

日本政府は、ホルムズ海峡を経由しない代替ルートでの原油の調達量は日量240万バレルと、2025年の日量235万バレルの水準に達する、つまり、代替ルートでの調達によって、必要な原油は確保され、石油備蓄の放出は必要でない状況と説明している。

政府は安全対策上の理由などから代替ルートでの調達先の内訳の詳細を明らかにしていないが、およそ半分程度が米国、残り半分程度が中東であり、その他はわずかと考えられる。この中東からの原油調達は、ホルムズ海峡を経由したものではなく、サウジアラビアがパイプラインでペルシャ湾岸から紅海側に送った原油の調達と推察される。仮に戦闘の拡大によってバーブルマンデブ海峡経由の原油の調達が止まれば、日本は再び石油備蓄の放出を余儀なくされ、先行き、必要な原油やナフサの調達ができなくなるとの懸念が高まるだろう。これは企業の景況感の悪化、経済活動への悪影響を通じて、株式市場に一段の調整圧力となる。

バーブルマンデブ海峡経由の原油輸出に大きな支障が生じれば、1バレル80ドル程度でとりあえず安定しているWTI原油先物価格は再び上昇し、90ドル台に達する可能性もあるのではないか。

その際には、インフレ懸念の高まりから長期金利の上昇傾向が強まり、世界規模でハイテク株のより大きな株価調整を引き起こすだろう。そして、バーブルマンデブ海峡経由の原油調達に特に大きく依存する日本の株式市場には、より大きな幅での調整をもたらす可能性がある。

(参考資料)
「米が6日連続攻撃 イランはバーブルマンデブ海峡封鎖を要請か」、2026年7月17日、NHKニュース

プロフィール

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    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。