個人向け国債を新NISAに加えることに片山財務相が前向きな発言
国民民主党は7月10日に、個人向け国債を新NISA(少額投資非課税制度)の対象商品に追加する法案を参議院に提出した。同法案には、国債に関する相続税の非課税化も盛り込まれている。
与党内でも個人向け国債を新NISAの対象にすることに関して議論が活発になっている。国民民主党が提出した同法案について問われた片山財務相は、「やっぱりやっていくときじゃないか」と前向きの姿勢を見せた。また、国民の資産運用のポートフォリオ多様化に資するとの意見が多いことを指摘した。そのうえで、自民党税制調査会などと「整理が必要なこともあるので、しっかりと考えていきたい」とした。
6月8日の参院決算委員会で片山財務相は、NISAについて「貯蓄から投資への流れの促進を目的とする制度だ」として、元本保証がある国債は預金に類するため対象として望ましくないとの考えを示していた。短期間のうちに発言が大きく変わった印象を受ける。
与党内でも個人向け国債を新NISAの対象にすることに関して議論が活発になっている。国民民主党が提出した同法案について問われた片山財務相は、「やっぱりやっていくときじゃないか」と前向きの姿勢を見せた。また、国民の資産運用のポートフォリオ多様化に資するとの意見が多いことを指摘した。そのうえで、自民党税制調査会などと「整理が必要なこともあるので、しっかりと考えていきたい」とした。
6月8日の参院決算委員会で片山財務相は、NISAについて「貯蓄から投資への流れの促進を目的とする制度だ」として、元本保証がある国債は預金に類するため対象として望ましくないとの考えを示していた。短期間のうちに発言が大きく変わった印象を受ける。
長期金利の上昇を牽制する「口先介入」の一環か
従来、与党内では個人向け国債を新NISAの対象にすることに慎重な意見が多かった。それは、新NISAという制度は、個人の資金を株式などのリスクマネーへ振り向け、企業の成長につなげていく、「貯蓄から投資へ」という理念に根差しているためだ。安全資産である国債への投資はリスクマネーの供給ではなく、企業の成長を直接的には後押ししない。
しかし新NISAには、個人の資産形成を支援する狙いもある。国債の利回りが大幅に上昇したことで、個人にとって国債への投資の魅力は高まり、長期の資産形成手段としての存在感を高めている。
さらに政府にとっては、経済や金融市場の安定を損ないかねない、足もとでの長期金利の大幅上昇を牽制する狙いもあり、個人向け国債を新NISAの対象にすることに前向きな発言が出てきたという側面も考えられるのではないか。
政府が、GPIFの国内資産の拡大に前向きな発言をしているのと同様に、長期金利の上昇を牽制する「口先介入」の側面もあると考えられる。
しかし新NISAには、個人の資産形成を支援する狙いもある。国債の利回りが大幅に上昇したことで、個人にとって国債への投資の魅力は高まり、長期の資産形成手段としての存在感を高めている。
さらに政府にとっては、経済や金融市場の安定を損ないかねない、足もとでの長期金利の大幅上昇を牽制する狙いもあり、個人向け国債を新NISAの対象にすることに前向きな発言が出てきたという側面も考えられるのではないか。
政府が、GPIFの国内資産の拡大に前向きな発言をしているのと同様に、長期金利の上昇を牽制する「口先介入」の側面もあると考えられる。
前向きに議論が進んでいく可能性
財務省によると、2025年度の個人向け国債の発行額は合計で6兆円超となり、19年ぶりの高水準だった。家計の国債の保有割合も1.8%と2014年12月以来の水準になった。家計の国債の保有割合がまだ1%台と低いことは、この先の伸びしろの大きさを示しているとも言える。
財務省が2024年にまとめた資料によると、G7(主要7か国)で日本と米国、英国、イタリアが個人向け国債を発行している。このうち国債の優遇税制がないのは日本だけである。
金融庁は2026年度税制改正要望の中で、NISAの「つみたて投資枠」の対象商品を拡充して、債券中心の投資信託を対象に加える案を示していた。国債ではないが、債券への投資を促す考えであり、NISAはリスク資産中心という考えは、既に修正されていた。金融庁は「リスク許容度が高くない若年層や高齢層などが投資の第一歩を踏み出せるよう、債券中心あるいはバランス型の投資信託の選択肢の充実を図る」とその趣旨を説明していた。
NISAの対象に国債を加えることには、税収を減らすといった課題もある。しかし、長期金利が大幅に上昇し、個人にとっても投資対象としての注目が高まっていることを踏まえると、今後前向きな議論が進んでいき、早ければ2027年度の税制改正大綱に盛り込まれる可能性もあるかもしれない。
(参考資料)
「財務相、国債の魅力向上「早急に」」、2026年7月15日、産経新聞
「日本国債に個人マネー流入、金利上昇で投資妙味 政府も後押しへ」、2026年7月16日、日本経済新聞電子版
「個人の国債保有増へ、自民に相続減税論 国民民主「NISA対象に」」、2026年6月27日、日本経済新聞電子版
財務省が2024年にまとめた資料によると、G7(主要7か国)で日本と米国、英国、イタリアが個人向け国債を発行している。このうち国債の優遇税制がないのは日本だけである。
金融庁は2026年度税制改正要望の中で、NISAの「つみたて投資枠」の対象商品を拡充して、債券中心の投資信託を対象に加える案を示していた。国債ではないが、債券への投資を促す考えであり、NISAはリスク資産中心という考えは、既に修正されていた。金融庁は「リスク許容度が高くない若年層や高齢層などが投資の第一歩を踏み出せるよう、債券中心あるいはバランス型の投資信託の選択肢の充実を図る」とその趣旨を説明していた。
NISAの対象に国債を加えることには、税収を減らすといった課題もある。しかし、長期金利が大幅に上昇し、個人にとっても投資対象としての注目が高まっていることを踏まえると、今後前向きな議論が進んでいき、早ければ2027年度の税制改正大綱に盛り込まれる可能性もあるかもしれない。
(参考資料)
「財務相、国債の魅力向上「早急に」」、2026年7月15日、産経新聞
「日本国債に個人マネー流入、金利上昇で投資妙味 政府も後押しへ」、2026年7月16日、日本経済新聞電子版
「個人の国債保有増へ、自民に相続減税論 国民民主「NISA対象に」」、2026年6月27日、日本経済新聞電子版
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。