他の世界遺産登録地ほどの観光客増加は見込めない可能性
7月26日、韓国・釜山で開かれているユネスコの世界遺産委員会で、奈良県にある「飛鳥・藤原の宮都」の世界文化遺産への登録が決まった。「飛鳥・藤原の宮都」は、奈良県の明日香村、橿原市、桜井市にある19の遺跡で構成される。世界文化遺産の登録は国内で27件目、奈良県内では4件目となる。
この登録が生じさせる1年間の経済効果を試算した。対象となる3市村の観光客数(観光入込客数)は奈良県観光客動態調査などによる推計で、登録前でおよそ年間450万人となる。その内訳は明日香村が約70万人、橿原市が約220万人、桜井市が約160万人である。この観光客数が登録によってどの程度増加するかが、経済効果を大きく決める。
次に観光客一人当たりの消費額を推計する。観光庁「共通基準による観光入込客統計」などによると、奈良県の日帰り客の平均消費額は令和6年実績で4,405円だ。また宿泊客の平均消費額は令和6年実績で33,284円である。
ただし3市村は宿泊機能が弱い。例えば、明日香村の宿泊客のうち村内泊は約1割にとどまるとみられる。奈良県全体の宿泊客比率(観光客のうち宿泊する人の割合)は約9.5%と試算されるが、3市村の同比率はそれよりも低いと見られ、ここでは8%と想定した。その場合、観光客一人当たりの消費額の加重平均単価は6,715円となる。
過去に世界文化遺産に登録された石見銀山の観光客数は1年間で約75%増加し、富岡製糸場では約4倍となった。しかし、飛鳥や藤原京は教科書などを通じて既に認知度が高いこと、また、構成資産が宮殿跡・寺院跡という可視性の低い遺跡群であることから、他の登録地ほどには観光客は増えないとみられる。
この登録が生じさせる1年間の経済効果を試算した。対象となる3市村の観光客数(観光入込客数)は奈良県観光客動態調査などによる推計で、登録前でおよそ年間450万人となる。その内訳は明日香村が約70万人、橿原市が約220万人、桜井市が約160万人である。この観光客数が登録によってどの程度増加するかが、経済効果を大きく決める。
次に観光客一人当たりの消費額を推計する。観光庁「共通基準による観光入込客統計」などによると、奈良県の日帰り客の平均消費額は令和6年実績で4,405円だ。また宿泊客の平均消費額は令和6年実績で33,284円である。
ただし3市村は宿泊機能が弱い。例えば、明日香村の宿泊客のうち村内泊は約1割にとどまるとみられる。奈良県全体の宿泊客比率(観光客のうち宿泊する人の割合)は約9.5%と試算されるが、3市村の同比率はそれよりも低いと見られ、ここでは8%と想定した。その場合、観光客一人当たりの消費額の加重平均単価は6,715円となる。
過去に世界文化遺産に登録された石見銀山の観光客数は1年間で約75%増加し、富岡製糸場では約4倍となった。しかし、飛鳥や藤原京は教科書などを通じて既に認知度が高いこと、また、構成資産が宮殿跡・寺院跡という可視性の低い遺跡群であることから、他の登録地ほどには観光客は増えないとみられる。
直接効果は44.3億円、波及効果も含めて70.9億円と試算
また、3市村の観光客数の推計値、年間450万人の大半は橿原神宮の初詣(三が日だけで約101万人)、今井町、大神神社、長谷寺、談山神社など世界遺産と無関係な観光客だ。世界文化遺産登録の影響を受ける観光客数は、年間450万人のうち4分の1弱の110万人程度と考えられる。この対象観光客数が、石見銀山の施設の入場者数の年間増加率約75%を下回る60%増加するとした場合、それは、3市村の観光客数の年間450万人の約15%に当たる66万人となる。
登録によって増える3市村の観光客66万人に、観光客一人当たりの消費額の推計値6,715円を掛け合わせると44.3億円となり、登録による観光客消費額の増加分となる。これが直接効果の試算値である。
さらに、この数値に奈良県産業連関表の観光消費に対する生産誘発倍率の1.6倍を掛けると70.9億円となる。これが世界文化遺産の登録がもたらす、経済波及効果を含めた経済効果の試算値である。
日本全体の1年間の名目GDPと比べると約0.001%とわずかな規模にとどまるが、当地の経済には相応の追い風となる。今後、国内観光客に当地の新たな魅力を伝えることができ、また、古い建物など可視性の高い観光地を訪れる傾向が強い外国人観光客を惹き付ける新たな工夫がなされれば、『飛鳥・藤原の宮都』世界文化遺産登録の経済効果はこの試算値を上回るだろう。
登録によって増える3市村の観光客66万人に、観光客一人当たりの消費額の推計値6,715円を掛け合わせると44.3億円となり、登録による観光客消費額の増加分となる。これが直接効果の試算値である。
さらに、この数値に奈良県産業連関表の観光消費に対する生産誘発倍率の1.6倍を掛けると70.9億円となる。これが世界文化遺産の登録がもたらす、経済波及効果を含めた経済効果の試算値である。
日本全体の1年間の名目GDPと比べると約0.001%とわずかな規模にとどまるが、当地の経済には相応の追い風となる。今後、国内観光客に当地の新たな魅力を伝えることができ、また、古い建物など可視性の高い観光地を訪れる傾向が強い外国人観光客を惹き付ける新たな工夫がなされれば、『飛鳥・藤原の宮都』世界文化遺産登録の経済効果はこの試算値を上回るだろう。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。