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3人が利上げを主張し政策金利の据え置きに反対

米連邦準備制度理事会(FRB)は7月28~29日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利のフェデラルファンド(FF)金利誘導目標を3.50~3.75%に据え置くことを決めた。政策金利の据え置きは5会合連続となる。

ただし、12人の委員のうちクリーブランド地区連銀のハマック総裁、ダラス地区連銀のローガン総裁、ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁の3人は、0.25%の利上げを主張し、政策金利の据え置きに反対票を投じた。

金融市場は事前に3割程度の確率で利上げ決定を予想していた。3人が利上げを主張したように、FOMC全体は利上げ方向に傾いているように見える。しかし、足もとの物価指標が下振れたことや中東情勢を見極める観点などから、今回は政策金利の据え置きがなされたとみられる。

ウォーシュ議長は、「FRBはインフレ率を2%目標へ戻す取り組みを緩めることはない」「必要、かつ適切と判断されれば、行動をためらうことはない」と語り、物価安定への決意を強調した。ただし、金融市場では先行きの金融政策の見通しは固まっておらず、次回9月のFOMCでの利上げの確率は6割程度にとどまっている。

長期金利上昇への対応が注目

ウォーシュ議長は記者会見で、前回のFOMC以降、長期金利が上昇したことを指摘した。これには、金融市場がFRBの将来の利上げを予想して長期金利が上昇した面と、FRBの利上げが遅れることで物価上昇率が上振れてしまう「ビハインド・ザ・カーブ」の懸念を反映した面とがある。ウォーシュ議長はFRBが利上げに動く前に長期金利が上昇したことで、利上げと同様の効果が発揮されたと判断し、これが利上げ見送りの一つの理由になったと考えられる。

今回のFOMCの決定を受けて、債券市場では長期金利が大幅に上昇した。特に長期、超長期の金利の上昇幅がより大きくなるベア・スティープ化がみられた。これは、FRBの利上げが遅れることで物価上昇率が上振れてしまう「ビハインド・ザ・カーブ」の懸念を反映したものと考えられる。

また、この長期金利の大幅上昇が、AIセクターへの懸念とトランプ政権によるイラン攻撃再開への懸念と重なり、株価の大幅下落を引き起こしている。

「ビハインド・ザ・カーブ」の懸念を反映した長期金利の上昇を、利上げと同様の効果を発揮するとして容認するのか、それとも「ビハインド・ザ・カーブ」の懸念を緩和し、金融市場の安定回復を図るために利上げに踏み切るのかが、次回FOMCでの大きな注目点となる。

市場との新たな対話を模索

ウォーシュ議長は、政策金利の先行きを示唆する「フォワードガイダンス」などの金融市場とのコミュニケーション手法の見直しを進めている。

ウォーシュ議長は、フォワードガイダンスは、金融危機時のような局面では有効な手段になるが、平時には見直しを検討する必要がある、との見方を改めて示した。また、「市場からの直接的なメッセージを受け取り、そこからインフレや雇用の状況についての判断をする。我々は市場からのシグナルを妨害しないように発言を控えめにし、フォワードガイダンスから距離を置いている」とも説明した。

ただし、金融市場やメディアはフォワードガイダンスに注目しているため、その縮小には移行期間が必要になる、との見方を示した。FOMC参加者が先行きの政策金利の見通しを示す、いわゆる「ドットチャート」をしばらく続けることを示唆したものと受け止められる。また、ウォーシュ議長は、FOMC後の議長会見については、「少なくとも年内は、前任者の下で決められた通り、記者会見を継続する」と述べた。

ウォーシュ議長が模索する金融市場とのコミュニケーションの見直しが円滑に進んでいくかどうかが、金融政策に加え、今後の大きな注目点となる。

プロフィール

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    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。