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日本は引き続き監視リストに

米財務省は7月23日に、米国の主要貿易相手国のマクロ経済・為替政策に関する半期ごとの報告書を議会に提出した。米国の財・サービスの国際貿易の約80%を占める主要貿易相手国の政策について、2025年12月までの4四半期を対象に検討・評価を行ったものだ。同報告書は半期に一度公表されている。

国際収支調整を妨げる目的、または国際貿易において不公正な競争優位性を得る目的で、自国通貨と米ドルとの為替レートを操作する国、いわゆる「為替操作国」に認定された国はなかった。

一方、通貨政策やマクロ経済政策について注視を要する主要貿易相手国として、中国、日本、韓国、台湾、タイ、シンガポール、ベトナム、ドイツ、アイルランド、スイスの10か国・地域が、財務省の「監視リスト(Monitoring List)」に掲載された。前回の為替報告書でも同じ10か国・地域が監視リストに掲載されていた。

この10か国・地域の中で中国については、より警戒的な記述となっている。主要な貿易相手国の中でも中国は、為替レート政策や慣行の透明性が相対的に著しく低いという点で際立っているとし、今後、人民元高を阻止するために中国が公式または非公式の経路を通じて介入を行っていることを示す証拠が得られた場合には、財務省は中国を為替操作国に認定する可能性がある、と強い口調で牽制している。

日本政府による円安誘導の疑念は後退か

米国は、日本政府が公的年金資金などの海外投資を通じて円安を誘導している可能性を警戒してきた。2026年1月の為替報告書で、日本についての「政府系投資機関」のパートでは、以下のような記述がなされていた。

「2014年、日本銀行の『量的・質的金融緩和』政策により日本国債(JGB)の利回りが極めて低水準にあった際、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)はポートフォリオの配分を見直し、外国債券・株式の比率を引き上げ、国内債券の比率を引き下げた。この配分変更は、日本の居住者による資本流出を拡大させる一因となり、GPIFの決定が円安を誘導しようとする政府の広範な取り組みの一環であったのではないかという市場の憶測を招いた。」

しかし今回の為替報告書にはこのような記述はなく、「政府系投資機関」のパートでは、GPIFとゆうちょ銀行の資産運用について淡々と事実関係を述べているのみだ。このことは、米国政府による日本政府の円安誘導への疑念が後退している可能性を示唆しているのではないか。

為替の安定について米政府と強い連携

また、日本政府の為替介入についても、為替介入の総額を毎月公表するなど透明性の高い運用を行っており、為替介入は「一方的かつ急激な為替変動」への対応であり、特定の為替レート水準を目標とするものではない、とする日本政府の説明を受け入れている。

さらに、2025年9月の日米財務大臣共同声明で示された通り、米国財務省は今後も、マクロ経済および為替に関する事項について、日本の財務省と緊密な協議を継続していく、と敢えて記述している。

片山財務相がGPIFによる国内投資の拡大に言及した背景には、円安・債券安を牽制するための市場への口先介入の意図があった可能性がある。それに加えて、公的年金を通じた円安誘導との米政府の疑念への対応という側面もあったのではないか。

しかし、今回の為替報告書は、そうした米政府の疑念が緩和された可能性を示唆しているように見える。一方、日本の為替介入を米政府が容認する姿勢がより強まっているようにも見える。

円安に対して日本政府は、為替介入の実施とあわせて、為替の安定について米政府と強い連携体制ができていることを市場に強調することで、円安を牽制することを今後も続けるだろう。

プロフィール

  • 木内 登英のポートレート

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。