食料品の消費税率引き下げに自民党内では慎重意見
高市首相は7月30日午前、自民党の臨時役員会で、来年4月から食料品の消費税率を2年間、1%に引き下げる方針を表明し、党内のとりまとめを指示した。首相はこの案を「最善の方法」と判断し、8月上旬までに政府・与党の正式方針として取りまとめるよう要請した。
臨時役員会では、この方針が全会一致で了承されたと報じられた。政府は8月上旬の閣議決定、秋の臨時国会への関連法案提出を目指している。
ただし自民党内にはなお慎重論や反対論が多く、今後、党内調整が円滑に進むかどうかは不透明だ。同日、自民党麻生派の河野元外相は、食料品の消費税減税について「財源のめどが立っていないなど、いろいろな問題が指摘されている。消費税率を引き下げても、飲食料品の価格が下がる保証がない。税率を引き下げることには反対だ」などと述べ、中低所得者への給付による対応を主張した。
また小渕元選挙対策委員長は、税制調査会の非公式の幹部会合のメンバーを正式辞任した。食料品の消費税率引き下げに反発したものとみられる。
臨時役員会では、この方針が全会一致で了承されたと報じられた。政府は8月上旬の閣議決定、秋の臨時国会への関連法案提出を目指している。
ただし自民党内にはなお慎重論や反対論が多く、今後、党内調整が円滑に進むかどうかは不透明だ。同日、自民党麻生派の河野元外相は、食料品の消費税減税について「財源のめどが立っていないなど、いろいろな問題が指摘されている。消費税率を引き下げても、飲食料品の価格が下がる保証がない。税率を引き下げることには反対だ」などと述べ、中低所得者への給付による対応を主張した。
また小渕元選挙対策委員長は、税制調査会の非公式の幹部会合のメンバーを正式辞任した。食料品の消費税率引き下げに反発したものとみられる。
財源についての説明は期待外れ
高市首相は30日の午後6時から記者会見を開き、食料品の消費税率引き下げを正式に決定したことを表明した。消費税率引き下げや、物価高対策の本丸と位置付ける所得連動型の給付金制度について説明したが、制度についての細かい説明、繰り返しの多さ、手元原稿の読み上げなどが目立ち、一般国民には十分に伝わらなかったのではないかと思われる。
消費税率の引き下げ方針の決定は金融市場では予想されていたことであったが、一つの注目点は、安定した財源が同時に明示されるかどうかだった。実際には、財源についての高市首相の説明は終始曖昧なままで、大いに期待外れであった。
高市首相は、財源について、予算編成プロセスの改革の中で税収を見極めつつ歳出歳入の一体改革を進める、補助金や租税特別措置の見直しを進める、外為特会などからの税外収入をゼロベースで見直す、などと説明したが、具体的な説明は一切なかった。消費税率の引き下げを公約に掲げた衆院選から半年近くも経過するなかで、財源についての議論はなお進んでいないことが露呈した。
一方で高市首相は、消費税率の引き下げを赤字国債に頼らないことを再度強調した。実際には、赤字国債に頼らずに年間5兆円規模の安定した財源を確保するのはほぼ不可能なのではないか。消費税率の引き下げ方針を決定する一方、赤字国債に頼らないことを明言することで、どちらかの約束は果たせないという大きな政治的リスクを、高市首相は負ったのではないか。
また、2年後に食料品の消費税率を元に戻すことについては、自身の責任で確実に行うとしたが、2年後の政権の姿が見えない中で、その約束は説得力を持たないのではないか。
消費税率の引き下げ方針の決定は金融市場では予想されていたことであったが、一つの注目点は、安定した財源が同時に明示されるかどうかだった。実際には、財源についての高市首相の説明は終始曖昧なままで、大いに期待外れであった。
高市首相は、財源について、予算編成プロセスの改革の中で税収を見極めつつ歳出歳入の一体改革を進める、補助金や租税特別措置の見直しを進める、外為特会などからの税外収入をゼロベースで見直す、などと説明したが、具体的な説明は一切なかった。消費税率の引き下げを公約に掲げた衆院選から半年近くも経過するなかで、財源についての議論はなお進んでいないことが露呈した。
一方で高市首相は、消費税率の引き下げを赤字国債に頼らないことを再度強調した。実際には、赤字国債に頼らずに年間5兆円規模の安定した財源を確保するのはほぼ不可能なのではないか。消費税率の引き下げ方針を決定する一方、赤字国債に頼らないことを明言することで、どちらかの約束は果たせないという大きな政治的リスクを、高市首相は負ったのではないか。
また、2年後に食料品の消費税率を元に戻すことについては、自身の責任で確実に行うとしたが、2年後の政権の姿が見えない中で、その約束は説得力を持たないのではないか。
金融市場の財政悪化懸念は一段と強まる
食料品の消費税率を2年後に元の水準に戻すことは政治的に容易でなく、恒久減税になってしまう可能性が十分にある。この点を踏まえると恒久財源になり得る安定した財源を明示しない限り、金融市場は財政悪化への懸念を一段と強めるだろう。
7月30日の債券市場では、10年国債利回りは上昇し2.8%台に乗せた。これは前日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を受け、米国の長期国債利回りが上昇した影響もあるが、高市首相が食料品の消費税率引き下げを決定するとの報道を受けた面もある。
為替介入が実施されたと見られ、30日の海外市場で円高が進んだことから、目先は円安・債券安の動きは一服する可能性があるが、財源が明示されない状況が続く中で、円安・債券安は先行き一段と進み、物価高、長期金利上昇を通じて経済や国民生活に悪影響を与えるだろう。
また、食料品の消費税率引き下げの発表以前の時点で、10年国債利回りは財政悪化への懸念を相応に織り込んだ水準にあり、それは経済活動に既にマイナスの影響を与えている可能性がある。
7月30日の債券市場では、10年国債利回りは上昇し2.8%台に乗せた。これは前日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を受け、米国の長期国債利回りが上昇した影響もあるが、高市首相が食料品の消費税率引き下げを決定するとの報道を受けた面もある。
為替介入が実施されたと見られ、30日の海外市場で円高が進んだことから、目先は円安・債券安の動きは一服する可能性があるが、財源が明示されない状況が続く中で、円安・債券安は先行き一段と進み、物価高、長期金利上昇を通じて経済や国民生活に悪影響を与えるだろう。
また、食料品の消費税率引き下げの発表以前の時点で、10年国債利回りは財政悪化への懸念を相応に織り込んだ水準にあり、それは経済活動に既にマイナスの影響を与えている可能性がある。
図表 食料品の消費税率引き下げの経済効果


プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。