ウォーシュ議長はFOMCの開催頻度を減らす考えを示した
米連邦準備制度理事会(FRB)のケビン・ウォーシュ議長が、7月28~29日に開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)で、FOMCの開催頻度を減らす考えを示したことが、米ニューヨーク・タイムズ紙などの報道により明らかになった。
ウォールストリート・ジャーナル紙によると、会合頻度の削減は正式な提案ではなく、年6回の開催にメリットがあるかどうかを中心に短い協議が行われたという。現在FOMCは年8回開催されている。
ウォーシュ議長は、FRBが先行きの政策に関する不確実な情報を金融市場に多く提供するのではなく、経済指標などから金融市場が独自に金融政策を予想し、それを織り込んで金利形成を行うことが良い、と考えている。
こうした考えのもと、ウォーシュ議長にとって就任後初となった6月のFOMCでは、声明文から先行きの金融政策の方向性を示す文言が削除され、また声明文自体が簡略化された。さらにFOMCの参加者が行う政策金利の先行き予測、いわゆるドットチャートをウォーシュ議長は示さなかった。FOMC後の議長の記者会見についても、当面は行うものの、その必要性を検討する考えを示している。
ウォーシュ議長は以前より、会合の回数が多いことの弊害を意識していた。それは不確かで過剰な情報を金融市場に提供することになり、また市場が会合への注目を過度に高めることが、会合前後での金融市場のボラティリティを高める、という考えに基づくものだと思われる。
ウォーシュ議長は2014年にイングランド銀行(BOE)のマーク・カーニー総裁の依頼を受けてBOEの透明性向上策を検証した際には、BOEの政策決定会合を年12回から年8回に削減するよう勧告した。それを受けてBOEは2016年に、政策決定会合をFRBや欧州中央銀行(ECB)と歩調を合わせ、年8回にした。
その背景にある考え方は、経済に関する判断が4週間程度で大きく変化することはまれであり、会合の回数を減らすことで政策決定者が熟慮する時間が増える、というものだった。
FRBの根拠となる法律では、FOMCは少なくとも年4回開催することが義務付けられている。年8回という現在の開催は1981年に始まった。なお、議長または3人以上のメンバーが呼びかければ臨時の会合を招集できる。
ウォールストリート・ジャーナル紙によると、会合頻度の削減は正式な提案ではなく、年6回の開催にメリットがあるかどうかを中心に短い協議が行われたという。現在FOMCは年8回開催されている。
ウォーシュ議長は、FRBが先行きの政策に関する不確実な情報を金融市場に多く提供するのではなく、経済指標などから金融市場が独自に金融政策を予想し、それを織り込んで金利形成を行うことが良い、と考えている。
こうした考えのもと、ウォーシュ議長にとって就任後初となった6月のFOMCでは、声明文から先行きの金融政策の方向性を示す文言が削除され、また声明文自体が簡略化された。さらにFOMCの参加者が行う政策金利の先行き予測、いわゆるドットチャートをウォーシュ議長は示さなかった。FOMC後の議長の記者会見についても、当面は行うものの、その必要性を検討する考えを示している。
ウォーシュ議長は以前より、会合の回数が多いことの弊害を意識していた。それは不確かで過剰な情報を金融市場に提供することになり、また市場が会合への注目を過度に高めることが、会合前後での金融市場のボラティリティを高める、という考えに基づくものだと思われる。
ウォーシュ議長は2014年にイングランド銀行(BOE)のマーク・カーニー総裁の依頼を受けてBOEの透明性向上策を検証した際には、BOEの政策決定会合を年12回から年8回に削減するよう勧告した。それを受けてBOEは2016年に、政策決定会合をFRBや欧州中央銀行(ECB)と歩調を合わせ、年8回にした。
その背景にある考え方は、経済に関する判断が4週間程度で大きく変化することはまれであり、会合の回数を減らすことで政策決定者が熟慮する時間が増える、というものだった。
FRBの根拠となる法律では、FOMCは少なくとも年4回開催することが義務付けられている。年8回という現在の開催は1981年に始まった。なお、議長または3人以上のメンバーが呼びかければ臨時の会合を招集できる。
主要中央銀行の政策決定会合の開催数はFRBに揃えて年8回に収れん
議論はまだ始まったばかりであるが、仮にFOMCが開催頻度を年8回から6回に削減すれば、他の主要な中央銀行においても会合の開催頻度に関する議論を高めるきっかけになるだろう。過去には、他の主要中央銀行は、FRBに合わせて会合の開催回数を年8回に修正してきた経緯がある(図表)。
ECBは2015年に、理事会の開催頻度を年12回から8回にした。1998年の新日本銀行法のもとで日本銀行は、当初、年24回の金融政策決定会合を開催していた。その後、開催頻度は低下し、2016年にはFRBと同様に年8回となった。
その狙いは、FRBやECBと頻度や開催のタイミングを合わせることで、総裁がBISの中銀総裁会議などの国際会議に参加しやすくすることだった。他方、情報提供の頻度が低下するとの批判に応えて、それ以前は年2回公表していた展望レポートを年4回にし、また新たに主な意見の発表を始めた。
日本銀行の場合、金融政策決定会合の開催頻度削減は、市場に提供する情報量を減らすことが目的ではなかった。
ECBは2015年に、理事会の開催頻度を年12回から8回にした。1998年の新日本銀行法のもとで日本銀行は、当初、年24回の金融政策決定会合を開催していた。その後、開催頻度は低下し、2016年にはFRBと同様に年8回となった。
その狙いは、FRBやECBと頻度や開催のタイミングを合わせることで、総裁がBISの中銀総裁会議などの国際会議に参加しやすくすることだった。他方、情報提供の頻度が低下するとの批判に応えて、それ以前は年2回公表していた展望レポートを年4回にし、また新たに主な意見の発表を始めた。
日本銀行の場合、金融政策決定会合の開催頻度削減は、市場に提供する情報量を減らすことが目的ではなかった。
(図表)主要中央銀行の金融政策決定の会合の年間開催回数の推移


他の主要中央銀行はウォーシュ議長のコミュニケーション改革に単純に追随しない
先行きの金融政策を決める経済、物価環境の予測について、中央銀行が金融市場と比べて特殊な情報を持っているわけではなく、またその予測の精度が高いと言えるわけでもない。
政策金利がテーラー・ルールのような政策反応関数に従って経済と物価によって決まるのであれば、金融市場が日々入手する経済データから先行きの見通しを修正していくことで、常に合理的な金利形成が行われることになる。
しかし実際には、一部の市場参加者しか知り得ない金融市場の状況や金融機関経営を踏まえて中央銀行が金融政策を決めることもある。時には、政治情勢も金融政策に影響する。その場合、金融政策はテーラー・ルールのようなマクロ経済環境で決まる政策反応関数では予見できない。
この点を踏まえると、FRBが情報提供を絞ると、金融市場が先行きの金融政策を予測する際の情報に不足が生じ、それが金融市場のボラティリティを高めてしまうのではないか。
肥大化したFRBのバランスシートに表れているように、金融機関がFRBによる資金供給に過度に依存することは、金融機関の健全経営に向けた努力を削いでしまうといったモラルハザードのリスクを生む。過度な情報提供についても、同様の側面があるだろう。
この点から、金融市場がFRBから提供される情報に過度に依存し、自らの判断で金利形成を行う傾向が弱まってしまうことには、やはり弊害がある。この論点については、多くの中央銀行がウォーシュ議長に共感するのではないか。
それでも、情報提供を大幅に削減することを目指すウォーシュ議長の取り組みに、そのまま追随することはないだろう。
日本銀行の場合には、金融政策についての丁寧かつ豊富な情報提供が、日本銀行に対する国民の信頼を高めることにとって重要であり、それこそが政治からの独立性を確保する鍵になる、との理念を強く持っている。
(参考資料)
“Warsh Floats Cut in Number of Fed Rate-Setting Meetings(ウォーシュFRB議長、FOMC会合の回数削減を提案)”, Wall Street Journal, August 1, 2026
政策金利がテーラー・ルールのような政策反応関数に従って経済と物価によって決まるのであれば、金融市場が日々入手する経済データから先行きの見通しを修正していくことで、常に合理的な金利形成が行われることになる。
しかし実際には、一部の市場参加者しか知り得ない金融市場の状況や金融機関経営を踏まえて中央銀行が金融政策を決めることもある。時には、政治情勢も金融政策に影響する。その場合、金融政策はテーラー・ルールのようなマクロ経済環境で決まる政策反応関数では予見できない。
この点を踏まえると、FRBが情報提供を絞ると、金融市場が先行きの金融政策を予測する際の情報に不足が生じ、それが金融市場のボラティリティを高めてしまうのではないか。
肥大化したFRBのバランスシートに表れているように、金融機関がFRBによる資金供給に過度に依存することは、金融機関の健全経営に向けた努力を削いでしまうといったモラルハザードのリスクを生む。過度な情報提供についても、同様の側面があるだろう。
この点から、金融市場がFRBから提供される情報に過度に依存し、自らの判断で金利形成を行う傾向が弱まってしまうことには、やはり弊害がある。この論点については、多くの中央銀行がウォーシュ議長に共感するのではないか。
それでも、情報提供を大幅に削減することを目指すウォーシュ議長の取り組みに、そのまま追随することはないだろう。
日本銀行の場合には、金融政策についての丁寧かつ豊富な情報提供が、日本銀行に対する国民の信頼を高めることにとって重要であり、それこそが政治からの独立性を確保する鍵になる、との理念を強く持っている。
(参考資料)
“Warsh Floats Cut in Number of Fed Rate-Setting Meetings(ウォーシュFRB議長、FOMC会合の回数削減を提案)”, Wall Street Journal, August 1, 2026
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。