基調的な物価上昇率が2%に近づく中、物価の上振れリスクをより警戒
10日に公表された日本銀行の2026年7月30、31日開催分の金融政策決定会合における「主な意見」では、早期利上げや利上げに前向きな意見が目立った。金融政策運営に関する意見は13項目掲載された。9人の政策委員のうち5人が1つ、4人が2つの意見をそれぞれ示したと考えられる。
13項目の意見のうち5つは、機動的な利上げ、利上げペースの加速に言及している。従来早期利上げに前向きな審議委員2人に加え、少なくとももう一人が機動的な利上げ、利上げペースの加速に言及したことになるだろう。現時点で少なくとも3人が9月の金融政策決定会合での利上げに賛成する可能性が高いと推察できる。
一方、追加利上げが経済に与える影響などを懸念する慎重な意見はなかった。唯一注目されたのが、「利上げの影響が、インフレ率と国内経済を下押しする形で波及するまでには、1年から1年半程度のタイムラグが存在するとみられる」との発言だ。しかしこれも、7月の会合での利上げを見送ることの妥当性を主張したものであり、9月の利上げを強く否定するものとは言えない。
意見の一つにあった「基調的な物価上昇率が2%に近づく中、物価の上振れリスクにはこれまで以上に配慮する必要がある」というのが、政策委員の間で比較的共通の認識になりつつあるのではないか。この段階で基調的な物価上昇率が上振れれば、目標水準の2%を上に突き抜けてしまう恐れがあるからだ。この点は、7月の会合後の記者会見で、植田総裁も指摘していた。
13項目の意見のうち5つは、機動的な利上げ、利上げペースの加速に言及している。従来早期利上げに前向きな審議委員2人に加え、少なくとももう一人が機動的な利上げ、利上げペースの加速に言及したことになるだろう。現時点で少なくとも3人が9月の金融政策決定会合での利上げに賛成する可能性が高いと推察できる。
一方、追加利上げが経済に与える影響などを懸念する慎重な意見はなかった。唯一注目されたのが、「利上げの影響が、インフレ率と国内経済を下押しする形で波及するまでには、1年から1年半程度のタイムラグが存在するとみられる」との発言だ。しかしこれも、7月の会合での利上げを見送ることの妥当性を主張したものであり、9月の利上げを強く否定するものとは言えない。
意見の一つにあった「基調的な物価上昇率が2%に近づく中、物価の上振れリスクにはこれまで以上に配慮する必要がある」というのが、政策委員の間で比較的共通の認識になりつつあるのではないか。この段階で基調的な物価上昇率が上振れれば、目標水準の2%を上に突き抜けてしまう恐れがあるからだ。この点は、7月の会合後の記者会見で、植田総裁も指摘していた。
政権からの利上げ牽制は弱まる可能性
為替市場での日米協調介入の後に、ベッセント米財務長官が日本銀行の利上げに期待するコメントを出したことで、日本銀行の利上げが早まるとの観測も生じている。ベッセント米財務長官は昨年の高市政権発足以降、政権に対して、日本銀行の利上げを牽制すると円安傾向が強まってしまう、と諭してきた。今回、米国が協調介入を実施する際に日本政府に示した条件の中にも、日本銀行の利上げを牽制しないことが含まれていた可能性も考えられる。
米政権に利上げを促されたからといって、日本銀行がそれに応えて即座に利上げを決めることはないだろう。ベッセント米財務長官が日本銀行の利上げに期待するコメントは今回が初めてではない。
しかし、日米協調介入とその直後のベッセント米財務長官の発言を受けて、政権が水面下であっても、日本銀行の利上げを従来のように牽制することに一定の制約が生じている可能性は考えられる。政権からの牽制が弱まることで、日本銀行が利上げペースを早める可能性も考えられるところだ。
米政権に利上げを促されたからといって、日本銀行がそれに応えて即座に利上げを決めることはないだろう。ベッセント米財務長官が日本銀行の利上げに期待するコメントは今回が初めてではない。
しかし、日米協調介入とその直後のベッセント米財務長官の発言を受けて、政権が水面下であっても、日本銀行の利上げを従来のように牽制することに一定の制約が生じている可能性は考えられる。政権からの牽制が弱まることで、日本銀行が利上げペースを早める可能性も考えられるところだ。
基調的物価が2%を上回ることと政策金利が中立水準を上回ることの双方のリスク
基調的な物価上昇率は目標の2%に近づく中、それに合わせて政策金利も経済・物価に対して中立水準に近づいていることになる。この局面では、物価上昇率が上振れて目標を上回ってしまうリスクに配慮すると同時に、政策金利が中立水準を上回り、経済と物価の下方リスクを高めてしまうことにも配慮する必要がある。
また、原油価格の高騰の影響は、秋にかけて本格的に物価上昇率を高めると考えられるが、9月の会合時点ではまだその半分程度を見極めることができるに過ぎない。コメの価格が下落していることの影響を踏まえると、7月の展望レポートに加えて10月の展望レポートでも日本銀行は2026年度の物価見通しを下方修正する可能性がある。
そもそも、原油価格の上昇は供給ショックであり、基調的な物価上昇率に影響を与えるとは限らないことは、植田総裁自身が説明してきたことだ。
こうした点を踏まえると、9月の会合で日本銀行が利上げに踏み切ることは確定的とは言えない。しかし、利上げ時期は9月、10月、12月のいずれかの会合となる可能性はかなり高く、総裁の発言や主な意見の内容を踏まえると、もはや9月の利上げ実施の可能性は否定できないだろう。
また、原油価格の高騰の影響は、秋にかけて本格的に物価上昇率を高めると考えられるが、9月の会合時点ではまだその半分程度を見極めることができるに過ぎない。コメの価格が下落していることの影響を踏まえると、7月の展望レポートに加えて10月の展望レポートでも日本銀行は2026年度の物価見通しを下方修正する可能性がある。
そもそも、原油価格の上昇は供給ショックであり、基調的な物価上昇率に影響を与えるとは限らないことは、植田総裁自身が説明してきたことだ。
こうした点を踏まえると、9月の会合で日本銀行が利上げに踏み切ることは確定的とは言えない。しかし、利上げ時期は9月、10月、12月のいずれかの会合となる可能性はかなり高く、総裁の発言や主な意見の内容を踏まえると、もはや9月の利上げ実施の可能性は否定できないだろう。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。