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8月10日の米国市場で、ドル円レートは1ドル159円台に乗せ、再び円安が進んだ。東京市場が休場である12日も、1ドル159円台で推移した。日米協調介入はサプライズであったが、それでも為替介入の効果は一時的であることに変わりはなく、既にその効果は剥落してきている。
 
ドル円レートが再びドル高円安に振れた背景には、イラン情勢の膠着があると考えられる。戦闘の完全終結とホルムズ海峡の通航再開への期待が高まっていたが、8日には、最高安全保障委員会のゾルガドル前事務局長が、ホルムズ海峡の通航再開に向けた交渉条件の1つとして、戦闘の損害賠償を米国に求めた。
 
これを受けてトランプ大統領は10日に、米国もイランに対して戦闘の損害賠償を求めるとし、「今後のあらゆる交渉に、この要求を明確に盛り込むよう担当者に指示した」ことを明らかにした。米国とイランの間で再び緊張が高まったことから、WTI原油先物価格も再び1バレル80ドル台に乗せ、一時84ドル台まで上昇した。
 
原油価格が上昇したことから、弱めとなった7月米雇用統計を受けてやや低下していた9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ観測が再び高まっている。こうしたもとで、為替市場では再び1ドル160円に接近するドル高円安の動きとなっている。
 
一方、トランプ政権は日米協調介入に踏み切る条件として、高市政権に対して、長期金利の上昇を引き起こさないよう、金融市場の安定に十分配慮した財政政策運営と、日本銀行の利上げを牽制しないことを要求した可能性が考えられる。しかし現状では、高市政権がこうしたトランプ政権の要請に明確に応えた証拠は見られない。これも、足もとのドル高円安の要因となっていよう。
 
政府は引き続き1ドル160円近傍を防衛ラインに据えているとみられる。日米協調介入の実施により、しばらくはこの防衛ラインは守られ、日米協調介入前の1ドル164円近くまで円安が進むことは避けられるのではないか。しかし、イラン情勢の悪化、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ、高市政権による財政悪化と日本銀行の利上げ牽制への懸念という3つの要因に明確な変化が生じるまでは、さらなるドル高円安のリスクは残る。
 
金融市場で円安・債券安が一段と進めば、その悪影響が米国市場に及ぶことを警戒したトランプ政権が、高市政権に対して財政・金融政策姿勢の修正を再度強く求めることが予想される。これを受けて高市政権の政策修正が進めば、ドル高円安と債券安は一巡することが考えられる。イラン情勢も含め、日米協調介入後の円安修正の鍵を握るのは米国である。

プロフィール

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    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。