2027年度予算の概算要求は投資枠、防衛費、国債費を中心に大幅積み増しへ
2027年度の予算編成が本格化している。概算要求基準が2026年7月30日に閣議了解されたが、各省庁の要求期限は8月末とされる。
今回の概算要求基準の最大の特徴は、政府が新設した「『強く豊かな日本』投資枠」について、要求上限(シーリング)を設けなかったことだ。社会保障費以外の裁量的支出についても、前年度予算相当額をベースにしつつ、さらに20%の要望が可能とした。
さらに、複数年度を見据えた予算編成の方針が示され、投資枠については単年度ではなく、複数年度計画に基づく取り組みを基本とした。また、毎年恒常的に実施している施策については、補正予算ではなく当初予算に計上する考え方も打ち出された。
全体的には、「財政規律重視のシーリング型」から「成長投資重視型」へと比重を移したと言える。
2027年度予算で大幅な積み増しが予想されるのは、経済産業省の所管の割合が高い「強く豊かな日本」投資枠、防衛省が所管する防衛費、そして国債費の3項目だ。
2026年度予算で各省庁の一般会計概算要求・要望額は約122.4兆円と、2025年度の約117.6兆円から約4.8兆円増加した。2027年度の概算要求額は130兆円超となるとの見通しが報じられている。130兆円であっても、前年度比7.6兆円以上の大幅な上積みとなる。
今回の概算要求基準の最大の特徴は、政府が新設した「『強く豊かな日本』投資枠」について、要求上限(シーリング)を設けなかったことだ。社会保障費以外の裁量的支出についても、前年度予算相当額をベースにしつつ、さらに20%の要望が可能とした。
さらに、複数年度を見据えた予算編成の方針が示され、投資枠については単年度ではなく、複数年度計画に基づく取り組みを基本とした。また、毎年恒常的に実施している施策については、補正予算ではなく当初予算に計上する考え方も打ち出された。
全体的には、「財政規律重視のシーリング型」から「成長投資重視型」へと比重を移したと言える。
2027年度予算で大幅な積み増しが予想されるのは、経済産業省の所管の割合が高い「強く豊かな日本」投資枠、防衛省が所管する防衛費、そして国債費の3項目だ。
2026年度予算で各省庁の一般会計概算要求・要望額は約122.4兆円と、2025年度の約117.6兆円から約4.8兆円増加した。2027年度の概算要求額は130兆円超となるとの見通しが報じられている。130兆円であっても、前年度比7.6兆円以上の大幅な上積みとなる。
(図表1) 2027年度予算概算要求(報道ベース)


投資枠と防衛費の歳出増加額見通し
① 「強く豊かな日本」投資枠:7.6兆円
政府は17分野の官民投資額が2040年度までに約370兆円に達する、との試算値を示している。このうち政府支出分についての見通しは示されていないが、来年度予算編成の過程でその規模が見えてくるだろう。
経済産業省の2027年度概算要求額は約7兆7,000億円と2026年度当初予算の約3兆693億円から4兆6,307億円の増加となる。これは、新たに計上された投資枠の約4.5兆円に概ね対応している規模だ。
17分野の官民投資のうち、経済産業省が所管するのは5分野であるが、投資額で計算した経済産業省所管の全体に占める比率は59.3%である。この比率から計算すると、他の省庁も含めた投資枠全体の規模は、4.5兆円÷59.3%=約7.6兆円となる計算だ。
② 防衛費:4.2兆円
防衛省は、2027年度予算案の概算要求で、約8.9兆円の予算を要求する見通しだ。これは、2026年度の概算要求額とほぼ同水準だ。2026年度予算では防衛費のGDP比率2%を2年前倒しで達成するために、予算が大幅に積み増された。
2027年度概算要求額は前年度予算とほぼ同額にとどめられているが、これは暫定的なものであり、年末にかけての防衛3文書見直しを踏まえて、防衛費は今後大幅に積み増されるものとみられる。
現在の防衛力強化の計画では、防衛関係費に海保・インフラ強靱化等を含む広義の「安全保障関連経費」(約11兆円)のGDP比率が目標とされている。その際、計算に用いられるのは2022年度の名目GDPである。
新たな計画のもとでは、基準となる名目GDPを2026年度(約690兆円)にすると想定し、安全保障関連経費を名目GDP比2.0%を維持する場合に必要となる防衛予算の上積み額を計算すると、約2.8兆円となる。名目GDP比2.5%の場合には約6.3兆円、名目GDP比3.0%の場合には約9.7兆円となる計算だ。
今後、段階的に比率を2.5%に引き上げるとして、2027年度分の比率を2.2%と想定すると、防衛費の前年度比増加分は約4.2兆円となる。
それ以外の歳出増加見通し
③ 高校授業料無償化:1,876億円
私立高校の所得制限撤廃・支給上限引き上げは2026年度に実施済みであるが、そのうち2027年度予算で追加の国費となるのは、1,876億円と見込まれる。
④ 食料品の消費税率引き下げに伴う給付金:3,000億円
政府は、2027年4月に食料品の消費税率を8%から1%に2年間引き下げる方針だ。さらに1%分の給付を行う。2027年に行われる1回分の給付金の総額は、約3,000億円と見込まれる。
⑤ 国債費:5.3兆円
財務省は2027年度予算案の概算要求で、国債の利払い費を計算する際の想定金利を、今年度予算の3.0%から3.8%に引き上げる方向で調整に入った。これを踏まえて財務省は、国債費の要求額を過去最大の約36.6兆円とする見通しだ。これは2026年度の国債費約31.3兆円から約5.3兆円の大幅増加となる。
この5.3兆円のうち、9割近くの4.8兆円が想定金利引き上げによる利払費の増加、残りの0.5兆円が国債残高累増による債務償還費の増加分と試算される。
⑥ 社会保障関係費の自然増:約3,900億円
年金・医療等については、前年度の当初予算額に、高齢化などに伴う歳出の増加、いわゆる自然増分の3,900億円を加算する枠組みが、概算要求基準として閣議了解されている。
ただし過去の実績では、各年度4,000億円程度の概算要求時の自然増が、予算編成過程で経済・物価動向対応分(年金スライド・診療報酬改定対応など)を加えて最終的に6,000~7,600億円規模に膨らむ傾向がみられる。2025年度は6,500億円程度、2026年度は7,600億円程度だった。
⑦ 地方交付税交付金: 6,900億円
2026年度予算で地方交付税交付金等は20兆8,778億円と過去最大となった。国税収入が増収基調にある中、国税の一定割合を地方に回す地方交付税もそれに連動して増加する傾向にあり、2027年度もさらなる積み増しが見込まれる。
2027年度の名目成長率見通しを3.0%、租税弾性値を1.1とした場合、2027年度の税収の増加率は3.3%となる。2027年度の地方交付税交付金が同率増加するとすれば、その金額は2026年度の約20.9兆円から約21.6兆円に約6,900億円増加する計算となる。
歳入減少見通し
① 食料品の消費税率引き下げ:4.4兆円
政府は2027年4月に食料品の消費税率を8%から1%に2年間引き下げることを閣議決定した。さらに1%分については、所得に連動した給付金で消費者に還元する方針だ。給付時期については、1回目が2027年秋、2回目が2028年秋にそれぞれ予定されている。
2027年度については、食料品の消費税率の引き下げと1回分の給付金が実施される見通しだ。その際には、税率引き下げで年間4.4兆円の税収減、1回分の給付金で約3,000億円程度の支出増加が見込まれる。
② 年収の壁対策(178万円):6,500億円
財務省の試算では、所得税の課税最低限を178万円へ引き上げる年収の壁対策の追加分は、年間6,500億円の税収減要因となる。既に実施済みの103万円から160万円への課税最低限の引き上げ分と合わせると、年間約1兆8,500億円の税収減になると考えられる。
歳出増加・減税は2027年度の財政収支を前年度比で20兆円超悪化させる
以上を合計すると、歳出増加は約18.7兆円と試算される(図表2)。他方、歳入の減少は約5.1兆円と試算され、両者を合計した財政収支の悪化額は23.7兆円と試算される。
その他、物価上昇に伴う歳出増加と税収増加分を調整した場合でも、2027年度の財政収支の悪化額は前年度比約22.1兆円と20兆円超規模となる。
こうした巨額の歳出増加・歳入減少をもたらす政府の施策について、歳出削減や増税などを通じて全て財源確保をすることはほぼ不可能であり、大半は赤字国債の追加発行で賄うことになる可能性が高いだろう。
2026年度の当初予算で、財政赤字額に相当する新規国債発行額は29.6兆円であったが、2027年度にはそれが一気に50兆円規模にまで急増する計算となる。
財政環境の一段の悪化は、さらなる円安・債券安を促し、それらが生じさせる物価高、長期金利上昇は経済を損ね、税収の下振れを通じて財政環境を一段と悪化させるという悪循環が生じやすい。
一連の施策についてはその財源を確保することが極めて難しいことは明らかであることから、歳出面では投資枠と防衛費増額、さらに消費税率の引き下げを中心に、政府の現在の方針を大幅に減額方向で見直すことが重要だ。財政環境の健全性維持により配慮した財政政策姿勢を示すことで、金融市場の信頼の回復を目指すことが政府には求められる。
その他、物価上昇に伴う歳出増加と税収増加分を調整した場合でも、2027年度の財政収支の悪化額は前年度比約22.1兆円と20兆円超規模となる。
こうした巨額の歳出増加・歳入減少をもたらす政府の施策について、歳出削減や増税などを通じて全て財源確保をすることはほぼ不可能であり、大半は赤字国債の追加発行で賄うことになる可能性が高いだろう。
2026年度の当初予算で、財政赤字額に相当する新規国債発行額は29.6兆円であったが、2027年度にはそれが一気に50兆円規模にまで急増する計算となる。
財政環境の一段の悪化は、さらなる円安・債券安を促し、それらが生じさせる物価高、長期金利上昇は経済を損ね、税収の下振れを通じて財政環境を一段と悪化させるという悪循環が生じやすい。
一連の施策についてはその財源を確保することが極めて難しいことは明らかであることから、歳出面では投資枠と防衛費増額、さらに消費税率の引き下げを中心に、政府の現在の方針を大幅に減額方向で見直すことが重要だ。財政環境の健全性維持により配慮した財政政策姿勢を示すことで、金融市場の信頼の回復を目指すことが政府には求められる。
(図表2)2027年度予算での歳出増加、歳入減少要因の試算


プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。