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ベッセント米財務長官は「G20を本来の役割に引き戻す」との方針

主要20か国(G20)財務相・中央銀行総裁会議が、8月31日から9月1日の日程で、米ノースカロライナ州アシュビルで行われる。
 
会議を主導するベッセント米財務長官は「G20を本来の使命に引き戻す」との方針を示しており、会合では、他国からの批判が強いトランプ関税など米国の自国優先の政策に関する議論を回避する一方、低成長、政府債務、金融規制、デジタル資産、国家間の経済的不均衡といったグローバルな経済テーマを中心に扱うことが予想される。
 
具体的には、ベッセント財務長官は以下のようなテーマを打ち出している。
  1. 金融規制の近代化を通じた成長重視の経済政策
  2. 過度なグローバル・インバランス(国家間の経済的不均衡)に関する分析の強化
  3. 債務透明性の向上と債務再編プロセスの円滑化
  4. デジタル資産エコシステムの後押し
  5. 国境を越えた決済の改善、決済関連の不正・詐欺対策
  6. 金融リテラシーの向上

日米協調介入のフォローアップ

日米両国にとって、このG20財務相・中央銀行総裁会議は、7月末に実施した日米協調介入のフォローアップとしての重要性があるだろう。
 
日米協調介入は、円安に苦しむ日本政府をトランプ政権が助けた形であり、米国はその見返りを日本に求める可能性がある。
 
円安の阻止は、米国のドル高修正をもたらし、貿易赤字の削減に寄与する。また、円安とともに進行している日本の長期金利上昇は米国市場にも波及し、米国経済・金融市場の安定を損ねる恐れがあることから、円安を抑えることは、米国の利益にもなる。このため、日米協調介入の見返りに、トランプ政権は日本に対して、円安・債券安のリスクに配慮した慎重な財政政策と円安リスクを軽減する日本銀行の利上げ、あるいは政府が日本銀行の利上げを妨げないことを、従来以上に求めてくる可能性がある。
 
日本の10年国債利回りが節目の3%に接近していることや、28日の為替市場でドル円レートが1ドル160円の節目を再び超えて円安が進んだことを受けて、ベッセント財務長官はG20財務相・中央銀行総裁会議の場で、改めて以上のような政策を日本に求めてくる可能性があるだろう。しかし、内政干渉となる直接的な政策への注文は水面下で行われ、報道はされないだろう。
 
一方、日本は、ドル円レートが再び1ドル160円を超えて円安に振れたことで、さらなる円安進行に対する警戒を強めている。円安をけん制するには、米国の影響力を利用するのが有効であることから、G20財務相・中央銀行総裁会議の場で、「ベッセント財務長官と為替の安定を巡り、緊密に連携する姿勢を再度確認した」と公表し、日米協調介入が再び行われる可能性もにじませるのではないか。
 
円安ドル高の阻止という点で、日米の利害は一致していることから、両国ともにその実現に向けてこのG20財務相・中央銀行総裁会議の場を最大限利用しようとするだろう。

プロフィール

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    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。