景気動向指数で戦後最長の景気拡大との見方が強まる
内閣府経済社会総合研究所は、9月7日に「景気動向指数(令和8年7月分速報)」を公表する。一致指数は前月比で小幅な上昇となり、「改善」の基調判断が維持されると見ておきたい。
中東情勢の緊迫化を受けた消費者マインドの下押しなどの悪材料はあるものの、事前予想を上回った鉱工業生産の強さ、雇用関連指標の底堅さなどから、一致指数は前月比で小幅に上昇することが予想される。
政府が7月29日に公表した月例経済報告では、景気の基調判断を「緩やかに回復しているが、中東情勢の影響を注視する必要がある」として前月から据え置いた。この判断に照らすと、コロナショックで経済が底を打った2020年5月の翌月である6月から続く今回の拡大局面は74か月に達し、これまで戦後最長だった「いざなみ景気」(2002年2月~2008年2月の73か月)を暫定的に上回った形となる。
ただし、実際の景気の局面判断、いわゆる「景気基準日付」は、一致指数の構成指数を参考に景気動向指数研究会での議論を経て内閣府経済社会総合研究所長が設定するものであり、正式な認定には1年以上の時間がかかる。
しかし、7月の一致指数が上昇すれば、景気の拡大局面が戦後最長となった可能性がさらに高まることになるだろう。
中東情勢の緊迫化を受けた消費者マインドの下押しなどの悪材料はあるものの、事前予想を上回った鉱工業生産の強さ、雇用関連指標の底堅さなどから、一致指数は前月比で小幅に上昇することが予想される。
政府が7月29日に公表した月例経済報告では、景気の基調判断を「緩やかに回復しているが、中東情勢の影響を注視する必要がある」として前月から据え置いた。この判断に照らすと、コロナショックで経済が底を打った2020年5月の翌月である6月から続く今回の拡大局面は74か月に達し、これまで戦後最長だった「いざなみ景気」(2002年2月~2008年2月の73か月)を暫定的に上回った形となる。
ただし、実際の景気の局面判断、いわゆる「景気基準日付」は、一致指数の構成指数を参考に景気動向指数研究会での議論を経て内閣府経済社会総合研究所長が設定するものであり、正式な認定には1年以上の時間がかかる。
しかし、7月の一致指数が上昇すれば、景気の拡大局面が戦後最長となった可能性がさらに高まることになるだろう。
実感なき戦後最長の景気拡大に:経済がダイナミズムを失ってきていることの表れ
一方、戦後最長の景気拡大といっても、好景気の実感はないという意見が大半だろう。「景気基準日付」に基づく景気拡大局面は、景気の強さを示すものではない。2020年以降の現在の景気拡大は、歴史的な円安・物価高を大きな特徴とするものであり、その間、実質賃金は低下傾向を続け、個人にとってはかなり厳しい経済環境であったと言える。
長い目でみると、景気拡大期は長期化する傾向があるが、これは日本経済が強さを増していることを意味するのではなく、景気循環が弱まり、経済がダイナミズムを失ってきていることの表れと言えるだろう。
「いざなみ景気」の終焉は、サブプライムローン問題を背景とする米国経済・金融情勢の悪化によるものであり、前回の景気拡大の終焉は、コロナショックによるものだった。
つまり、大きな外的ショックがない限り、日本経済は後退局面には容易には陥らず、その結果、経済は低調であっても景気拡大期は長く続きやすいことになる。
長い目でみると、景気拡大期は長期化する傾向があるが、これは日本経済が強さを増していることを意味するのではなく、景気循環が弱まり、経済がダイナミズムを失ってきていることの表れと言えるだろう。
「いざなみ景気」の終焉は、サブプライムローン問題を背景とする米国経済・金融情勢の悪化によるものであり、前回の景気拡大の終焉は、コロナショックによるものだった。
つまり、大きな外的ショックがない限り、日本経済は後退局面には容易には陥らず、その結果、経済は低調であっても景気拡大期は長く続きやすいことになる。
弱まる在庫循環
景気循環が趨勢的に弱まっている背景には、在庫循環の縮小が大きな理由の一つとして挙げられるだろう。
物価上昇率が高まる局面では、企業は製品在庫の価格上昇による収益増加を狙って、生産を拡大し、在庫を積み上げる傾向がある(仮需の発生)。
しかし、それが行き過ぎれば、企業は過剰な製品在庫を抱えることになり、それを減らすために生産を縮小させる。このように、高い物価上昇率のもとでは、在庫循環は大きくなり、それが景気の振れを増幅させる。
さらに、在庫循環を小さくする要因として、在庫管理技術の向上も挙げられるだろう。過去数年は、物価上昇率は顕著に高まったが、この要因があるため、以前のような景気の大きな振幅は生じにくいと考えられる。
物価上昇率が高まる局面では、企業は製品在庫の価格上昇による収益増加を狙って、生産を拡大し、在庫を積み上げる傾向がある(仮需の発生)。
しかし、それが行き過ぎれば、企業は過剰な製品在庫を抱えることになり、それを減らすために生産を縮小させる。このように、高い物価上昇率のもとでは、在庫循環は大きくなり、それが景気の振れを増幅させる。
さらに、在庫循環を小さくする要因として、在庫管理技術の向上も挙げられるだろう。過去数年は、物価上昇率は顕著に高まったが、この要因があるため、以前のような景気の大きな振幅は生じにくいと考えられる。
戦後最長の景気拡大を終わらせるショックは何か
景気循環が趨勢的に弱まる結果、景気拡大期は好況、景気後退期は不況とは簡単に言えなくなっている。そのため、景気動向指数や景気の山と谷を特定する「景気基準日付」の判断も、経済政策や企業経営の計画といった観点からは、以前ほどの重要性を失っていると言えるだろう。
現時点では景気の拡大は続いているように見えるが、戦後最長の景気拡大を終わらせるショックとしては、中東情勢の悪化による原油価格高騰、物価高と財政悪化による長期金利の上昇、長期金利の上昇による株式市場でのAIブームの終焉、社債・株式市場を通じた資金調達の支障による米国でのAI投資ブームの一巡といった、連鎖的な外的ショックの発生という可能性に注意しておきたい。
現時点では景気の拡大は続いているように見えるが、戦後最長の景気拡大を終わらせるショックとしては、中東情勢の悪化による原油価格高騰、物価高と財政悪化による長期金利の上昇、長期金利の上昇による株式市場でのAIブームの終焉、社債・株式市場を通じた資金調達の支障による米国でのAI投資ブームの一巡といった、連鎖的な外的ショックの発生という可能性に注意しておきたい。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。