0.25%の政策金利引き上げによる経済への悪影響は大きくない
9月17日~18日に開かれる金融政策決定会合で、日本銀行が0.25%の政策金利引き上げを決めることは、ほぼ確実に近い状況だ。前回6月の利上げからわずか3か月程度の間隔で日本銀行が利上げに踏み切ることは、日本銀行の金融政策が「利上げペースの加速局面」に入ったことを意味するだろう。
実際に0.25%の利上げが行われれば、政策金利の水準は1.25%になる。金融市場の予想物価上昇率(10年物価連動債のBEI)が現在1.97%程度であることを踏まえると、経済活動に影響を与える政策金利から予想物価上昇率を引いた実質政策金利は、なお-1%弱のマイナスの水準にあることから、0.25%の利上げが経済を顕著に悪化させる効果は大きくないだろう。
一方、10年国債利回りは一時3%に達しており、予想物価上昇率を引いた実質国債利回りは1%程度と、日本経済の潜在成長率の0%台半ばの水準と比べて高い。財政悪化懸念などを映した長期金利の上昇の方が、政策金利の引き上げよりも日本経済に与える悪影響が懸念される状況だ。
実際に0.25%の利上げが行われれば、政策金利の水準は1.25%になる。金融市場の予想物価上昇率(10年物価連動債のBEI)が現在1.97%程度であることを踏まえると、経済活動に影響を与える政策金利から予想物価上昇率を引いた実質政策金利は、なお-1%弱のマイナスの水準にあることから、0.25%の利上げが経済を顕著に悪化させる効果は大きくないだろう。
一方、10年国債利回りは一時3%に達しており、予想物価上昇率を引いた実質国債利回りは1%程度と、日本経済の潜在成長率の0%台半ばの水準と比べて高い。財政悪化懸念などを映した長期金利の上昇の方が、政策金利の引き上げよりも日本経済に与える悪影響が懸念される状況だ。
供給ショックによる現状の物価上昇は、利上げによる抑制効果が小さくなりやすい
0.25%の政策金利引き上げが、経済、物価、金融市場に与える影響を、内閣府「短期日本経済マクロ計量モデル(2022年版)」を用いたシミュレーションの結果から考えてみたい。図表の上段は0.25%の政策金利引き上げの経済効果を、下段はマイナス金利政策の解除から今回予想される0.25%の政策金利引き上げまでの累計1.35%の政策金利引き上げによる経済効果を示している。
0.25%の政策金利引き上げは、実質GDPを3年間で0.30%押し下げる効果が期待される。一方で、物価(個人消費デフレーター)は3年間で0.11%押し下げられる。物価の抑制は個人消費に追い風となるため、実質個人消費の押し下げ効果は-0.11%と、実質GDPの-0.30%や実質設備投資の-1.60%と比べて小さくなる面があると考えられる。
ただし、個人消費には追い風ともなり得る、この政策金利引き上げによる物価押し下げ効果は、現在の局面ではこのモデル計算よりも小さめとなる可能性が考えられる。政策金利引き上げによる物価押し下げ効果は、通常は、需要の抑制を通じて生じる。
しかし、近年のインフレ率の高まりは、円安や原油高といった供給ショックによるところが大きい。そうしたタイプの物価上昇は、政策金利引き上げによる需要の抑制を通じて、直接的に影響を与えることは難しい。
0.25%の政策金利引き上げは、実質GDPを3年間で0.30%押し下げる効果が期待される。一方で、物価(個人消費デフレーター)は3年間で0.11%押し下げられる。物価の抑制は個人消費に追い風となるため、実質個人消費の押し下げ効果は-0.11%と、実質GDPの-0.30%や実質設備投資の-1.60%と比べて小さくなる面があると考えられる。
ただし、個人消費には追い風ともなり得る、この政策金利引き上げによる物価押し下げ効果は、現在の局面ではこのモデル計算よりも小さめとなる可能性が考えられる。政策金利引き上げによる物価押し下げ効果は、通常は、需要の抑制を通じて生じる。
しかし、近年のインフレ率の高まりは、円安や原油高といった供給ショックによるところが大きい。そうしたタイプの物価上昇は、政策金利引き上げによる需要の抑制を通じて、直接的に影響を与えることは難しい。
図表 政策金利引き上げの経済効果試算


利上げの成否の鍵を握る為替動向
そこで注目されるのが、政策金利引き上げの為替レートへの影響だ。モデルシミュレーションの結果では、0.25%の政策金利引き上げは0.82%のドル安・円高を生じさせる(図表)。現在のドル円レートを前提にすれば、1.3円程度の円高となる。
9月に入ってからは、トランプ米政権からの事実上の利上げ要請の影響もあり、日本銀行の利上げ観測が為替市場で強まり、それが直近の円安のピークの1ドル160円台から一時153円台まで7円程度の急速な円高を招いている。
これは短期的な為替の動きに過ぎないが、日本銀行の政策金利の水準がなお低く、0.25%の引き上げが経済情勢を大きく悪化させる可能性が限られる中、物価上昇の抑制を通じて国民生活、個人消費へのプラスの効果を大きくすることができるかどうかは、為替市場の反応に大きく依存することになる。為替は日本銀行の目標ではないが、こうした点から、日本銀行は為替の動向に大きな注意を払いながら、金融政策を運営しているはずだ。
9月に入ってからは、トランプ米政権からの事実上の利上げ要請の影響もあり、日本銀行の利上げ観測が為替市場で強まり、それが直近の円安のピークの1ドル160円台から一時153円台まで7円程度の急速な円高を招いている。
これは短期的な為替の動きに過ぎないが、日本銀行の政策金利の水準がなお低く、0.25%の引き上げが経済情勢を大きく悪化させる可能性が限られる中、物価上昇の抑制を通じて国民生活、個人消費へのプラスの効果を大きくすることができるかどうかは、為替市場の反応に大きく依存することになる。為替は日本銀行の目標ではないが、こうした点から、日本銀行は為替の動向に大きな注意を払いながら、金融政策を運営しているはずだ。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。