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「利上げペースの加速」を後押しする3つの要因

9月17日~18日に開かれる次回の金融政策決定会合で、日本銀行が0.25%の政策金利引き上げを決めることはほぼ確実との見方が広がっている。そうしたなか、金融市場の関心は、9月利上げ後の日本銀行の金融政策に移っている感がある。
 
日本銀行が9月に利上げを決めると、前回6月の利上げからの間隔は約3か月となる。2024年3月の金融政策正常化開始以降、利上げの平均ペースは半年強であったことから、これは「利上げペースの加速」を意味しよう。
 
日本銀行は、経済・物価の中心的な見通しが実現する確度に応じて、政策金利の引き上げを通じて金融緩和の縮小を進めてきた。さらに足元では、中東情勢、AI需要、為替市場の3点が金融政策の調整のタイミングやペースに影響を与える、と説明している。

トランプ政権の介入によって国内政治からの独立性は高まるか

日本銀行は、基調的な物価上昇率が2%に近づいてきた今、以上の3つの要因によって基調的な物価上昇率が目標の2%を上回ってしまうリスクを警戒している。これが、「利上げペースの加速」の背景にある考え方だ。
 
また、ベッセント財務長官による日本銀行の利上げ期待の強い表明が、「利上げペースの加速」をもたらすとの見方も強い。ただし、ベッセント財務長官の発言は、日本銀行への圧力というよりも、日本銀行の利上げを水面下で牽制することで円安を促してきた高市政権への牽制という側面の方が強いのではないか。
 
その結果、日本銀行は高市政権からの制約を脱して、利上げの実施、あるいは「利上げペースの加速」のフリーハンドを獲得した可能性が考えられる。

「利上げペースの加速」局面は比較的短期か

上記3つの要因のうち、特に重要なのは中東情勢の緊迫化に伴う原油価格高騰の影響だろう。それは供給ショックであり、必ずしも基調的な物価上昇率を押し上げない。しかし、それが金融市場、企業・家計の中長期のインフレ期待を押し上げれば、基調的な物価上昇率の上振れにつながるリスクが残る。
 
それでも、原油価格の上昇による物価上昇率への影響は一時的な側面が強い。日本銀行は、春先の原油価格高騰が物価上昇率に与える影響、インフレ期待に与える影響を見極めたうえで、「利上げペースの加速」局面を終え、ターミナルレートに向けた緩やかな利上げ局面に移行するものと考えられる。
 
現時点では、9月の利上げの後に12月、あるいは来年、つまり2027年の1月に利上げが実施され、そこまでが「利上げペースの加速」の局面と予想する。その先の利上げは2027年後半になるのではないか。
 
そして、ターミナルレート(政策金利の到着点)は1.75%~2.0%であり、そこに至るのは2027年後半、あるいは2028年と予想する。

原油価格の上昇が「利上げペースの加速」の局面を長引かせる可能性

しかし、原油価格は足もとで再び上昇しており、WTI原油先物価格は1バレル100ドル程度にある。この高水準の原油価格が続けば、日本銀行が、原油価格高騰が物価上昇率に与える影響、インフレ期待に与える影響を見極めるまでにより時間を要することになる。その場合、「利上げペースの加速」の局面は年末・年明けよりも長く続き、2027年前半までに政策金利が1.75%に到達する可能性もある。つまり、ターミナルレート近辺まで利上げが一気に進む可能性が出てくる。
 
2027年7月には利上げに特に前向きな2人の審議委員が任期を終える。彼らの後任に利上げ慎重派が指名され、利上げの推進の障害になることを日本銀行の執行部が恐れるのであれば、その前に利上げを進めておこうとすることも考えられる。
 
こうした点を考慮に入れて、「利上げペースの加速」の局面がより長くなる可能性もあるのではないか。そうした場合には、円安修正が促される一方、長期金利が押し上げられやすくなるとみられる。

プロフィール

  • 木内 登英のポートレート

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。