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FRBの利上げは1回では終わらない

米連邦準備制度理事会(FRB)は9月15日~16日に、金融政策を決める米連邦公開市場委員会(FOMC)を開く。金融市場では80%以上の確率で、0.25%の利上げが予想されている状況だ。
 
一方、日本銀行は9月17日~18日開催の金融政策決定会合で、0.25%の利上げを実施することがほぼ確実視されている。また欧州中央銀行(ECB)は、9月10日の定例理事会で0.25%の追加利上げを決めている。9月に3主要中央銀行が同時に利上げを実施すれば、異例のことになる。
 
FRBのウォーシュ議長は、先行きの金融政策の見通しであるフォワードガイダンスを示すことに否定的だ。それは、金融市場に誤った情報を伝える可能性があること、金融市場がFRBの情報に過度に依存してしまうこと、FRBの政策を縛ってしまうことなどの弊害があると考えるからだ。そのため、金融市場は情報不足から、次回FOMCでの利上げの可能性を測りかねていた。
 
しかし、4日に発表された8月分雇用統計で予想以上の雇用増加が見られ、11日に発表された8月の消費者物価指数(CPI)でコアCPIが予想を上回り、さらに、中東情勢の緊迫化で原油価格は再び上昇していることなどを受けて、金融市場はFOMCでの利上げ予想を強めている。
 
仮にFRBが今回利上げを決めれば、それは1回限りではなく、複数回の利上げの始まりとなる可能性が高い。利上げが1回限りで終わったのは、FRBが1990年代にフェデラルファンド(FF)金利を主要政策金利の指標と位置付けて以来、1997年の1度しかない。金融市場は合計で2~3回の利上げを予想している状況だが、今回のFOMCで公表される政策金利の見通し(ドットチャート)から、そのヒントを探ろうとするだろう。

トランプ大統領による政治介入が強まるか

次回FOMCで利上げが実施される場合、トランプ政権がそれにどのように反応するかも大きな注目だ。中間選挙の8週間未満のタイミングでの利上げは、トランプ政権の強い反発を招く恐れがある。
 
トランプ大統領は、FRBに利下げを要求しており、予想を上回る雇用増加となった8月雇用統計発表後にも、利下げを求めた。ベッセント財務長官も、足元のインフレは供給ショックを反映していると主張して、利上げを行うべきではないとFRBをけん制した。
 
トランプ大統領は、自らが指名したウォーシュ議長を擁護する発言を繰り返す一方、他のFOMCメンバーがウォーシュ議長の利下げを阻んでいる、との趣旨の発言をしてきた。しかし、FOMCで利上げが実施される場合には、ウォーシュ議長も攻撃し始める可能性が出てくるのではないか。両者の蜜月関係の終わりである。
 
そして、利上げをきっかけに、トランプ大統領によるFRBへの政治介入が一段と高まる可能性がある。それは、FRBの独立性と信認を損ねることを通じ、米国及び世界のさらなる長期金利上昇をもたらす可能性もあるだろう。
 
(参考資料)
“The Fed Is Poised for a Rate Hike. It Rarely Stops at One(FRB、利上げに動くか 単発打ち止めはまれ)”, Wall Street Journal, September 12, 2026

プロフィール

  • 木内 登英のポートレート

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。