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3主要中銀同時利上げへ

米連邦準備制度理事会(FRB)は16日に開かれた金融政策を決定する米連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利であるFF(フェデラルファンズ)金利の誘導目標を0.25%引き上げ、3.75%~4.0%とすることを決めた。利上げは2023年7月以来、約3年2か月ぶりとなる。
 
利上げは5月に就任したウォーシュ議長のもとでは初めてであるが、全会一致の決定となったことで、ウォーシュ議長の指導力が発揮されたようにも見える。
 
欧州中央銀行(ECB)は、9月10日の定例理事会で0.25%の追加利上げを決めた。日本銀行は9月17日~18日開催の金融政策決定会合で、0.25%の利上げを実施することがほぼ確実視されている。主要3中央銀行が同時に利上げを実施すれば、異例のことになる。

インフレへの強い警戒

声明文では「インフレ率は依然として高水準にある。本日の政策措置は、委員会の目標である2%への回帰をより早期に実現することを後押しするだろう。委員会は物価の安定を実現する」とし、利上げは、上振れを続ける物価上昇率を目標値まで引き下げることを目指した措置であることを示した。
 
ウォーシュ議長もFOMC後の記者会見で、「インフレ率は高すぎる状態が長期間続いている」「1年前と比べても半年前と比べても依然として3%を超す上昇となっている」「基調的なインフレ率が明確かつ十分な速度で目標へ向かっているという確信を持つ必要がある」「本日のFOMCはこの基準が満たされていないと判断した」などと物価上昇率の上振れを容認しないタカ派的な発言をしている。
 
また、足もとで長期金利が顕著に上昇していることも、利上げ決定を後押ししたと考えられる。7月のFOMCでウォーシュ議長は、インフレリスクや先行きの政策金利引き上げを予想した長期金利の上昇は、政策金利の引き上げと同様の効果をもたらすものとして、むしろ利上げの必要性を低下させるとの趣旨の発言をしていた。
 
しかし今回のFOMCの決定は、期待インフレ率の上昇に起因する長期金利の上昇が、FRBのインフレへの対応の遅れ、つまり『ビハインド・ザ・カーブ』のリスクを反映したものであり、その状態を放置すれば、FRBの信認が低下して長期金利の大幅上昇が経済や金融市場、金融機関経営の安定性を損ねるリスクがあることをFRBが警戒した結果だと推察される。

年内1回の追加利上げの見通し

FOMC参加者の政策金利の見通しを示す「ドットチャート」によると、回答した18人中3人は年内あと2回、12人は年内あと1回の利上げを予想している。中央値で見れば、年内1回の利上げの予想だ。さらに2027年については、中央値で見れば政策金利の据え置きが予想されているが、予想された数が最も多い最頻値で見れば、1回の追加利上げが予想されている状況だ。
 
長期的な政策金利の見通し(中立水準)は3.2%と前回6月時点の3.1%からわずかに切り上がっている。
 
FRBが1990年代にFF金利を主要政策金利の指標と位置付けて以来、利上げが1回で終わったのは、1997年の1度しかない。FRBがひとたび利上げに転じれば、それは1回限りではなく、複数回の利上げの始まりとなる可能性が高い。

追加利上げへの警戒を強める金融市場

今回の政策金利の引き上げは、概ね事前に予想された通りであった。また、FOMC参加者が示した年内の追加利上げ見通しも予想の範囲内だ。しかし、2027年にも追加利上げが行われる見通しがドットチャートで示唆されたことや、声明文、ウォーシュ議長の発言では、予想よりもインフレ警戒色がより強く示されたと言える。
 
そのため、16日の米国金融市場では、長期金利の上昇がみられた。米国10年国債利回りは、FOMCの決定を受けて0.1%ポイント弱上昇し、再び5%台に乗った。ドル円レートは1ドル155円台から156円台へとドル高円安が進んだ。またダウ平均株価は一時900ドルの大幅下落となった。

トランプ大統領は利上げを批判

トランプ大統領はFOMCでの利上げ決定を受けて、「米国の金利は1%以下であるべきだ。なぜなら、我が国は世界で最も信用力の高い国だからだ」とSNSに投稿し、あらためて大幅な低金利を要求した。他方、ウォーシュ議長への直接的な批判は行っていない。
 
一方、記者会見で「トランプ氏にどのようなメッセージを伝えるのか」と問われたウォーシュ議長は、「大統領との協議について話せることは何もない」と回答を避けた。ウォーシュ議長が利下げを望むトランプ大統領の意向をどの程度反映した政策運営を見せるのかについては、なお不明確である。それがFRBの独立性への不安につながり、金融市場を不安定化させている面があるだろう。
 
他方、トランプ大統領がウォーシュ議長を公然と批判するようになれば、それはFRBへの政治介入が一層強まることを意味し、それもまた金融市場の大きなかく乱要因となる。両者の蜜月関係がいつまで続くのかも、今後の注目点となる。
 
(参考資料)
「FRBが3年ぶり利上げ決定、年内あと1回予想 議長『インフレ高すぎる』」、2026年9月17日、日本経済新聞電子版

プロフィール

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    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。