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8月までの物価情勢は想定内も9月以降は不確実

9月18日に総務省が発表した8月分の消費者物価指数(CPI)で、生鮮食品を除くコアCPIは前年同月比+1.7%と、前月の+1.8%からやや低下した。電気代補助金による物価押し下げ効果が表れたことが背景にある。
 
一方、円安や原油高の影響を受けやすい食料品とエネルギーを除いた指数は、前年同月比+1.6%と7月の+1.4%から上昇幅を拡大させている。既往の円安に原油高の影響が加わったことで、家事用消耗品、教養娯楽用品、理美容用品などの日用品が基調的な物価上昇率を押し上げた。
 
それでも、8月までの消費者物価上昇率の動きは、今春の原油価格高騰時点での見通しと大きくは乖離しておらず、概ね想定通りと言えるだろう。この点から、日本銀行が0.5%の大幅利上げを行う、あるいは2会合連続で利上げを実施せざるを得ないほど、物価環境が急速に悪化し、政策対応が後れを取る「ビハインド・ザ・カーブ」のリスクが高まっているようには今のところは見えない。
 
しかし、9月、10月以降は、物価上昇率がさらに高まる方向にあり、その上昇幅についてはなお不確実性がある。

10月は菓子・加工食品の値上げが相次ぐ

帝国データバンク「食品主要195社価格改定動向調査」によると、9月の食品値上げ品目数は4,923品目と、年内最多になった。8月末公表の調査では、10月以降の値上げ品目数は減少していく結果となっていたが、その後の発表を含む新たな調査結果では、10月以降の値上げ品目数はさらに上方修正されるものとみられる(図表)。
 
10月は、食品の値上げに加えて、酒税改正、加熱式たばこ、郵便、レジャー料金などの改定が重なる月となる。以下では各種報道による値上げの予定をまとめた。
 
10月の食料品で主な値上げの対象となるのは調味料と加工食品である。菓子では、江崎グリコが「ビスコ」「プッチンプリン」など169品目を3~15%、湖池屋が20品目を5~8%、亀田製菓が「柿の種」「ハッピーターン」などを3~17%値上げする。
 
加工食品では、東洋水産が「マルちゃん焼そば」など生めん・チルド195品目を8~14%、味の素冷凍食品が冷凍食品16品目を5~8%値上げする。雪印メグミルクの粉ミルク4品目は2.2~15%の値上げを行う。
 
飲料では、キリンビバレッジが「生茶」「午後の紅茶」など茶系飲料166品目を5~18%値上げする。明治の「辻利抹茶ラテ」など3品目は16~21%の値上げとなる。
 
図表 飲食料品の値上げ品目数の推移

酒税改正でビールは減税、発泡酒・チューハイは増税に

10月1日に実施される酒税改正は、ビール系飲料の酒税を1つに揃える3段階での改正の最終となる。
 
改正は、似た種類の酒の間で税率に差があることを改め、税の公平性を取り戻す目的で行われ、全体の税収は変えない前提だ。
 
ビールは350ml缶で9.1円の減税となる。一方発泡酒(麦芽比率25%未満)や新ジャンルは、350ml缶で7.26円の増税となり、税金は350ml缶で54.25円の水準に揃う。チューハイなどその他の発泡性酒類も350ml缶で7円の増税となり、これにあわせて、アルコール分の低い蒸留酒やリキュールにかかる特例税率も上がる。
 
日本酒と泡のないワイン、焼酎、ウイスキーなどの蒸留酒は、今回の改正の対象外となる。

食品・酒類以外の10月の主な値上げ

たばこは、課税方式の見直しにより、JTがプルーム用の全31銘柄を一律40円値上げする。フィリップモリスジャパンも「テリア」「センティア」などを20~30円値上げする。  
 
日用品では、ライオンが歯磨き「クリニカ」、ハンドソープ「キレイキレイ」など159品目を4~25%、エステーが「ドライペット スキット」、靴用クリーナー「洗浄力 おひさまの洗たく くつクリーナー」など3品目を3~10%値上げする。
 
それ以外の日用品では、シャンプー、リンス、洗たく用洗剤、浴室用洗剤の値上げが予定されている。
 
日本郵便の配送料金は、ゆうパックの基本運賃が平均約10%上がり、ゆうパケットは一律360円になる。クリックポストは185円から240円に値上がりする。
 
東京ディズニーリゾートは、1デーパスポートの上限価格が大人で1,500円、小人で300円上がる。大人の上限は1日1万2400円になる。

鍵を握る円安と原油価格の行方

10月にかけても値上げの動きが続き、家計は強い負担を感じることになる。そして、その後の物価情勢は、円安と原油価格の行方が鍵を握るだろう。ドル円レートが150円台、WTI原油価格先物が1バレル80ドル台にとどまれば、物価上昇率の上振れ傾向には年末までに歯止めがかかることが見込まれる。
 
一方で、さらなる円安、原油高となれば、年明け後も値上げの動きが広範囲に続き、物価上昇率の上振れに終わりが見られない可能性がある。

プロフィール

  • 木内 登英のポートレート

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。