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政府は2027年度政府予算の各省庁からの概算要求で、戦略17分野などの「強く豊かな日本」投資枠は、要求額の上限(シーリング)をなくした。さらにこの投資枠のうち経済安全保障分野については、「つなぎ国債」を発行して特別会計で別枠を管理する。こうした対応については、以下のような批判が考えられる。
 

①経済安全保障分野の投資を一般会計ではなく特別会計に計上するのは、国民の注目が集まる一般会計の規模を小さく見せる狙いがあるのではないか

②「つなぎ国債」は通常、将来の償還財源を想定して発行されるが、その償還財源の目途があるのか。償還財源が曖昧なまま「つなぎ国債」を発行すれば、実態は赤字国債の発行と変わらないのではないか

③「つなぎ国債」で賄うことで、政府が財政目標の評価に用いる債務残高対GDP比の試算からは除かれるとみられるが、それには、政府債務の実態を実際よりもよく見せる狙いがあるのではないか


財政法13条2項は、特別会計を設置できるのは、国が特定の事業を行う場合、特定の資金を保有・運用する場合、その他特定の歳入を特定の歳出に充てて一般会計と区分経理する必要がある場合に限られる、と定めている。
 
この規定に照らすと、一般会計ではなく特別会計に計上する際には、特定の歳入が充てられる、あるいは便益を受ける特定の者がそれを負担することが妥当であることが、重要な要件の一つとなるのではないか。しかし、経済安全保障政策では、国民・企業全体が便益を受けると考えられ、特別会計で管理されることの妥当性には疑問がある。
 
そうした中、「つなぎ国債」の将来の償還財源が確保されるかどうかも不確実性が高い。「つなぎ国債」は、湾岸戦争で多国籍軍の支援金を調達するため発行されたのが最初とされ、東日本大震災の復興事業に使う「復興債」や、脱炭素化に向けた企業の先行投資を支援する「GX経済移行債」などがある。2024年度以降、「子ども特例債」「半導体・AI債」も発行された。GX経済移行債では、将来のカーボンプライシング収入を償還財源として定めていた。
 
また、「つなぎ国債」で財源を賄う場合には、期限と総額が決まった投資プログラムであることが求められる。「つなぎ国債」は「財源が入るまでの前倒し」であることから、終わりのある事業であることが求められるのである。しかし、経済安全保障政策には終わりはなく、その分野の投資が終わりのある事業となるかは疑問だ。
 
経済安全保障分野の投資では、償還財源が確保されない中、「つなぎ国債」が発行される恐れがある。それは赤字国債と変わらないが、形式的には赤字国債の発行にはカウントされず、また、政府債務のGDP比率の計算には含まれない。
 
このように、特別会計に計上され、「つなぎ国債」で賄われる経済安全保障分野の投資は、財政支出の規模を実態よりも小さく見せ、また、財源確保を実質的に先送りし、あるいは曖昧にすることになりかねない。
 
しかし、そのような対応を金融市場が見逃すことはないだろう。それは、財政政策の信頼性を損ねるとともに、財政悪化懸念からさらなる長期金利の上昇、円安進行を招き、経済活動や国民生活への逆風となってしまう恐れがある。
 
(参考資料)
「「つなぎ国債」ありきの経済安全保障 予算編成、なお見えぬ償還財源」、2026年9月24日、日本経済新聞電子版
「財源に「つなぎ国債」多用 債務残高評価から除外 負担は他と同じ」、2026年9月1日、東京新聞

プロフィール

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    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。