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実質賃金低下で個人消費にリスク

米労働省が10月2日発表した9月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は2万9,000人増と前月から伸びが鈍化し、また市場予想の約9万人増も下回った。
 
さらに過去2か月分の数字も大幅に下方改定された。8月の非農業部門雇用者数は16万2,000人増から13万3,000人増に、7月は2万1,000人増から1万人減へと下方改定された。月次の雇用者数が減少したのは、2026年に入ってこれで2回目となる。
 
9月の失業率は4.2%と前月の4.1%から上昇したが、引き続き低水準にある。過去3か月間の非農業部門雇用者数は月間平均5万1,000人増で、2025年同期の月間平均2万3,000人増を上回っており、雇用情勢は昨年と比べて緩やかに改善する方向にあるとみられる。
 
しかし、AI需要に依存する傾向が強い米国経済のもとで、労働の需要・供給両面から制約を受けている雇用市場の脆弱さは残る。
 
特に注目したいのは、実質賃金の低下が続いていることだ。時間当たり賃金は前月比+0.1%と、8月の+0.3%から上昇率が低下した。前年比でみても+3.0%と、8月の+3.1%から上昇率は鈍化した。これは、8月の個人消費支出(PCE)物価指数の+3.4%を下回っている。実質賃金が低下するなか、雇用増加ペースが弱いことは、所得面から個人消費が制約を受けている状況を示唆しており、これが、AI需要で堅調に推移する米国経済の弱点となっている。

12月に再び日米同時利上げか

予想を下回った9月雇用統計を受けて、金融市場では10月27~28日の次回米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ観測は後退した。​金利先物市場が織り込む利上げ確率は、一時2割を下回った。
 
市場での10月利上げ確率が一時7割程度まで上昇した局面もあったが、その後の経済指標や市場の見方の変化を受けて低下した。特に、米商務省が9月30日に発表した8月のPCE物価指数の前年同月比上昇率が3.4%と、市場予想の3.7%を大きく下回ったこと、年次改定で過去数か月分の指数も下方修正されたことを受けて、利上げの確率は低下していた。
 
次回FOMCまでに9月の消費者物価指数などの注目指標は残るものの、利上げ見送りの可能性は高まっている。そうなれば、トランプ政権が警戒する11月の中間選挙直前の利上げは回避される。一方、12月8~9日の年内最後のFOMCでの利上げ観測は強い状況だ。
 
10月にFOMCで9月に続く連続利上げが実施される一方、日本銀行が10月の利上げを見送れば、日米金利差が拡大し、円安が進む恐れがあるが、その可能性は低下している。一方、12月には、9月に続き日米同時利上げとなる可能性が考えられる。

プロフィール

  • 木内 登英のポートレート

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。