所信表明演説では金融市場の信認確保に配慮
10月5日に召集される臨時国会の初日に、高市首相は所信表明演説を行う。その原案について多くのメディアが報じており、所信表明演説の内容は既に概ね明らかになっている。
それによると、高市首相は「責任ある積極財政」を巡って、「経済や市場が想定と異なる動きを示した場合には影響を分析して対応を機動的に講じる」と強調する。これは、景気情勢が悪化すれば、原則編成しない方針としてきた補正予算を編成する可能性を示唆している。
通年の国債発行額について、「経済、物価、税収、金利、利払い費、市場の状況などを総合的に検証」したうえで具体化する、との方針に言及する。財政政策について、金融市場の信認を確保する手段として、通年の国債発行額を重視する姿勢だ。金利が急騰する際には、歳出削減などを通じて国債発行額を抑制する可能性を示唆している。
それによると、高市首相は「責任ある積極財政」を巡って、「経済や市場が想定と異なる動きを示した場合には影響を分析して対応を機動的に講じる」と強調する。これは、景気情勢が悪化すれば、原則編成しない方針としてきた補正予算を編成する可能性を示唆している。
通年の国債発行額について、「経済、物価、税収、金利、利払い費、市場の状況などを総合的に検証」したうえで具体化する、との方針に言及する。財政政策について、金融市場の信認を確保する手段として、通年の国債発行額を重視する姿勢だ。金利が急騰する際には、歳出削減などを通じて国債発行額を抑制する可能性を示唆している。
政策は修正されず、消費税減税の財源確保も先送り
一方、官民370兆円規模の成長・危機管理投資については、「政府が単に歳出を増やし始めるという意味ではない。必要な政策を先送りせず、新しい経済財政運営を始める」とする。
また、臨時国会では食料品の消費税減税の法案が審議されるが、この減税について首相は、「家計に少しでも『ゆとり』を生み出すための法案」と説明する。与党が参院で過半数の議席を持たないなか、「消費税減税は野党のこれまでの主張にも多くみられた」と指摘し、野党に対して法案成立に協力を求める。
所信表明演説では、財政政策を巡り国債発行額の調整を通じて市場の信認に配慮する姿勢が示される。一方で、「責任ある積極財政」の方針、官民370兆円規模の成長・危機管理投資、食料品の消費税減税など目玉政策については堅持される。
食料品の消費税減税の財源については「市場の信認を得られるよう、特例公債に頼らずに確保する」とし、財源については「心配には及ばない」と主張する。しかし、財源について何ら具体策は示されておらず、「心配には及ばない」とされても金融市場は納得しないだろう。歳入増加だけでなく、歳出削減を組み合わせて財源を捻出するとして、年末の2027年度政府予算案の編成まで財源の議論を先送りしているようにも見える。
所信表明演説では財政運営に当たって市場の信認に配慮する発言が多くちりばめられているが、一方で、財政悪化を懸念する金融市場に本当に配慮して、政策の修正がされるわけではない。これでは、金融市場の不安は変わらないだろう。
また、臨時国会では食料品の消費税減税の法案が審議されるが、この減税について首相は、「家計に少しでも『ゆとり』を生み出すための法案」と説明する。与党が参院で過半数の議席を持たないなか、「消費税減税は野党のこれまでの主張にも多くみられた」と指摘し、野党に対して法案成立に協力を求める。
所信表明演説では、財政政策を巡り国債発行額の調整を通じて市場の信認に配慮する姿勢が示される。一方で、「責任ある積極財政」の方針、官民370兆円規模の成長・危機管理投資、食料品の消費税減税など目玉政策については堅持される。
食料品の消費税減税の財源については「市場の信認を得られるよう、特例公債に頼らずに確保する」とし、財源については「心配には及ばない」と主張する。しかし、財源について何ら具体策は示されておらず、「心配には及ばない」とされても金融市場は納得しないだろう。歳入増加だけでなく、歳出削減を組み合わせて財源を捻出するとして、年末の2027年度政府予算案の編成まで財源の議論を先送りしているようにも見える。
所信表明演説では財政運営に当たって市場の信認に配慮する発言が多くちりばめられているが、一方で、財政悪化を懸念する金融市場に本当に配慮して、政策の修正がされるわけではない。これでは、金融市場の不安は変わらないだろう。
リフレ政策修正の発言も実態は変わらない
政府は財政政策運営で、従来以上に金融市場に配慮し始めたことは確かである。これは、財政を巡って円安・債券安など金融市場が悪く反応することを警戒したこと、円安・債券安を引き起こさないような、市場の安定に配慮した金融・財政政策を求める米政府に配慮したものだ。こうした金融市場と米政府からの圧力のもと、高市政権の積極財政政策のさらなるエスカレーションの可能性は後退していると考えられる。
しかしながら一方で、縮小方向への修正も現状ではみられない。それは、さらなる円安・債券安の進行や米政府からの圧力強化がないと生じない可能性もあるだろう。
政権内では、リフレ政策を修正するような発言が相次いでいる。城内経済財政相は9月に「アベノミクス的な意味でのリフレ政策は終了している」と説明した。また、10月2日には、日銀の大規模な金融緩和「異次元緩和(QQE)」やイールドカーブコントロール(YCC)は終わっており、「狭義のリフレ政策はすでに終わっている」とした。片山財務相も10月3日に公表された日本経済新聞のインタビューで「いまはリフレ政策をとる時期ではない」と発言している。
このような発言が相次いでいるのは、9月にベッセント財務長官が日本に対して「リフレ政策をやめるべきだ」と発言したことが一つのきっかけになっている。つまり、米政府への配慮だ。
日本経済は現在、物価高の逆風に見舞われていることから、アベノミクスのように、物価高を目指した経済政策を行っているわけではない。これが、「アベノミクス的な意味でのリフレ政策は終了している」「狭義のリフレ政策はすでに終わっている」などの説明の背景だろう。
しかしながら一方で、縮小方向への修正も現状ではみられない。それは、さらなる円安・債券安の進行や米政府からの圧力強化がないと生じない可能性もあるだろう。
政権内では、リフレ政策を修正するような発言が相次いでいる。城内経済財政相は9月に「アベノミクス的な意味でのリフレ政策は終了している」と説明した。また、10月2日には、日銀の大規模な金融緩和「異次元緩和(QQE)」やイールドカーブコントロール(YCC)は終わっており、「狭義のリフレ政策はすでに終わっている」とした。片山財務相も10月3日に公表された日本経済新聞のインタビューで「いまはリフレ政策をとる時期ではない」と発言している。
このような発言が相次いでいるのは、9月にベッセント財務長官が日本に対して「リフレ政策をやめるべきだ」と発言したことが一つのきっかけになっている。つまり、米政府への配慮だ。
日本経済は現在、物価高の逆風に見舞われていることから、アベノミクスのように、物価高を目指した経済政策を行っているわけではない。これが、「アベノミクス的な意味でのリフレ政策は終了している」「狭義のリフレ政策はすでに終わっている」などの説明の背景だろう。
政策を修正しなければ円安・債券安も修正されない
しかし、アベノミクスが採用した政策手段である積極財政、積極金融政策を通じて経済を改善させるという方針は維持されている。政策の狙いは修正されたが、政策手段はアベノミクスから継承されているということだろう。
ただし、そうした政策では円安・債券安は後押しされ、物価上昇、長期金利上昇を通じて、日本経済と国民生活に悪影響を与えてしまう。
言葉だけで金融市場の信認を得ようとしてもそれは難しい。具体的に政策を修正しなければ、円安・債券安といった市場の動きは修正されず、金融市場の信認は得られない。また、それを受けて、米政府からの圧力も収まらないだろう。
ただし、そうした政策では円安・債券安は後押しされ、物価上昇、長期金利上昇を通じて、日本経済と国民生活に悪影響を与えてしまう。
言葉だけで金融市場の信認を得ようとしてもそれは難しい。具体的に政策を修正しなければ、円安・債券安といった市場の動きは修正されず、金融市場の信認は得られない。また、それを受けて、米政府からの圧力も収まらないだろう。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。