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ECBは12月利上げで打ち止めか

欧州中央銀行(ECB)は2026年10月29日の理事会で、政策金利の据え置きを決めた。預金ファシリティ金利は2.50%のままである。ECBは6月と9月に利上げしており、次回12月17日の会合で0.25%の追加利上げに踏み切ることがほぼ既定路線となっている。
 
9月にはECB、米連邦準備制度理事会(FRB)、日本銀行がそろって利上げした。12月も3中銀が相次いで利上げに動く可能性がある。
 
声明文には、原油高が賃金などに波及する二次的効果が見られないことや、コアインフレが安定していることを強調する記述が並び、ハト派的な印象も残した。
 
しかしラガルド総裁は記者会見で、12月の追加利上げを明確に示唆している。ロイターは関係者3人の話として、政策当局者は12月17日に利上げし、その後は様子見に転じる見通しだと報じた。エネルギー価格が急落しない限り、12月利上げはほぼ確実とされる。
 
ECBは「エネルギー起因のインフレ」と「金融環境の引き締まり」の板挟みの状態にある。ユーロ圏の9月総合インフレ率は3.8%に達したが、押し上げ要因は主にエネルギーで、コアは2.5%程度と比較的落ち着いている。
 
もう一つ、利上げの制約となっているのが国債利回りの急上昇だ。特に財政・政治の混乱が続くフランスで借入コストが上昇し、家計や企業の資金調達を圧迫している。ラガルド総裁は、この利回り上昇が成長とインフレを抑える方向に働くと述べている。
 
ECB内部の試算では、利回り上昇によって2027~28年のユーロ圏の成長率は1%ポイント、インフレ率は0.9%ポイント押し下げられる。こうした引き締め効果が、12月の利上げで打ち止めになるとの観測を支えている。

ラガルド総裁の辞任表明

ECBは29日、政策決定の発表に先立って声明を出し、ラガルド総裁が2027年10月31日の任期満了を待たず、2027年2月7日付で退任する意向を表明したと発表した。総裁は記者会見で、政治的な事柄について自由に発言するためだ、とその理由を説明した。
 
市場では、来春のフランス大統領選の前に後継を決められるよう退任時期を選んだとの見方が強い。世論調査では極右のマリーヌ・ル・ペン氏が優勢とされており、親EU派のマクロン大統領の在任中に人選を済ませる狙いがあるとみられる。ただし総裁自身は、選挙前の人選を意図したのかという質問には答えなかった。早期退任の観測は、2月の英フィナンシャル・タイムズ(FT)の報道以来くすぶっていた。
 
コスタ欧州理事会議長は、円滑な移行に向けて後継選びをただちに始めると表明した。現時点で有力候補とされるのは2人である。1人目は、クラース・クノット前オランダ中央銀行総裁だ。金融安定理事会(FSB)の議長を務めた経験があり、危機管理能力と発信力の評価が高い。2人目は、パブロ・エルナンデス・デコス前スペイン中央銀行総裁で、現在は国際決済銀行(BIS)の総支配人を務めている。
 
そのほか、2027年1月初めに退任するシュナーベル理事、5月に退任するレーン・チーフエコノミストの後任人事も一括で決まる可能性が高い。ECB執行部の主要ポストが短期間で一斉に入れ替わることになる。
 
ただし、辞任発表に対する市場の反応は限られた。有力候補はいずれも実績のある中央銀行家であり、誰が後任になっても政策運営の基本は変わらないとみられているためだ。

プロフィール

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    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。