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外食産業の支援策としてGo To Eatが再浮上

政府は2027年4月から2年間、飲食料品の消費税率を8%から1%に引き下げる方針を決めた。一方、外食(店内飲食)の税率は10%に据え置かれる。両者の税率差は現在の2%から9%に広がり、外食は内食・中食よりも約8.9%割高になる。打撃が懸念される外食産業への支援策として、日本フードサービス協会は食事券の配布などを求めている。
 
これに対する政府の姿勢は定まっていない。10月13日には、恩恵が大規模事業者に偏るおそれがあり、支援の実効性も低いとして、食事券を見送る方向と報じられた。しかし16日の参院予算委員会で、国民民主党の浜口政調会長がGo To Eatやプレミアム商品券の可能性を問うと、高市首相は検討する姿勢を示した。
 
20日には農水相が、予算編成の過程で支援内容を具体化し、Go To Eatや商品券についても過去の成果と課題を踏まえて検討すると説明している。実施の可否と具体的な制度設計は、年末の予算編成の中で決まることになる。

過去の効果の検証

コロナ禍を受けて2020年に実施されたGo To Eatは、25%上乗せの食事券(補助767億円)と、予約サイト経由のポイント付与の二本立てであった。ポイント事業では11月中旬までに延べ5,000万人超が予約し、付与額は400億円を超えて早期に予算上限に達した。予約システム事業者の調査では、参加店の8割超で予約が増え、4分の1以上が前年を上回る売上となったことから、需要を呼び込む効果は一定程度あったと言える。
 
また、内閣府は2015年のプレミアム商品券について、3,391億円の消費が喚起され、交付金2,372億円を差し引いた1,019億円が純粋な消費刺激効果だと試算している。
 
ただし、この推計は利用者アンケートに基づくものであり、もともと予定していた支出の置き換えを十分に除けていないとの批判もある。

問題点①:2年間続く打撃に一時的な支援

Go To Eatによる飲食業支援には、いくつかの問題点がある。第1は時間軸の不整合である。消費税率の引き下げによる外食産業への打撃は2年間続く。これに対し、過去の経験を踏まえると、Go To Eatによる支援は短期間で終わりやすい。前回もポイント事業は開始から約1か月半で予算上限に達した。また、キャンペーン期間中に需要が先食いされ、終了後に反動減が生じれば、残りの期間の経営環境はむしろ厳しくなるだろう。2年間続く打撃を一時的な需要喚起で埋めることは困難である。

問題点②:不均一な打撃に一律の支援(事業者側の不公平)

第2に、飲食料品の消費税減税が外食産業に与える影響は店舗によって大きく異なる。テイクアウト比率の高い店は、持ち帰り分の減税でむしろ恩恵を受ける可能性がある。一方、店内飲食が中心の居酒屋や定食屋、スーパーの惣菜と競合する価格帯の店では打撃が大きくなる。客単価の高い店では、価格差の影響が相対的に小さい場合もあるだろう。
 
ところが食事券は、もともと集客力のある店ほど多く使われる傾向がある。そのため、打撃の大きい店に支援が届かないという現象が起きやすい。知名度の高いチェーンや高級店に利用が集中しやすく、地域の中小店への効果は限定的になりがちである。
 
また、前回のGo To Eatでは、ネット予約システムを持たない小規模店でポイントが使えなかった。参加登録や換金の事務負担も、人手の少ない個人店ほど重くなる。
 
このように一律の支援策では、打撃の大きい店舗を重点的に支えることができず、かえって不公平感を広げかねない。政府自身も当初は、業態ごとに影響度合いが異なるため大規模な支援は適さないと判断していた。加えて前回は、予約サイトへの送客手数料が店側の負担となり、制度がグルメサイト主導だとの批判が多く出た。加えて、前回のポイント方式では、席のみ予約して少額だけ注文し、ポイントを得る利用が相次ぎ、店側も対応に追われた。

問題点③:利用者側の不公平

第3に、利用者側にも不公平が生じる。外食頻度の低い高齢世帯や子育て世帯、節約中の家計は、支援の恩恵をほとんど受けられない。一方、外食の多い高所得層ほど大きな恩恵を受けることになる。高級店を利用する富裕層にも恩恵が及ぶため、中低所得者の負担軽減という減税の目的とも矛盾する。
 
また、ネット予約やキャッシュレス決済が前提となれば、スマートフォンを使わない高齢者などが取り残される。プレミアム商品券や食事券の場合は、購入資金を先に用意する必要があるため、手元資金に余裕のない世帯ほど利用しにくいという問題も生む。

問題点④:費用対効果と財政負担

こうした事業者側・利用者側の問題に加えて、財政コストの問題もある。消費税減税だけで2年間に10兆円近い減収が見込まれるなか、Go To Eatやプレミアム券は効果の不確かな歳出を上乗せし、財政負担をさらに重くする。
 
上記の内閣府の試算でも、純粋な消費刺激効果は交付金の半分以下にとどまり、事務費を含めれば費用対効果はさらに低下する。

より効果的な支援策

以上の問題点を踏まえ、より実効性の高い支援策を考えてみたい。第1に、一律の需要喚起ではなく、減税前後の売上減少率や店内飲食比率を要件とする給付・資金繰り支援を検討すべきである。イメージはコロナ禍で実施された持続化給付金だが、同制度で問題となった不正受給への対策を組み込むことが前提となる。売上減少のうち減税の影響を厳密に切り分けることは難しいため、店内飲食比率など客観的な指標と組み合わせる工夫が要るだろう。
 
第2に、2年間をカバーする時間設計とすべきである。単発の予算消化型ではなく、四半期ごとに要件を確認するような継続型の支援とする必要がある。
 
第3に、需要喚起策を併用する場合でも、事業者間の不公平を抑えるため、自治体主体で中小店に限定する方式が望ましいのではないか。利用者への配慮として紙とデジタルを併用し、予約サイトを経由しない方式とすることも選択肢となる。
 
第4に、拡大された従業員食事補助の非課税枠(月7,500円)の活用促進など、平日の外食需要を2年間安定的に支える税制面の手当ても有効であろう。
 
総じて、Go To Eatや商品券は即効性がある反面、「2年続く打撃に対して一時的な対策」「不均一な打撃に対して一律の対策」という二重のミスマッチを抱えている。さらに、事業者側では小規模店に、利用者側では外食をしない世帯やデジタル弱者に不利に働く。それらを再実施するのであれば、影響の実態に応じた継続的な事業者支援を主軸とするのが妥当であろう。

プロフィール

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    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。