&N 未来創発ラボ

野村総合研究所と
今を語り、未来をみつめるメディア

2022年最大のニュースと言えば、やはりロシアによるウクライナ侵攻でしょう。これは、世界史上初めて本格的に行われた「ハイブリッド戦争」だと言われています。つまり、地上での物理的な戦闘と並行して、インターネット上で激しいサイバー攻撃の応酬が繰り広げられたのです。

しかし、テレビや新聞等の一般的なメディアでは、このことが余り大きく報じられていません。それは何故かと言うと、地上での物理的な戦闘と同様に、サイバー空間内でもウクライナが「善戦」しており、目に見える大きな被害が発生していないためです。2014年のロシアによるクリミア半島の併合以来、ウクライナは多数のサイバー攻撃に晒され、2015年と2016年には大規模な停電が発生しました。これを受けてウクライナは、サイバー防衛機能の強化を図ったと言われています。

地政学的リスクの高まりを受けて、日本でもサイバー防衛能力の強化が検討されています。「能動的サイバー防御」と言う言葉が注目され、事前に攻撃の予兆を察知して、攻撃元のシステムに侵入して必要ならデータを破壊する行為のように報じられていますが、それ以前に日本の重要インフラやそれに連なるサプライチェーン(取引先)のシステムの脆弱性(セキュリティ上の弱点)を削減し、攻撃の検知即応体制を構築することが重要です。民間企業の自助努力に任せるだけでなく、国が技術面でも積極的に支援する体制が求められます。

例えば、総務省が主導するNOTICEと言う取り組みがあります。これは、インターネット上に露呈しているIoT機器(Webカメラや家庭用ルータ等)の脆弱性を発見し、インターネットサービス事業者経由で所有者に通知すると言うものです。世界的に見ても非常にユニークな取り組みであり、これを重要インフラ向けに発展・拡張することも考えられるのではないでしょうか。

システムコンサルティング事業本部 副本部長 小田島 潤

プロフィール

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    小田島 潤

    執行役員

    生産革新センター長 兼 品質監理本部 副本部長

    

    1996年野村総合研究所に入社。先端システム技術部に配属。その後、マルチメディア技術室、公共保険プロジェクト部などを経て、2000年NRIセキュアテクノロジーズ設立と同時に出向。その後、認証局システム構築、Web アプリケーションの診断サービス開発、セキュリティ運用監視サービスなどに従事し、2009年エンタープライズセキュリティサービス部長、2010年同社MSS開発部長、2014年同社MSS事業本部本部長を経て、2015年同社代表取締役社長に就任。また、2016年にはNRI経営役、2019年にNRI執行役員に就任。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。