ブロックチェーンが、あなたに身近になる理由
FinTechは金融業界の話で自分には関係ない、と思っているあなた。実は、意外に身近な存在になりそうです。
FinTechの4つのサービス
2016年10月31日に発行した記事「FinTechとは何か?」の中で触れたように、「Finance」と「Technology」を掛け合わせて生まれた言葉、それがFinTechです。銀行や証券、保険などの金融分野に、ITを組み合わせることで生まれた新しいサービスや事業領域などを意味します。
では、FinTechには具体的に、どのようなサービスがあるのでしょうか。決済サービスなどのコンサルティングに10年以上関わっているNRIの田中大輔は、FinTechのサービスをお金の用途で次の4つに分類しています。
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お金を管理する
クラウド会計サービス「Freee(フリー)」や家計簿ソフト「Zaim(ザイム)」などが代表的です。 -
お金を支払う・受け取る
ネットやスマートフォンでお金のやり取りができる「PayPal(ペイパル)」、お財布がわりに使える「ApplePay(アップルペイ)」などがあります。 -
お金を調達する
クラウドファンディングの「Kickstarter(キックスターター)」や、ソーシャルレンディング(プラットフォーム)の「Lending Club(レンディングクラブ)」などが代表例です。 -
お金を運用する
人工知能を活用して自動で資産を運用させるロボ・アドバイザーや、運用成績が良い人のポートフォリオをまねて運用するソーシャルトレードなどがあります。保険の分野でも、IoTを活用した商品の提供が始まっています。
NRI ICT・メディア産業コンサルティング部/田中大輔
金融市場の活性化
ところで、そもそもFinTechが、現在なぜ話題になっているのでしょうか。
一つは、既存の金融機関からの期待です。従来から日本には銀行やカード会社など、たくさんの金融機関がありますが、横並びのサービスからなかなか抜け出ることができていません。既存の金融機関は、FinTechベンチャーの新しいビジネスモデルやサービス、技術を取り込むことで、活路を見出したいと思っています。金融庁もFinTechを活用して金融市場を活性化させるべく、規制緩和などを進める考えです。
もう一つは、出資する側の期待。これまで、いろいろなネット系ベンチャーによって、多くのウェブサービスが登場しました。それらに対するひととおりの出資が終わり、まだ出資をしていない有望領域を眺めたとき、彼らの目にとまったのがFinTechでした。「金融業界、当局、そして出資をする人たちの期待と思惑がちょうどタイミングがよくそろったことで、FinTechが盛り上がっている」と田中は指摘します。
基盤技術のブロックチェーン
FinTechが注目されるのは、金融業界の活性化の面だけではありません。「フィンテックのサービスを支える基盤技術にさまざまな可能性がある」と田中は言います。その一つがブロックチェーンです。銀行を介さず、世界に流通している仮想通貨ビットコイン取引の、中核を支える技術です。田中はブロックチェーンに関心を持つ理由を次のように説明します。
「従来のシステムが、中央に大きなシステムを置き、そこに各所がつながって情報を処理するというイメージだとしたら、ブロックチェーンは、大きなシステムが用いず、各所がゆるくつながった環境で情報を処理するイメージです。ブロックチェーンなら、中央のシステムがなくても、取引データなどを正確に管理、共有できる上、より複雑な処理も自動化できるため、期待されています」
行政のあり方も変わる
金融分野に限らず、例えば、流通業でのトレーサビリティ、製造業でのサプライチェーンマネジメント、そして行政における土地管理や住民基本台帳の管理など、多様な分野にブロックチェーンは利用できると考えられています。「活用が進めば、単にコストが下がるということではなく、システムの構築や運用の方法、ビジネスモデル、そして行政のあり方まで、大きく変わります。社会へのインパクトはとても大きい」と田中は言います。
そのインパクトがどうなっていくのか、NRIは引き続き追っていきます。
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