
経営役 産業ソリューション事業本部副本部長 栗山 真一
「当社はDXが進んでいるのか、AI活用が進んでいるのか」といった話題が多く聞こえるように感じている。筆者はシステム開発の現場で多くの時間を過ごしてきているが、システム開発プロジェクトの目的は、業務プロセスの連携を中心とした省力化(効率化)から、データを活用した業務革新、ひいては事業創発などへシフトしている。システム開発に対する経営の期待値は高まるばかりである。
DX推進とAI活用のための上流工程
一方で、その目的を果たすためにはデータ活用の基盤整備が欠かせず、一足飛びにゴールへは到達できないという現実に真摯に向き合い、リソースやインフラの整備に重点を置いているIT現場の姿もうかがえる。野村総合研究所(NRI)が2003年より国内企業を対象に実施している「ユーザ企業のIT活用実態調査」の最新結果(2024年9月)では、AI導入の進展とともにデータマネジメントの重要性が増してきている状況が見て取れる。同時に、デジタル化推進部門の役割が、DX全体の推進からリソースやインフラの整備へと軸足を移している状況も見て取れる。これらは、DX推進やAI活用といったデータ利活用が一過性のものではなく、その推進、活用には、データをマネジメントすること、データの価値を高めることが重要であると認識されてきているからだと考えている。
従来のシステム開発は、現状分析からボトルネックを探し、ITもしくは別の何らかの手段でそのボトルネックを解消することで、目的である効率化、全体最適化を実現していくというシナリオが主流であった。その際の目的を具体化し、目的達成の手段としてのIT要件を具体化するシステム化構想、システム化計画、要件定義といった上流工程は、事業や業務、システムの実現可能性の検証も含んでおり、システム開発における重要な工程である。現在は、目的の高度化やアジャイル型などの開発方式の変化はあるものの、上流工程の重要性は変わらない。「目的の認識がステークホルダー間で異なっていた」「業務機能、組織機能、システム機能など機能間の整合が取れていなかった」「手段が目的化して達成すべき目的が置き去りになってしまった」などのズレがこの上流工程で起きると、その後に軌道修正するのは困難を極める。筆者がかかわってきた多くのシステム開発プロジェクトにおいて、その成功と失敗の分水嶺は、ほとんどがこの上流工程にあったと考えている。プロジェクトの軸となるもの、すなわち大きく掲げられたゴールがなければ、戦略も戦術も意味を持たないのである。
従来のシステム開発は、現状分析からボトルネックを探し、ITもしくは別の何らかの手段でそのボトルネックを解消することで、目的である効率化、全体最適化を実現していくというシナリオが主流であった。その際の目的を具体化し、目的達成の手段としてのIT要件を具体化するシステム化構想、システム化計画、要件定義といった上流工程は、事業や業務、システムの実現可能性の検証も含んでおり、システム開発における重要な工程である。現在は、目的の高度化やアジャイル型などの開発方式の変化はあるものの、上流工程の重要性は変わらない。「目的の認識がステークホルダー間で異なっていた」「業務機能、組織機能、システム機能など機能間の整合が取れていなかった」「手段が目的化して達成すべき目的が置き去りになってしまった」などのズレがこの上流工程で起きると、その後に軌道修正するのは困難を極める。筆者がかかわってきた多くのシステム開発プロジェクトにおいて、その成功と失敗の分水嶺は、ほとんどがこの上流工程にあったと考えている。プロジェクトの軸となるもの、すなわち大きく掲げられたゴールがなければ、戦略も戦術も意味を持たないのである。
変わらぬ基盤整備の役割
DX推進にしてもAI活用にしても、その目的はステークホルダー間の共通認識として定義されるものであることはいうまでもない。特に、業務革新、事業創発などを目的とする場合、何を変えるのか、何をなすべきなのかといった具体的なゴールやそこに向かうシナリオは経営者の確固たる意思であり、上流工程において自らが主体性を持って定義しなければならない。決して自動的に生成されるものではないのである。
生成AIのような技術進化が起きるたびに、その技術がなし得ることの境界を越えた過度な期待をプロジェクトに要請してしまうことがある。また、プロジェクト側も新たな技術をブラックボックスのまま取り扱い、その境界を見定めないままに進めてしまうこともある。その結果、曖昧なゴールやシナリオのままプロジェクトを進めてしまってはいないだろうか。それに必要なデータが整備されていなかったといったことが起きていないだろうか。
一足飛びにゴールに向かうのではなく、システム(データ)の制約を実直に解いていくことも、上流工程で確認すべき重要な事項である。DX推進およびAI活用のためには、このような基盤整備という第一段階を設ける我慢と判断が極めて重要であると筆者は考える。先述の調査結果にもあったように、デジタル化推進部門の役割がDX全体の推進から、リソースやインフラの整備へと軸足を移してきていることも、基盤整備の重要性が再認識されていることの結果であるといえるのではないか。
業務革新、事業創発などの手段として生成AIを活用できるようになってきているが、今後は、より高度に安価に活用できるような進化も起きてくるであろう。しかし今、忘れてはならないのは、私たち人間がゴールを設定し、コントロールする役割を有していること、そしてこの境界は変わっていないということである。業務革新、事業創発の目的やシナリオなどの大きな枠組みは人間が策定し、その枠組みの中でAIなどのパワフルな技術が活用されるのであって、自動的に業務革新、事業創発がなされるわけではないことをあらためて認識しておきたい。さらに、データ利活用のための基盤整備状況によって実現可能性が大きく左右されることも忘れてはならない。その中でNRIは共創パートナーとして、DX推進、AI活用の企画から開発、運用まで、コンサルティングとシステム開発の両輪で、お客様の変革を支援していきたい。
生成AIのような技術進化が起きるたびに、その技術がなし得ることの境界を越えた過度な期待をプロジェクトに要請してしまうことがある。また、プロジェクト側も新たな技術をブラックボックスのまま取り扱い、その境界を見定めないままに進めてしまうこともある。その結果、曖昧なゴールやシナリオのままプロジェクトを進めてしまってはいないだろうか。それに必要なデータが整備されていなかったといったことが起きていないだろうか。
一足飛びにゴールに向かうのではなく、システム(データ)の制約を実直に解いていくことも、上流工程で確認すべき重要な事項である。DX推進およびAI活用のためには、このような基盤整備という第一段階を設ける我慢と判断が極めて重要であると筆者は考える。先述の調査結果にもあったように、デジタル化推進部門の役割がDX全体の推進から、リソースやインフラの整備へと軸足を移してきていることも、基盤整備の重要性が再認識されていることの結果であるといえるのではないか。
業務革新、事業創発などの手段として生成AIを活用できるようになってきているが、今後は、より高度に安価に活用できるような進化も起きてくるであろう。しかし今、忘れてはならないのは、私たち人間がゴールを設定し、コントロールする役割を有していること、そしてこの境界は変わっていないということである。業務革新、事業創発の目的やシナリオなどの大きな枠組みは人間が策定し、その枠組みの中でAIなどのパワフルな技術が活用されるのであって、自動的に業務革新、事業創発がなされるわけではないことをあらためて認識しておきたい。さらに、データ利活用のための基盤整備状況によって実現可能性が大きく左右されることも忘れてはならない。その中でNRIは共創パートナーとして、DX推進、AI活用の企画から開発、運用まで、コンサルティングとシステム開発の両輪で、お客様の変革を支援していきたい。
プロフィール
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栗山 真一のポートレート 栗山 真一
経営役
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。