
『WIRED』誌創刊エグゼクティヴエディター ケヴィン・ケリー氏
生成AI(人工知能)が急激に進化する中で、「人間の役割はどうなるのか」「AIに淘汰されるのではないか」など、私たちには根源的な問いが突きつけられています。2025年12月に野村総合研究所(NRI)は、『WIRED』創刊エグゼクティヴエディターのケヴィン・ケリー氏を招き、「AIの性格 ここまで見えてきた姿」と題した特別講演を開催しました。「作っている人たち自身が今後どうなるか分からない」という不確実性を直視し、私たちが未来に向けてどう備えるべきか。PART 1ではその内容を紹介します。
AIをめぐる4つの不確実性
ケヴィン・ケリー氏はテクノロジーによる変化の数々を予測し、的中させることで、しばしば「ビジョナリー(予見者)」と称されています。講演の冒頭で、未来のAIを考える際に重要な4つの不確実性を挙げました。
1つ目は、汎用人工知能(AGI)が出現するか、複数の特化型AIを用いるか、です。ケリー氏は「AIは必ず複数形で語るべきだ」と述べ、人間とは異なる思考を持つ「エイリアン」のような多様なAIとの協業に価値を見出します。2つ目は、AIを展開する場所が大きなデータセンターに集約・寡占化されるのか、ローカルなデバイス上に分散化されるのか。3つ目は雇用面で、AIが人間に置き換わるのか、AIはパートナーとして人間の活動を補完するのか。ケリー氏は「AIによって実際に仕事を失ったという証拠はほとんどない」とし、AIはパートナーとして人間の能力を拡張・補完する存在になるとの見方を示しました。4つ目はオープンソースか、クローズドかという方向性です。氏はインターネットのように「人類の公共財」となるのが理想としつつも、今後10年はクローズドなモデルが優勢だろうと冷静に分析します。
未来の姿はこれらの組み合わせで大きく変わるため、それぞれのシナリオを「リハーサル」し、備えることの重要性をケリー氏は強調しました。
1つ目は、汎用人工知能(AGI)が出現するか、複数の特化型AIを用いるか、です。ケリー氏は「AIは必ず複数形で語るべきだ」と述べ、人間とは異なる思考を持つ「エイリアン」のような多様なAIとの協業に価値を見出します。2つ目は、AIを展開する場所が大きなデータセンターに集約・寡占化されるのか、ローカルなデバイス上に分散化されるのか。3つ目は雇用面で、AIが人間に置き換わるのか、AIはパートナーとして人間の活動を補完するのか。ケリー氏は「AIによって実際に仕事を失ったという証拠はほとんどない」とし、AIはパートナーとして人間の能力を拡張・補完する存在になるとの見方を示しました。4つ目はオープンソースか、クローズドかという方向性です。氏はインターネットのように「人類の公共財」となるのが理想としつつも、今後10年はクローズドなモデルが優勢だろうと冷静に分析します。
未来の姿はこれらの組み合わせで大きく変わるため、それぞれのシナリオを「リハーサル」し、備えることの重要性をケリー氏は強調しました。
今後5年の4つのAI最前線(フロンティア)
続いて、ケリー氏は今後5年でAIが向かう4つの最先端領域(フロンティア)を挙げました。
1つ目が記号的推論です。現在のLLM(大規模言語モデル)だけでは次のステップに到達しないことがわかっています。論理的推論を得意とする古典的AIと組み合わせる、いわば、知能を多様な元素からなる「化合物」ととらえ、新たな可能性をエンジニアリングするアプローチで可能性を広げます。
2つ目は空間的AIです。現在のAIは「世界について書かれたテキスト」は知っていますが、「世界そのもの」は知りません。そうした意味論的なAIと、自動運転車のように物理的な世界を学習するAIとの間に溝があります。この溝を埋めることで、実世界を読み、新たな世界を生成できるようになります。その好例が、スマートグラスが実現する拡張現実です。
3つ目は感情的AIです。「知的なAIより、感情を持つように見えるロボットの方が私たちに大きな衝撃を与えるだろう」とケリー氏は語ります。相手が合成的、仮想的な存在だとしても、人間はそこに真の関係づくりができます。感情を理解するAIができれば、10代の悩める若者だけではなく、成熟した大人にも良きパートナーになるはずです。
そして4つ目が、自律的に行動するAIエージェントです。たとえば、私たちの会話を聞き、肌の震え具合などからも、スマートグラスが認知し、何千ものエージェントが相互に連携しながら、人間が求めることを先回りして実行します。その多くは、バックオフィスや配管のように、私たちの目に見えるものではなくなるでしょう。
「エージェントが協力し合うAI経済では、相互に対価を支払うなどして、人間の経済圏よりも大きくなるかもしれません」と、ケリー氏は新たな「AI経済圏」の出現を予測します。その一方で、エージェントの所有者、責任の所在、信頼の担保をめぐって新たな課題が生じることにも言及しました。
1つ目が記号的推論です。現在のLLM(大規模言語モデル)だけでは次のステップに到達しないことがわかっています。論理的推論を得意とする古典的AIと組み合わせる、いわば、知能を多様な元素からなる「化合物」ととらえ、新たな可能性をエンジニアリングするアプローチで可能性を広げます。
2つ目は空間的AIです。現在のAIは「世界について書かれたテキスト」は知っていますが、「世界そのもの」は知りません。そうした意味論的なAIと、自動運転車のように物理的な世界を学習するAIとの間に溝があります。この溝を埋めることで、実世界を読み、新たな世界を生成できるようになります。その好例が、スマートグラスが実現する拡張現実です。
3つ目は感情的AIです。「知的なAIより、感情を持つように見えるロボットの方が私たちに大きな衝撃を与えるだろう」とケリー氏は語ります。相手が合成的、仮想的な存在だとしても、人間はそこに真の関係づくりができます。感情を理解するAIができれば、10代の悩める若者だけではなく、成熟した大人にも良きパートナーになるはずです。
そして4つ目が、自律的に行動するAIエージェントです。たとえば、私たちの会話を聞き、肌の震え具合などからも、スマートグラスが認知し、何千ものエージェントが相互に連携しながら、人間が求めることを先回りして実行します。その多くは、バックオフィスや配管のように、私たちの目に見えるものではなくなるでしょう。
「エージェントが協力し合うAI経済では、相互に対価を支払うなどして、人間の経済圏よりも大きくなるかもしれません」と、ケリー氏は新たな「AI経済圏」の出現を予測します。その一方で、エージェントの所有者、責任の所在、信頼の担保をめぐって新たな課題が生じることにも言及しました。
楽観主義を選択しよう!
ケリー氏は最後に、新たな動向を視界に入れつつ、私たちがどのように備えるべきかについて見解を述べました。
そして、何より私たちが持つべきスタンスは、AIによって問題が全部解決されるユートピアでも、悲観的なディストピアでもなく、小さな改善を積み重ねて未来へと進んでいく「プロトピア」だとケリー氏は力強く語ります。その原動力が楽観主義です。
「明るい未来を想像し、それが実現できるという信念を持つことです。楽観主義は個人の性格ではなく選択です。今の世界は過去の楽観主義者がつくってきたもの。みなさんも楽観主義を選択し、未来を創っていきましょう」と述べ、ケリー氏は講演を締めくくりました。
いろいろなものが早いペースで展開する中では「Slow Takeoff(ゆっくりと取りかかる)」というスタンスが有効です。時間をかけて既存のものを吸収し、ワークフローや組織的な在り方も調整しなくてはなりません。企業はお金をかけてAIを導入しても最初は失敗します。また、AI導入は「3度目の挑戦でようやく成功する」という「Try Three」のルールを心構えとし、失敗を恐れず挑戦し続けるべきだと説きます。
AIは人間の仕事を置き換えるのではなく、強化するのだとケリー氏は考えています。人間を雇う理由は「タスクの実行」「責任の保持」「新たな学習」の3つ。このうち今のAIにできるのはタスクを行うことだけです。「あなたの仕事がAIに奪われることはない。しかし、AIをうまく使える人間に奪われる可能性はある」。いかにAIと優れたパートナーシップを築けるかが、重要になります。
「明るい未来を想像し、それが実現できるという信念を持つことです。楽観主義は個人の性格ではなく選択です。今の世界は過去の楽観主義者がつくってきたもの。みなさんも楽観主義を選択し、未来を創っていきましょう」と述べ、ケリー氏は講演を締めくくりました。